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18th International Digital Curation Conference 参加報告

2024.03.15

■ はじめに

南山@データキュレーション機能担当と平木@データガバナンス機能担当です。2024/2/19〜2/21にイギリスのエディンバラにて18th International Digital Curation Conference(IDCC24)が開催されました。本会議はデジタルキュレーションに関する国際会議であり、Digital Curation Centre(DCC)により主催されています。

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IDCC の幕。Surgeons Quarter にて撮影。

前回からおよそ1年半ぶりの開催となった本会議には、世界中のデジタルキュレーションに関心ある分野・立場の人が 270 人以上集結しました。会議では今回のメインテーマである "Trust through Transparency" を中心に、データ管理計画(DMP)、データスチュワード、キュレーションプロセス、データ共有・廃棄など多様なトピックでの議論が展開されました。余談ですが、日本からは我々が確認した限りで11名の参加者がおり、2件の発表がなされるなど、かなり存在感があったのではないかと思います。講演資料はZenodoで公開されています。

今回我々がIDCC24に参加した目的は次の2つです。

  • ・ データキュレーションおよび研究データ管理に関連する最新動向の把握
  • ・ 同分野における主要な取り組みとの連携を見据えた交流


■ 会議報告および所感

会議は2/19のワークショップ、及び2/20〜21の本会議の3日間で開催されました。初日のワークショップは、全6セッションのうち "W1: Elevating data management planning: Interoperability of RDM services through machine-actionability"(平木)、"W5: PIDS in practice: working with PIDS in an institutional environment"(南山)に参加しました。

WS1では、「machine-actionable DMPのための10原則」(Tomasz et al. (2019))への各種DMPツール(Argos、DAMAP、DMP Tool、Data Stewardship Wizard 等)の対応状況が紹介されつつ、下記二点をテーマとしたグループワークが行われました。

  1. 1. 原則が現実的なのか、欠けている観点はないか、等の意見を出し合う。
  2. 2. DMPプラットフォームと研究データ管理プラットフォームを繋ぎ、研究データ管理のステークホルダーに価値をもたらす方法を考える。

テーマ1では、どの原則もDMPの相互運用性を高める上で重要であるとしつつ、研究データ管理のステークホルダーの巻き込み、責任分解点の設定、研究データ管理およびDMPの評価・モニタリング体制の整備などの具体的なアクションが必要であるという意見が挙げられました。テーマ2では各人の立場で作成されたユーザーストーリーが共有されました。多数の意見およびユーザーストーリーが寄せられ、かなりの盛り上がりを見せたワークショップとなり、成果物が非常に楽しみです。

WS5では、エンドユーザーである研究者がPIDを活用するための取り組みとして、国際的なDOI登録機関であるDataCiteが実施する "Implementing FAIR Workflows Project"、及び電子ラボノートのオープンソースであるRSpaceが取り組むDataCite APIを活用したユーザーインターフェース開発、及び大英図書館(British Library)におけるPIDへの取り組みの3つが紹介されました。さらに、DataCite APIを用いたハンズオンも行われ、開発者の目線からPIDの活用へ取り組むために必要な内容が豊富に詰まったワークショップとなりました。

本会議は参加したセッション数も多く、全てはご紹介しきれませんが、南山からはKU Leuven(ルーヴェン工科大学)がRDM支援の一環として、データをレビューするために開発したダッシュボードの事例をご紹介したいと思います。

KU Leuvenでは2022年にレビュー/キュレーションの観点を盛り込んだ機関のデータリポジトリを立ち上げ、FAIRness、メタデータ、ドキュメンテーション、ライセンスの選択などを支援するサービスを開始したとのことです。本ダッシュボード機能はこのサービスを支援するために開発され、以下のような機能が提供されているそうです:

  • ・ レビューワー割り当て
  • ・ チェックリスト提供
  • ・ チェックリストに基づくフィードバックコメントの自動生成
  • ・ ストレージ追跡
  • ・ レビューしたフェーズのログ維持

ダッシュボードによるレビュー終了後はKU Leuvenのリポジトリ(Dataverseベース)にデータが自動的に送られ、シームレスに公開可能な仕組みが整いつつある、とのことでした。発表後の議論では同ダッシュボードのオープンソース化にも言及があり、今後の展開が楽しみです。

続いて平木からは、スイスのベルン大学でDMPの強化に向けて取り組まれているプロジェクトを紹介します。スイスの助成機関であるスイス国立科学財団(SNSF)では「現状、データ管理計画は科学的に評価されていないが、将来的にDMP の側面が評価されることはありえる」という認識であるようです。一方、研究者の間では「DMP は相変わらず単なる助成機関の要求物である」という認識であるようです。そこで「DMPを強化することで研究プロジェクト管理ツールとして利活用できないか?」という問題意識の下、SMART(Specific, Measurable, Attainable, Relevant, Time-based)、TRLs(Technology Readiness Levels)、およびFAIRの三つの指標でDMPを強化し、研究データを知的資産として管理できるようにするとことを目指すプロジェクトが立ち上がりました。この「DMPを研究プロジェクトのためのツールにする」という思想は平木が進めているデータガバナンス機能のコンセプトの一つであるため、このプロジェクトがどのような展開を見せるのか引き続きウォッチしていきます。


■ おわりに

前回のIDCC22に引き続いての参加となりました。久々の現地開催でしたが、これまでよりも研究データ同盟(RDA: Research Data Alliance)や欧州オープンサイエンスクラウド(EOSC: European Open Science Cloud)の枠組みで実施されているプロジェクトの活動紹介が多く、デジタルキュレーションの文脈でもこれらの団体の存在感が増しつつあることを感じたところです。オープンサイエンスの動向を把握するために重要な国際会議の一つとして、今後も継続して情報収集に努めたいと思います。

南山 泰之

DMPやデータ共有・廃棄というデータガバナンス(DG)に深く関わるトピックが扱われ、NII RDCにおけるDG機能の研究開発に際して参考になる情報が想定していたより多く得られました。エディンバラの街並みも歴史を感じるものがあり、道中も楽しめる素晴らしい機会となりました。再度エディンバラに訪れる機会があれば、エディンバラ城や博物館などもしっかり楽しみたいところです。

平木 俊幸


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