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オックスフォード大学、ジェンダーギャップ解消のために、理数系の試験延長

オックスフォード大学は、2017年夏の数学とコンピュータ科学の試験において、試験時間を15分延長(90→105分)したことが、テレグラフ紙に報道されました。

試験時間延長の背景には、数学とコンピュータ科学の成績に見られるジェンダーギャップに対して対策を講じたいという思いがあります。たとえば2016年の試験で「1st(優)」という成績評価を得たのは、男子学生では45.5%いましたが、女子学生は21.2%に留まりました。

【英国学位の最終評価】(100点満点)
 ・1st / Class I - 70 or above
 ・2:1 / Class II Division I - 60 to 69
 ・2:2 / Class II Division II - 50 to 59
 ・3rd / Class III - 40 to 49

このため、「女子学生の方が時間のプレッシャーに弱い可能性がある」ことへの配慮から、試験の問題の難易度等は変えずに、試験時間のみを延長することが決定されました。
「試験はもともと「時間を競う」性格のものではなかった」とオックスフォード大学は説明しています。

このような施策に対して「性差別である」との批判がDaily Mail紙から寄せられましたが、オックスフォード大学は、このような施策の効果を測るため、この施策を当面続けるとしています。

なお2017年については、「1st」を得た学生の比率には変化があまりなかったようですが、「2:2(良下)」から「2:1(良上)」への上昇はあった模様です(テレグラフ)。また、大学によると、3年次の女子学生については、2年次の成績からの改善が見られるそうです(UK NEWS)。

オックスフォード大学の歴史学科は昨年、ジェンダーギャップ解消のため、5つの最終試験のうち1つは自宅で受けても良いという方針を発表しました。自宅で受けた試験における成績のジェンダーギャップが、所謂試験会場で受けた場合の成績のそれよ り小さい、というエビデンスに基づいています。
他方、教員はこれについて、「単に盗用などの不正のリスクを拡大するだけの対処療法で、ジェンダーギャップへの長期的な解決につながらない」と懐疑的な声をあげていました。

[UK NEWS] (2018/1/23)
Oxford University extends exam time to boost female students

[The Telegraph] (2018/1/22)
Oxford University gives women more time to pass exams

ジェンダーギャップ解消のための試験時間延長!?という気もしますが、「試験はもともと「時間を競う(time trial)」性格のものではなかった」という大学側のスタンスももっともなので、(わざわざジェンダーギャップ対策のためと言うのではなく)単に、「試験はもともと学問分野に対する理解度をみるためのものであるため、十分に時間を取ることができるようにした」と言えば良かったのではないか、と思わないでもありません。

しかしそうしなかったということは、それだけ、理数系分野におけるジェンダーギャップへの社会からの風当たりが厳しいということなのでしょう。
記事には、「(女性は理数系に弱いといった)ステレオタイプのイメージは、実力発揮に対して過度の心理的プレッシャーを与え、現実を助長することがある」という英国心理学会の指摘も併せて報じています。

船守美穂