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英国大学協会:Brexitに向けての英国政府への提言
Brexit後も英国が競争力を維持できるように、英国政府がEU離脱における交渉および政策形成において優先すべき課題について、英国大学協会(Universities UK)がとりまとめました。
[Universities UK] (2017.2)
What should be the Government's Priorities for Exit Negotiations and Policy Development to Maximise the Contribution of British Universities to a Successful and Global UK?
この文書で英国大学協会は、EU離脱以後も英国をダイナミックで国際競争力のある国とする役割が英国の大学にあると位置づけ、英国の大学が国際的に優秀な人材の吸引力となった場合にこれが実現するとした上で、以下を課題として挙げています。
[英国のEU離脱に関わる大学の懸念]
- ・ 欧州の優秀な人材獲得における障壁の拡大
- ・ 国際共同研究へのダメージ
- ・ 欧州からの留学生獲得に対する障壁の拡大
- ・ 研究・イノベーションに対する助成の縮小
- ・ 英国のスタッフや学生の海外へのモビリティーの減少
そしてグローバルに成功する英国を築く上で英国大学の貢献を最大化するためには、以下に挙げる施策が必要であるとしています。
■ 短期の過渡的調整
- 現在英国の高等教育セクターで働くEU国籍の教職員およびその扶養家族について、Brexit後も居住および就労する権利を確認すること。
- 2018~19および2019~20年度に入学するEU学生に対して、引き続き英国民と同じ授業料の水準および学生ローンと奨学金受給資格を保証すること。
- Horizon2020における研究・イノベーションプログラムへの参加継続について、英国政府が努力をすることを示すこと。
■EU離脱交渉における優先事項
- 現在英国の高等教育セクターで働くEU国籍の教職員およびその扶養家族についての居住権の保証。
- Horizon2020終了時までに至る、Horizon2020における研究・イノベーションプログラムへの参加継続の保証。
- 優れた研究を推進する上でのEUパートナーとの緊密な協力の保証。
(Horizon2020とともに、その後続のFP9についても参加できるようにするとともに、その将来設計においても影響力を及ぼすようにする。同時に、これらとは別に、英国政府は欧州および欧州外の有力国との、共同助成プログラムを形成すべきである) - 学生交流のためのエラスムス+と、研究者交流のためのマリーキュリー・アクションプログラムへの参加継続の保証。
- UKと27のEU加盟国との間の専門職資格(professional qualification)の継続(たとえば学生が英国で国家資格を取得した場合に、これがEU域内においても通用するように)。
- 他のEuropean諸国と同様の規則や基準の維持・形成(特に研究協力面)。
■国内の政策転換
- 海外からの職員について簡易で改良されたビザ取得制度(特に優秀な人材について入国を歓迎するシステム)
- 留学生に対するかにで改良されたビザ取得制度
- 国際共同研究に対する支援の拡大
- 研究活動に対する公的投資の拡大
(2007-13年に行われたFP7において英国は54億ドルしか払っていないのに対して88億ドルの助成額を獲得した。これより縮小することのないようにしなければならない。さらに現在でも研究に対する公的投資がGDPに占める割合において他の主要国より低いことを踏まえ、より拡大する必要がある) - 英国のスタッフおよび学生のモビリティーを拡大するような機会の創出(エラスムス+の代替等)
- 経済成長を進めるためのイノベーションへの支援(現在European Structural and Investment Fund(ESIF)に行っている投資を英国に振り向ける)
- 科学と研究を行う上で英国が世界一となるように制度およびインフラを向上
ここに挙げた政策を全て実行できたら、英国の大学についてはEU離脱後も現在と全く状況が変わらない世界が実現するように見えます。
しかしトランプ政権が実現したことから見ても、国民は現状維持ではなく「変化」を求めている訳で、その声に全く応えないこうした施策の列挙がどの程度実現するか、疑問です。
まあ大学サイドからしたら、初めから譲歩する訳にはいかないから、一回目はこうして突っぱねるしかないのでしょうけど・・・。
船守美穂