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UCバークレーにおける暴動 ― 政府助成とりやめか?!

2月1日にUCバークレーで予定されていたBreitbart紙ライターのMilo Yiannopoulosの講演ですが、焼夷弾による発火がおき、警備に当たっていた警察に商用の花火が投げ込まれ、金属のバリケードが窓やドアに投げ込まれるという抗議の暴動により、とりやめとなりました。

Yiannopoulos氏は、alt-right と呼ばれる差別主義的な新右翼で、トランプ大統領の強力なサポーターであり、人種差別者、女性嫌い(misogynist)、反イスラムの白人至上主義者として知られます。昨年の夏、女優のLeslie Jonesに対するハラスメント・キャンペーンをツイッター上でリードしたことにより、ツイッターからは永久に追放されました。
Yiannopoulos氏は、彼が「The Dangerous Faggot」と呼ぶ大学ツアーを2015年からしており、抗議や口論、時には暴力を各キャンパスで巻き起こしていました。1/21にワシントン大学で開催されたイベントでは発砲事件により男性一名が負傷。UCデイビスでは抗議者が危険な雰囲気となったため、大学当局および警察の判断で講演が取りやめになりました。英国でも複数の大学でイベントがとりやめになっています。

一方米国の大学の多くは、言論の自由により、Yiannopoulos氏のイベントを受け入れており、言論の自由運動の発祥の地であるUC Berkeleyも、講演を取りやめた方が良いという声を押して、大学執行部がイベントの決行を決断しました。同氏に賛成の者も、反対の者も、お互いの意見を聞き、議論する場を提供することには意味がある、という考えです。他方抗議デモ等の恐れもあったため、Yiannopoulos氏の身を守るための厳重な警備体制も敷いた上での、イベント決行となりました。
イベント開始の数時間前から、会場の前には(平和的な)抗議者などが参集しつつありましたが、途中で150名の覆面の集団が乱入。焼夷弾や花火を投げ込み、金属のバリケードなどで建物が破壊され、危険な状況となったため、大学当局は他の(平和的な)抗議者に避難するよう誘導し、イベントはとりやめとなりました。大学当局はこれにより10万ドル相当の被害が出たと報告しています。

大学当局は、これら黒の覆面の集団がUCバークレーとは関係のないアジテーターによる組織的な活動であったと主張しています。この集団の動きは計画的でこなれており、教育機関としてのUCバークレーに対する思い入れなども全くない行動であったことから、バークレーの学生や教職員の行動ではないと判断しています。
一方、トランプ大統領は、「UCバークレーが言論の自由を認めず、異なる意見を有するinnocentな人々に対し暴力を及ぼすのであれば、政府助成は取りやめるか?」とツイッター上で、2/2早朝につぶやきました。
If U.C. Berkeley does not allow free speech and practices violence on innocent people with a different point of view - NO FEDERAL FUNDS?

[NBC News] (2017.2.2)
Protests, Violence Prompt UC Berkeley to Cancel Milo Yiannopoulos Event

[Inside Higher Ed] (2017.2.2)
Amid Violence, Yiannopoulos Speech at Berkeley Canceled

UCバークレーは、親近感を感じている日本の方も多いと思うのですが、NBC Newsのリンクには、目を覆うばかりの暴動の動画が掲載されています。自分も住んでいたし、その後も何回も訪問して見慣れた建物が、異様な雰囲気に包まれ、どこか別世界のような状況となっています・・・。

大学執行部の苦悩も大変なものと思います。できれば、このような問題の多いイベントはとりやめたいが、とりやめてしまえば「バークレーは言論の自由を認めない」と批判され、一方で今回のように決行すれば、こうした機会を利用してトラブルを引き起こしたいグループに「言論の自由運動の象徴であるバークレー」は格好の餌食とされ、挙げ句の果てにはトランプ大統領に「政府助成取りやめか?」と言われる訳ですから・・・。
各紙とも、「UCバークレーは言論の自由の考えから、イベントを決行しようとしていたのに、トランプ大統領に、バークレーは言論の自由を認めないから政府助成カットと言われている」と同情のある表現で報じています。
NBC Newsのリンクの2つめの動画は、大学執行部の会見の模様なので、よろしければ見て下さい。

船守美穂