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米国開催の国際会議ボイコットの署名運動

トランプ大統領のイスラム七カ国入国禁止令を受け、米国で開催される国際会議をボイコットするという運動が世界のアカデミアのあいだで広まっています。既に3000名以上がオンラインで署名をしました。

[署名運動のサイト]
In Solidarity with People Affected by the 'Muslim Ban' : Call for an Academic Boycott of International Conferences held in the US

署名は、居住権を有する対象国の人々や避難民が入国を拒否されたり、逆に米国内の対象国の人々が海外渡航ができなくなったりすることにより、人種差別が制度化され、イスラムとみなされた人々が暴力や憎しみの攻撃を受けやすい環境が形成されることに触れた上で、学術界においては、対象国のアカデミアや学生が、会議に参加し、自由にコミュニケーションをするということができなくなっていると指摘しています。
その上で、署名者は団結して、この入国禁止令が続く間は、米国で開催される国際会議に一切参加しないというアクションをとることを誓約しています。これら対象国のアカデミアが参加できない国際会議の場や議論の知的誠実さ(intellectual integrity)が疑われる、という考えです。

[Inside Higher Ed] (2017.1.31)
Boycotting the U.S.

[Inside Higher Ed] (2017.1.30)
米国高等教育界リーダー達からの、トランプ政権の「イスラム七カ国入国禁止令」に対する声明
Forceful Response (各大学協会、ハーバード大学、カリフォルニア大学学長等含む)

この署名、署名者が日々増えていますが、見てみるとイギリス、カナダなどの英語圏が圧倒的に多いです。それ以外にはスェーデンやオマーン、アルゼンチン、香港、オーストラリアなどが見られます。日本からの署名も8名ほどありますが、1名を除き、みな外国人です(ちなみに昨日段階では6名の署名でした)。
これ以外にも、「米国がパリ協定から離脱をしないように」と要請する署名運動に2300名以上のカリフォルニアの教員が署名するなど、アカデミアによる署名運動が高まっています。

また入国禁止令については、多くの高等教育界のリーダーが、これについて懸念を表明しています。
[Inside Higher Ed] (2017.1.30)
米国高等教育界リーダー達からの、トランプ政権の「イスラム七カ国入国禁止令」に対する声明
Forceful Response (各大学協会、ハーバード大学、カリフォルニア大学学長等含む)

ふだん政治的スタンスを業界団体としてとることには基本的には消極的なアカデミアが団結した動きを見せつつある訳ですが、国際会議をボイコットするということについては、賛否両論があるようです。国際会議をボイコットしても、トランプ大統領自身は痛くもかゆくもないこと、逆に米国のアカデミアを孤立させてしまうことなどが指摘されています。これに対して、米国外で国際会議を開催しようという運動もありますが、そうすると帰国の可能性が懸念される対象国のアカデミアが参加できないので、いっそのこと、米国と米国外で会議を毎回同時開催し、中継でつなごうといった案も出ています。
「トランプ大統領は公約してしまったから入国禁止令を発する必要があった。入国禁止令の90日が過ぎれば、取り消されるのでは」といった声も英-シリア系の人から、このボイコットの賛否を問うツイッターで聞かれました。

船守美穂