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オーストラリア出張報告(eResearch Australasia 2022、大学訪問)

2022.11.25

松本です。

2022年10月17日から19日までオーストラリアのブリスベン、20日と21日は、シドニーに、山地教授、船守准教授、松本の3人で出張してきました。

目的は二つあり、一つはオーストラリアのブリスベンで開催される eResearch Australasia(以下eResearch)への参加。 もう一つはオーストラリアの主要な大学、およびその図書館の訪問です。

eResearchについては昨年までの参加報告(eResearch Australasia 2021 参加報告)にも書かれていますが、簡単に説明すると、Australian eResearch Organisations (AeRO) が主催する、研究活動への主に電子的な取り組みに関するカンファレンスで、基調講演やセミナー、ワークショップやセッション、そして、企業や団体のブース出展者と交流ができる賑やかなイベントです。
去年と一昨年は新型コロナウィルス感染症の影響でオンラインのみの開催でしたが、今年は3年ぶりの現地開催となりました。昨年同様、オンラインのみの参加も可能です。

今回もNIIの発表があり、私も担当している解析基盤を使用した GakuNin RDMデータ解析機能 (GakuNin Federated Computing Services) について山地教授から紹介がありました。

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講演風景

今までRCOSとしてeResearchには、研究データ管理(RDM)に着目して参加していたそうですが、参加者の中には研究者や技術者だけでなく、ライブラリアンも多いことがわかり、RCOSの今後の取り組みの参考にするべく、オープンライブラリー、オープンテキストについての情報を得ることにも注力しようということで、船守准教授を主軸に行動しました。
私自身は今回現地に行けない人たちのためにセンシティブデータの取り扱いに関する講演を聴講し、また、主担当であるデータ解析や機械学習など、技術的な分野を選んでセミナーやセッションに参加して、今後に繋げられそうな内容の講演者の所属団体のブースがあれば訪問して交流してきました。

現場の雰囲気は、私がゲーム開発者をしていた時に参加した CEDEC に、規模や内容的が近く、多くの学びがあり、また関係者同士の交流もできました。NIIでも、このような形式のイベントを開催してみたいものです。

eResearchで個人的に印象深かったのは、KubeflowRAPIDMINER という、ブラウザで構築から学習、推定などの操作ができる機械学習のプラットフォームです。KubeflowはPython、RAPIDMINERはRの機械学習環境を簡単に構築することができます。

それから、デジタルライブラリーのためのレガシーデータのアーカイブ作業で使えそうなのが、ゲームやメディアアートのエミュレーターによる共有 です。古いWindowsやMacOSなどのレガシー環境はもちろん、PC以外の機器もMAME で再現していて、それらを AARNet 利用者はオンラインで操作できます。私もMAMEでSGI社のIRIX環境を再現したことがありますが、このような環境の構築は上手く行かないことも多々あります。構築済みのエミュレーター環境をリモートで提供することで古いソフトウェア資産を掘り起こし、現在の環境に移植する際の助けになるでしょう。

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MAMEを利用したSGI IRIXのエミュレート

大学、およびその図書館への訪問は、オープンライブラリーに関する情報収集や連携の提案が目的で、クイーンズランド工科大学クイーンズランド大学シドニー工科大学シドニー大学の4校を訪問し、施設の見学やインタビューで教職員の方々からオープンライブラリーに向けた取り組みについて見聞きし、そこに至るまでの苦労話や、我々が抱える課題について意見交換ができました。

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クイーンズランド工科大学研究棟
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シドニー工科大学でのミーティング
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クイーンズランド大学図書館(松本、船守)

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シドニー大学でのミーティング(船守、山地、職員3名)

今回の出張の二つの目的と、用務外の滞在時間でも感じましたが、オーストラリアは日本に比べ、日常生活におけるデジタル化が非常に進んでいます。しかし、米国のようにトップを走り続けようとしているわけではなく、最良の落としどころを見つけ出し、その中で最高の利便性を追求するという、賢い選択をしている感じでした。日本は重工業製品やスパコンなど、大掛かりな装置は得意ですが、人々の日常に活用できそうな場面のIT分野においては、先進国だけではなく、新興国に比べても出遅れています。その日本が目指す目標としてオーストラリアは最良のモデルケースなのではないでしょうか。そのような意味で、我々はこれからもオーストラリアに注目し、交流を深めたいと考えています。

余談ですが、ブリスベンで夕食をとる場所を探している最中、私がスタッフをしていたゲームを見つけました。前作で組んだ人体モーション再生プログラムが流用されていますが、自身はWeb Programmerという立場で、ネットワーク戦略にシフトするきっかけとなった製品です。運命のようなものを感じます。

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(松本 正雄)