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RCOSメンバーよりごあいさつ:谷藤幹子

2022.11.25

2022年11月1日よりオープンサイエンス基盤研究センター(RCOS)に着任いたしました。
10月末まで茨城県つくば市にある物質・材料研究機構(NIMS)という国立研究開発法人におりました。生まれも育ちもずっと東京で、久しぶりに東京に帰ってきた! そんな感覚を持ちながら、秋葉原駅から歩くエクササイズを始めました。

つくば市は空が広く、人・物との間に緑があり距離があります。
東京に戻り、緑がない分、その距離が急に近くなってドキドキすることがありながらも、歩けばラーメンやカレーのお店が立ち並ぶ中に画材屋や一坪商店を見つける好奇心が間に入って、密な東京感覚を徐々に戻しつつあります。片道25分、往復50分のエクササイズを、持続するモチベーションにどう繋げるか ― これが今日のテーマです。

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初日は、迷子になって遅刻してはいけないと思い、余裕と緊張をもって歩いたのですが、案の定、ひどく疲れました。
2日目は、そうだ! と思い出し、AirPodとiPhoneをポケットにセットしてGoogleMapの音声案内を聞きながら歩いてみました(指示待ちの時間は、もちろん楽しい気分になる音楽をシャッフルして)。
朝は明るいので、前日の経路と少し違うような気がするな、これも一興か、と思いながら目に映る人・物を視界に収めつつ、決めた時間内にゴールに着いてバンザイ! で大成功だったのですが、夜が困りました。
町の灯りは沢山ありますが、「東にすすんでください」「西にまがってください」という指令を受けて「?」。同じ経験を、世界の沢山の人がしたに違いなく、それでも暗い中で東西南北の指令に「わかりません!」です。
止む無くポケットからiPhoneを取り出し、マスク認証をして、進行方向どちらに矢印が向いているのかを確認することに。数回のストレスを乗り越えて遂に、おおよその方向を体が覚え、麻雀様式の指示に感情ゆれることなくゴールに着く自信がついてきました。
残る問題はコースタイムです。うっかり調子に乗っていると時間内にゴールできないので、気持ちを集中して人・物を避けながら、適度に好奇心も満たして前進 ― 誘惑の灯りにタイムロス、それが究極のモチベーションになる日も近いような気がしています。
仕事柄、研究をサイクルと見立てて、ぐるっと回る円を描くことがありますが、科学は無味乾燥なものではなく、思考を巡らせる過程で好奇心も手伝い、道草を食いながら探求心を貫く力にしていきます。"研究データ基盤の研究開発" というテーマで描くその円は、前に進んでは戻り、道を逸れて方角が変わることも、気がつけば違うゴールに着くこともあるでしょう。一筆書きのようにはならないはず、だから面白い。それが基盤活用のモチベーションの源泉だと思います。

ところで、GPS信号が数センチメートルの精度で格段に上がっているのだし、歩く人間の向き(ベクトル)を読んで左右・直進の指示をくれる日がそろそろかなと思っています。もっとも、そのようなリアルタイムの行動制御が、特定のアルゴリズムによって誘導されるという点は、大いに心配するべきかもしれません。
あっ、申し遅れましたが、私は知る人ぞ知る絶望的なほどに方向音痴なのです。不束者ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

(谷藤 幹子)