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ネイチャー誌、プランSに含まれる見込み

シュプリンガー・ネイチャー社は、2021年からネイチャー誌とその姉妹誌をOA出版にすると、4/8付で発表しました。具体的な実現方法はこれから検討される見通しです。

論文出版後の即座OAを要求するプランSが発表されてから、シュプリンガー・ネイチャー社は、ネイチャー誌とその姉妹誌を除く学術雑誌についてはOA誌へと移行するものの、ネイチャーブランドの雑誌については、OA出版にすることは難しいとの見解を示していました。
このため、プランSの研究助成機関から研究助成を得る研究者(以降、プランS研究者)は、プランS発効後、ネイチャー誌とその姉妹誌への論文出版の道が、閉ざされる見通しでした。しかし、今回の発表により、その道が開けたこととなります。

英ウェルカムトラストで、プランSを発表したCoalition Sのコーディネータ代理のRobert Kiley氏は、「シュプリンガー・ネイチャー社が、学術雑誌をフルOA誌に移行することを、〈Coalition Sは〉喜ばしく思います」と発表しています。

他方、イリノイ大学アーバナシャンペーン校の図書館員であるLisa Hinchliffe氏は、プランSのルールが、同社の思惑通りに緩んだと指摘しています。特に、(購読料を払わないと閲覧できない)購読誌であるものの、論文著者がAPCを負担した論文のみOAで出版する、所謂ハイブリッド誌の条件が緩んだと指摘しています。
「Coalition Sは、プランS発表当初の、ハイブリッド誌全面否定の姿勢を維持するのではなく、ハイブリッド誌がプランSに適合できるように、ずるずると譲歩しています」。

プランSとは

プランSは、欧州の一部の研究助成機関により、2018年9月に発表されました。学術論文が、出版後即座にOAで閲覧可能となることを目標としています。現段階で、欧州を中心とする17の研究助成機関と、健康科学に関係するWHO、ゲイツ財団、英ウェルカムトラストが参加しています。欧州委員会(European Commission)も、プランS準拠のOAポリシーを実施予定です。世界で出版される論文の約7%が対象となります。

Clarivate Analytics社の2019年報告書によると、2017年にネイチャー誌に発表された論文のうち35%(290本)が、プランSの研究助成機関を謝辞に含めています。ちなみに、サイエンス誌は31%(235本)、PNAS誌は20%(639件)です。
(出典:The Plan S footprint: Implications for the scholarly publishing landscape (Institute for Scientific Information, 2019)

プランSの要請により、プランS研究者は2021年以降、OA誌に論文発表をするか、クローズドな購読誌に発表する場合は、〈リポジトリなどに〉論文の印刷版を論文出版後即座に、オンラインでオープンにする必要があります。後者は、学術雑誌のエンバーゴの設定により、困難な場合が多いです。

他方、ハイブリッド誌のように完全にOAではない学術雑誌において、この状況はより複雑です。プランSは当初、ハイブリッド誌を完全に排除するかのように見えましたが、その後、ルールを徐々に緩めています。

2018年11月、Coalition Sは、ハイブリッド誌への論文出版を認めないのではなく、これら雑誌が「移行契約(transformative agreements)」に応じない場合は、これら雑誌へのAPCを負担しないと発表しました。多くの出版社がこのため、〈プランS対象の〉大学コンソーシアムと、購読料と論文出版料を合わせた契約を結びました。この移行契約のOAへの移行状況は、プランSにより2024年に確認されます。

一方、ネイチャー誌やサイエンス誌などのトップジャーナルは、〈出版社単位でOAに移行する〉移行契約には応じられないとの見解を示していました。その代わり、ジャーナル単位でOA比率を上げていく「移行誌(transformative journal)」の考え方を提案していました。

移行誌のルール変更

プランSの研究助成機関は、これまで「移行誌」の条件を検討していました。
Coalition Sと出版社の交渉の末、4/8に発表されたルールによると、「移行誌」は、1)最終的にはOA誌に移行することを明示する必要があり、2)OA率を毎年5%拡大し、3)OA比率が75%を超えた段階でOA誌に完全に転換しなくてはなりません。以前あった、2024年12月までにOA誌に転換しなくてはならないという条件はなくなり、時間的制約はなくなりました。

これらの変更を受けて、シュプリンガー・ネイチャー社は、同社の雑誌をプランSに適合させることができると表明しました。シュプリンガー・ネイチャー社の出版部長であるInchcoombe氏は、変更後の目標は「とてもチャレンジングであるが、目標に到達できるよう、全力を尽くす」と発表しています。
Coalition Sは、ポリシー全体を2024年にレビューする予定です。

未調整の事項がまだいくつかあります。プランSにはたとえば、学術雑誌のOA出版の価格付けについて透明性を要求するなど、技術的な要求課題がいくつかあります。これらについては、プランSと引き続き議論する必要があると、Inchcoombe氏は述べています。
さらに、事を複雑にしているのは、プランSにかかわる各研究助成機関が、Coalition Sとは別の、独自のルールを設定しても良いとされていることです。たとえば、英国の主要な研究助成機関であるUKRIは、プランSに署名しているものの、ハイブリッド誌の扱いについて、未だ検討中としています。

シュプリンガー・ネイチャー社が、具体的にどのように同社の学術雑誌へのOA出版を 提供するのか、APCがいくらになるのかなどの詳細は、まだ不明です。
本年1月、シュプリンガー・ネイチャー社を含む8社が、価格設定について情報を匿名で共有する機会がありました。この情報共有の目的は、英コンサルティング会社Information Power 社にCoalition Sが作らせた、「透明性ひな形(transparency template)」が機能するかを確認するためでした。その結果は、本年後半に公表される予定です。

サイエンス誌を発行する米国科学振興協会(AAAS)は、同協会の発行する購読誌を、プランSのもとOA誌に移行する予定はない、と言っています。その代わり、論文出版直後に、論文の印刷版をリポジトリに掲載することを許可するという方法を検討しているそうです。AAASのスポークスマンによると、AAASはこの方法を2013年からすでに許可しています。
しかしプランSに適合するためには、論文がリポジトリにて公開されるだけでなく、オープンライセンスが付与されている必要があります。オープンライセンス下では、論文を誰でも、再配布や改変ができます―たとえば、翻訳や再出版ができます。

[Nature] (2020.4.9)
Nature to join open-access Plan S, publisher says

とうとう、ネイチャー誌とその姉妹紙が、OA誌へ移行ということでしょうか? それは高い購読料に悩まされる大学にとっては朗報ではあるものの、これら雑誌に論文投稿をする研究者を抱える大学や研究助成機関、そして研究者にとっては、APCがどのような額となるか、ヒヤヒヤものです。
シュプリンガー・ネイチャー社は、2019年2月段階では、ネイチャー誌とその姉妹紙については、出版する論文を厳選するためのインハウスコストが高く、これを論文著者に負担させると、APCが非現実的な額となるため、OA誌に移行することは難しいとの見解を示していました。実際、OA誌であるNature Communications誌のAPCは5380ドル(60〜70万円)です。そして今回の発表で、残りのネイチャーブランドの学術雑誌の「APCがいくらになるか不明」としているのです。
[mihoチャネル] (2019.3.1)
トップジャーナル、プランSを批判 & カリフォルニア大学、エルゼビア社と交渉決裂

プランSが、シュプリンガー・ネイチャー社のInchcoombe氏に言われるがままに、徐々に骨抜きになっていることも気になります。
プランSが、改訂版を2019年5月末に示したときに含まれた「移行誌」の考え方は、Inchcoombe氏が5月初旬にアイディアとして提示したものでした。
[Bookseller] (2019.5.9)
Springer Nature calls on publishers to adopt new OA role
[mihoチャネル] (2019.6.1)
プランS改訂版、発効期限を1年延長 & プレプリント登録を義務化する「プランU」の提案

プランSが2019年11月に「移行誌」の条件として、a)毎年8%のOA率拡大と、b)OA率50%に到達したらOA誌への転換を示し、パブコメを求めたところ、シュプリンガー・ネイチャー社はこれについて同年12月に、条件が厳しすぎるとたたき返しました。
[cOAlition S] (2019.11.26) cOAlition S Consults on Transformative Journals
Addendum to the cOAlition S Guidance on the Implementation of Plan S: open for consultation
[Bookseller] (2019.12.17)
Springer Nature points out problems with cOAlition S transformative journals plan

シュプリンガー・ネイチャー社の批判に対してプランSは、OA誌である同社のNature Communication誌を例に取りながら、a)、b)などの条件が非現実的ではないと反論しました。
[cOAlition S] (2019.11.26)
cOAlition S reaction to Springer Nature's Open Letter on Transformative Journals

しかし、今回の2020.4.8の発表において、プランSは、パブコメを受けての回答というかたちで、「移行誌」の条件を、a)毎年5%(当初8%)のOA率拡大と、b)OA率75%(当初50%)に到達したらOA誌への転換と緩めました。更に、2024年までのOA誌への転換という条件も撤廃しています。
シュプリンガー・ネイチャー社が、プランS発表の同日に、「これなら頑張れる」と表明しているのも、両者が密に交渉し、条件を生み出している証左です。

両者のあいだに調整行為は当然あるべきとは思いますが、シュプリンガー・ネイチャー社のいいなりの条件になってしまうのは、いただけません。特に、2024年までにOA誌に完全に移行という期限の条件がなくなってしまったのは致命的です。
ネイチャー誌とその姉妹紙は現段階では、ハイブリッド誌ですらなく、純然たる購読誌です。つまりOA率は0%です。これら雑誌が、毎年5%ずつOA率を拡大していった場合、OA率75%になるまでに15年間かかります。その間に色々な天変地異があり、プランSとの約束は反古にされてもおかしくありません。
[cOAlition S] (2020.4.8)
cOAlition S publishes updated criteria for Transformative Journals
[Springer Nature] (2020.4.8)
Revised 'Transformative Journal' criteria from cOAlition S are "challenging" but Springer Nature commits to transition majority of journals, including Nature

この記事は「移行誌」に関わるものですが、その裏では着々と「移行契約」が、出版社と大学や国とのあいだに結ばれつつあります。
ESAC(Efficiency and Standards for Article Charges)という、「移行契約」の締結事例を登録するサイトがあるのですが、これを見ると、契約開始年2019年以降、「移行契約」が急激に伸びていることが分かります。2015年(1件)、2016年(3件)、2017年(11件)、2018年(9件)、2019年(41件)、2020年(32件)です。つまり、2018年以前は計24件なのに対して、2019年以降は2年で計73件も契約締結例があります。
なお、この登録は不完全なので、契約件数は実際には、より多いとみられます。また、2017年以前はプランSが存在しないので、移行契約に類似の、Publish & Read契約等が結ばれていた件数となります。

出版社の契約戦略も垣間見られ、契約例の多い順に、英国王立化学会(RSC, 12件)、シュプリンガー・ネイチャー社(10件)、ケンブリッジ大学出版(CUP, 8件)、米国化学会(ACS, 7件)、エルゼビア社(7件)、テイラーアンドフランシス社(7件)、英国物理学会出版(IOP, 6件)、ワイリー社(6件)、その他16社で34件です。

国別にみると、ドイツ(16件)、オランダ(14件)、オーストリア(13件)、スウェーデン(10件)、英国(10件)、ハンガリー(7件)、ノルウェー(7件)、米国(5件)、その他9カ国15件です。やはり、プランSの中心である欧州諸国が軒を連ねます。

プランSは2021年から発効し、対象国の研究者は以降、OA誌あるいは、「移行契約」に応じた出版社の雑誌にしか、基本的には論文発表できないため、出版社側も必死です。しかも、「移行契約」に応じた出版社は、2024年12月末までに、出版社の有する学術雑誌を全て、OA誌に完全に移行しなくてはいけないのです。
「移行誌」の方で、OA誌への移行が無期限となると、はしごを外されたようですね。
[ESAC] Agreement Registry (last accessed 2020/4/20)

それにしても、この世界的なコロナ騒ぎのさなかで、プランSに進展があるのは驚きでした。
プランSのサイトでは、cOAlition S Leaders Groupの座長であるMarc Schlitz氏が、「COVID-19のパンデミックで学んだことは、全ての学術論文がOAに移行しなくては、〈人類を救えない〉ということである。(中略)このような状況下で、移行誌に関するガイダンスを発表するのは無神経だと思う人もいると思う。しかし、我々は敢えて今、これを発表することとした。プランSの2021年1月の発効前に、出版社に対して最大限の時間的余裕を与えたかったのである」と述べています。
プランSの並々ならぬ意気込みが感じられます。
[cOAlition S] (2020.4.8)
Transformative Journals: Rationale

ちなみに、プランSは改訂版を2019年5月に提示して以来、プランSを実現するにあたっての諸課題について、自身で検討したり、検討を外部委託したりしており、その成果が続々と上がってきています。
2019年9月には、学会系ジャーナルがOA誌に移行する場合に関するレポートとツールキットができあがり、10月にはオープンアクセスリポジトリ連合(COAR)と共に、リポジトリを支持する声明をだし、11月には学術雑誌の分野別のOA状況に関するレポートが提出され、2020年1月にはInformation Power社から、学術雑誌の価格設定の透明性枠組みについて、レポートが発表され、2月にはプランSへの適合判定に必要なデータに関するレポートが発表されています。更に、最後のレポートが発表された同日には、研究者が、ある学術雑誌がプランSに適合しているかを判断するための「プランS チェックツール」の開発と運用について公募がなされ、3月にはグローバルな非商用OA出版モデルに関する調査報告書の作成が公募されています。
[cOAlition S] (2019.9.12)
Report and Toolkit to Support Learned Society Publishers Transition to Immediate Open Access
[cOAlition S] (2019.10.7)
COAR and cOAlition S Supporting Repositories to Adhere to Plan S
[cOAlition S] (2019.11.21)
Gaps Report highlights why Plan S is needed
[cOAlition S] (2020.1.14)
cOAlition S welcomes transparency framework and report, launches pilot
[cOAlition S] (2020.2.7)
Report on the data needed to identify Plan S compliance
[cOAlition S] (2020.2.7)
cOAlition S invites qualified providers to develop a Plan S Journal Checker tool
[cOAlition S] (2020.3.27)
Exploring collaborative non-commercial publishing models for Open Access: Apply to perform a study

他方、現在、数多くの出版社がCOVID-19関連の学術論文をOAとしています。また、大学の授業の多くがオンラインに移行したことを踏まえ、e-ブックや学術雑誌のライセンスを緩め、学生がコンテンツにアクセスできるようにするなどの臨時措置をとる出版社が増えています。
出版社ごとに、こうした措置をアナウンスするので、これを網羅するのは難しいのですが、たとえば以下のサイトに、こうした出版社の措置をリストアップする努力がなされています。
Vendor Love in the Time of COVID-19

また、国際図書館コンソーシアム連合(ICOLC)では、このCOVID-19の世界的なパンデミックに鑑み、図書館業界に電子リソースをライセンス等している出版社に対して、以下の要望をしています。多くの大学がオンラインに移行するなか、在学生が学期を完全にオンラインで修了することを想定して欲しいとのことです。
ちなみに、日本の大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)も、これに署名しています。

グローバルなCOVID-19パンデミックが
図書館サービスとリソースに及ぼす影響に関する声明
(ICOLC, 2020.3.13)(抄訳)

(前文略)

【即座に検討してもらいたい事項】

  1. COVID-19やコロナウィルス、ワクチン、抗ウィルス薬などに関連するコンテンツやデータセットを、即座にOAとすること。
  2. 現在のライセンスにおける、同時アクセスの制限をなくし、大学の研究や発見、学習が全てオンラインに移行できるようにすること。
  3. 図書館相互貸借(ILL)やコピーの制限をなくし、学生が学期を修了できるようにすること。
  4. 著作権に関わる制約等を最大限なくし、大学がその教育の使命を、オンラインの遠隔形式で可能とすること。

【検討を開始してもらいたい事項】

  1. コンソーシアムや機関の契約担当に、健康や業務面で何が起こるか分からないため、柔軟な契約更新時期や支払猶予を認められたい。また、契約の定期更新ができなかった場合も、コンテンツへのアクセスを維持してもらいたい。
  2. 世界のユーザコミュニティ、公衆衛生、株式市場が落ち着くまで、予定されていた価格上昇を遅らせるか、最小化されたい。
  3. 大学の認証メカニズム(VPN、プロキシサーバ)がトラヒック上昇によりオーバーロードしてしまった場合のことを想定し、アクセス制限を一時的に解除するか、異なる認証方式を開発されたい。
  4. 大学が閉鎖されても、教育がオンラインで継続できるように、「キャンパスのみ のアクセス制限」を解除されたい。

[ICOLC] (2020.3.13)
Statement on the Global COVID-19 Pandemic and Its Impact on Library Services and Resources
[JUSTICE] (2020.3.18)
COVID-19に関するICOLC声明への支持表明を行いました

個人的には、こうした出版社によるオープン化の動きや、柔軟な対応への要請は、世界的にあるため、今年の夏の学術雑誌の契約更新の交渉は例年とはだいぶ異なったものとなるだろうと踏んでいたのですが、プランSは強力に、自ら敷いた路線を踏襲し、世界を引っ張っていく勢いですね。「パンデミック下だからこそ、学術論文はOAである必要がある!」という理屈を楯にしているところが憎いですね。
となると、少なくともプランS対象国では引き続き、移行契約(Read & Publish契約)が引き続き拡大するということでしょうか。プランSに加わっていない日本としては、移行契約も進んでいないようですし、研究助成機関や機関がAPCの補助を組織的にしてくれる訳ではないので、個人の研究費からAPCがガッツリと流れ出すことが恐ろしいですが・・・。

なお、高い購読料も、高いAPCも困るということで、コミュニティが運営する学術情報インフラを強化し、学術情報流通の多様性("bibliodiversity(書誌多様性)"と呼ぶ)を伸張させよう、という呼びかけ(Call for Action)が4月15日に発せられています。

学術情報流通における書誌多様性の形成に向けて ― 行動の呼びかけ(抜粋訳)

多様性は、最適な学術情報流通を実現するにおいて、肝要な特質です。サービスやプラットフォーム、助成メカニズム、評価手法における多様性は、研究コミュニティにおける多様なワークフローや言語、研究成果や研究トピックを許容し、異なる研究コミュニティのニーズと知識の多元性をサポートします。加えて、多様性は、モノポリーやモノカルチャー、高価格につながるベンダーロックインのリスクも軽減します。

[COAR] (2020.4.15)
Fostering Bibliodiversity in Scholarly Communications - A Call for Action!

日本は、研究テーマやアプローチ、研究評価においても、独自の価値観を有しており、西欧の価値基準で評価されるとハンディがあります。一方で、完全に西欧の価値観に合わせて研究活動をした場合、日本の社会の課題解決につながる研究が手薄になります。しかし、学術研究活動は基本的に、人類の幸福につながるべきで、だからこそ、国民の税金もつぎ込まれているわけですから、日本国民の血税をもって営まれている国内の学術研究活動は、日本国民に幸せをもたらすものであるべきです。
これは無論、日本社会の課題解決に特化した研究のみを許容するという訳ではなく、宇宙の果てや人類の起源を知るということ、地球温暖化やコロナ対策などの、人類普遍の知的要求や課題に対応することも、日本国民の幸せにつながりますが、日本固有の事象へのアプローチも評価され、活発な研究活動がなされるような環境が形成されると、より豊かな日本社会の実現に近づきます。

日本は、非西欧圏で存在感のある学術コミュニティを有しているのですから、こうした学術出版の多様性を支持する声明をサポートし、アクションしていくべきなのではないでしょうか?

船守美穂