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UCバークレー教員、エルゼビア社に通告。契約交渉を再開せよ、さもないと...!

カリフォルニア大学(UC)の著名研究者のグループが、エルゼビア社に対して、契約交渉を再開しないと、エディトリアルボードから辞任すると通告しました。エルゼビア社とカリフォルニア大学は2月に契約決裂し、同大学の10分校は、それ以降に出版された論文についてアクセスができません。

この通告をしたレターは、UCシステム(10分校)において7月12日以降、回覧され、すでに4分校30名の教員からの署名を得ています。同レターの署名者は、28のCell Press誌のエディトリアルボードを辞めると、エレゼビア社に対して通告しています。これら28誌は、生物学分野の最高峰の学術雑誌、かつ、エルゼビア社の主力商品です。Cell Press誌のエディトリアルボードに名を連ねる、UCバークレーの教員の約1/3が、このレターに署名しています。
このレター通りとなると、エルゼビア社のCell Press誌は、これまで無償で得ていたものが得られなくなります。エディトリアルボードにおける著名研究者の名前〔による権威付け〕と、査読の〔品質〕保証(guaranteed peer review)です。

このレター以外にも、UC教員が展開している草の根活動があります。エルゼビア社のエディトリアルボードのメンバーが、去る3月からエルゼビア社に求めている、〔契約決裂の〕決定の見直しに関する公開質問状(open letter)は、世界から170名近くの署名を得ました。これに続く第2の請願書(petition)は、エルゼビア社がUC側の条件に合意できないのであれば、エルゼビア社の学術雑誌をボイコットするという内容で、世界から1000名近くの署名を得ています。ボイコットには、論文投稿、査読、エディトリアルボードへの参加の拒否などの方法があります。

しかし今回の新しい請願書は、UC教員のみによるもので、そうそうたる科学者達が、エディトリアルボードとの関係を断ち切ることになります。署名者には、以下の科学者が含まれます。遺伝子操作のためのCRISPR-Cas9技術の共発明者であるUCバークレーのJennifer Doudna氏、2009年のノーベル生理学・医学賞の共同受賞者であるUCSFのElizabeth Blackburn氏、UCLA David Geffen School of Medicineの研究担当副研究科長であるStephen Smale氏などです。なお調べによると、エルゼビア社の全学術雑誌のエディトリアルボードには1000名以上のUC教員が名を連ね、Cell Pressの28誌に限定しても110名以上のUC教員がいます。

このレターには、「〔エルゼビア社と〕UCとの間の新しい契約が保留となっているため、我々はCell Press誌のエディトリアルサービスを一時停止(suspend)することを、本レターで通告します。適切な解決が図られ、我々がCell Press誌との生産的な関係を再開できることを、心から望んでいます」とあります。

このレターの草稿に関わったUCバークレーの分子細胞生物学のMatthew Welch氏は、「これは、この問題に対する関心を集めるための一つの手段です」と述べています。同氏は、Cell Press誌のリード誌Cellのエディトリアルボードを務めています。
「このようなことをしても、学術雑誌の日々の運営にはさほど影響は与えないでしょう」と彼は付け加えました。「しかしこのレターは、大学が誠意を持って交渉をしようとしているのに合意に至ることができないのであれば、我々は雑誌運営に協力しないというメッセージを、学術雑誌に対して送ることにつながります。我々が、雑誌運営や論文投稿できる学術雑誌は、他にもたくさんあるのです」。

ユニバーサルなオープンアクセス

UCは、エルゼビア社の出版する2500誌の内の約2000誌へのアクセスを得るために、これまで毎年1100万ドルを支払っており、その5年契約が終了する12月末より前に、新しい契約を締結予定でした。しかし、エルゼビア社はUC側の求める主要な要件に合意できませんでした。UCは、UCの10分校で行われた納税者負担による研究が世界の誰にも自由にアクセス可能となる「ユニバーサルなOA」が、適切な価格で実現することを求めていました。

エルゼビア社との契約交渉チームの共同座長であるUCバークレー図書館員のJeffrey MacKie-Mason氏は、「このレターは、とても影響力を持つ可能性があると思います」と述べました。「我々はエルゼビア社の大口顧客で、それが大学としての交渉力につながります。〔しかし、それだけでなく、我々には、エルゼビア社に対してインパクトを与えうる、教員の存在があるのです〕。エルゼビア社には、教員の能力(talent)が必要です。論文を書き、論文を投稿する教員、論文を査読する教員、エディトリアルボードにいて、編集活動を行う教員など。教員なしでは、エルゼビア社はほぼ何もないのです」。

学術雑誌は著名研究者に対して、無報酬のアドバイザーとして、エディトリアルボードへの参加を依頼します。これは科学者にとって名誉ではありますが、学術雑誌にとっては、学術雑誌の権威付けとともに、投稿される論文がボードメンバーによって定期的に査読されることを保証するための、マーケティング戦略でもあります。Cell誌はエディトリアルボードに109名の研究者が名を連ね、そのうち2名はレターに署名をしたUCバークレーの教員Welch氏と分子生物学教授であるJames Hurley氏です。

「目標は、契約締結に至ることです。関係を永遠に断ち切ろうとしている訳ではありません」と、このレターをWelch氏と、CRISPRのパイオニアであるUCSFのJonathan Weissman氏とともに草稿したHurley氏は述べます。「これら雑誌のエディターを、悪者(villains)とはみなしていません。彼らは科学者コミュニティの一部です。しかしエルゼビア社は、企業体(corporate)としては、悪者であると私は思います。このレターにより、これら学術雑誌における友人達に、攻撃材料を与えることができます。彼らに、これが重要で、〔エルゼビア社の〕企業体側が折れなければいけないということを伝えるのです」。

UCバークレーの分子細胞生物学教授で、2013年のノーベル生理学・医学賞の共受賞者であるRandy Schekman氏は、MacKie-Mason氏に同意します。「このレベルの人々が離れていき、更に、人々が論文投稿したり、査読したりしなくなったら、エルゼビア社も分かるでしょう」。

以前Cell誌のエディトリアルボードにもいたSchekman氏は、PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences)のエディターおよびOA雑誌eLifeの創設エディターとして、長らくOAを推進してきました。PNASは、学会により発刊され、論文を6ヶ月後に無償公開します。彼は、エルゼビア社が莫大な利益を得る「海賊」であると表現しています。同社の出版事業は、40%もの利益率をほこり、これは株式会社としては世界屈指です。
Scientific American誌に6月20日に掲載された論説で、Scheckman氏は、UCの購読料から論文一本ダウンロードする費用を計算し、PNASについては4セントであったのに対して、エルゼビア社については1.06ドルであったとしています。
「エルゼビア社は、(このOA運動が)彼らの利益率に対する脅威であると認識しています」と彼は述べました。しかし、米国内の大学執行部との会話、特に州立大学との会話から、エルゼビア社が最終的には妥協せざるを得なくなることについて、期待を感じています。

「この動きが加速するように思います」と彼は述べました。「エルゼビア社は、米国から出て行くつもりなのでしょうか?なぜ同社が、未だにメッセージを受け止められていないのか、理解しがたいです。UCシステム全体と疎遠になっても大丈夫かのような振る舞いです。そして更に、〔エルゼビア社は〕ドイツとスウェーデンとは国レベルで同じ事をしました」。

Publish and Read契約

UCとエルゼビア社が契約決裂した2月以降、UCは、費用負担済みであった2019年1月1日以前に出版された論文へのアクセスはほぼ全て保持しましたが、それ以降に出版された論文へのアクセス権を失いました。エルゼビア社がアクセスの拒否を実行に移す7月10日以前に、UCは所属の研究者に対して、学術論文にアクセスするための代替手段を図書館が用意したと連絡しました。

情報学および経済学教授であるMacKie-Mason氏は、エルゼビア社の雑誌にアクセスするための法的な代替手段は、今のところ機能しており、不満は片手以内に収まるとしています。ほとんどのリクエストはバークレーの図書館員により24時間以内、多くの場合は4時間以内に、処理されます。代替手段とは、1)インターネット上で無償のコピーを検索すること、2)論文著者に直接アクセスしコピーを得ること、そしてその他の手段がない場合は、3)エルゼビア社に対して論文別の費用を支払い、論文を入手することです。
とはいえ、Welch氏もHurley氏も、このような応急処置(stop-gap measure)は、以前のインターネットを通した即アクセスから比べると、煩わしく厄介であると言います。「これがどの程度機能しているのか、不明です」Welch氏は述べます。

このため、Welch氏と同僚たちは、エルゼビア社に結果を思い知らせたいと思っています。過去に、エルゼビア社やSpringer Nature社などとの契約更新において、交渉がまとまらなかった際、教員は査読拒否運動を展開し、そのときは両社ともUCとの契約合意に至りました。しかし今回は両サイドとも、一歩も譲りません。

エルゼビア社の契約に対する世界的な悪評判(negative publicity)は、このアムステルダムベースの企業に対して影響を及ぼしているようです。エルゼビア社のCEOは1月に辞任し、その後着任した新CEOは、同社と契約決裂していたノルウェーとハンガリーと、「Publish and Read契約」契約を締結しました。このような契約において、経費のほとんどは、研究者が出版する論文に対して支払われます。論文出版に対して経費負担をした上で、研究者は学術雑誌の論文の全てに対してアクセスを得ます。
現在、同社はスウェーデンと同じ契約形態の交渉をしています。第2四半期でエルゼビア社の株価が3%値下がりしたことが、なんらかの効果を及ぼすかもしれません。「驚いたことに、彼らはPublish and Read契約というUCが求めていた契約形態を、我々との契約が決裂したあとに、既に2つも結んでいるのです」と彼は述べました。「今年に入ってから、エルゼビア社の姿勢に変化の兆しが見られます」。

しかしエルゼビア社がUCの条件に合意するまでは、学術論文へのアクセスの代替手段の手間がかかるでしょう。署名者は、契約交渉の再開を単に願っています。
「この運動がエルゼビア社に対して即座に影響を及ぼすとは思っていませんが、この問題に関心が集まることを期待しています」とWelch氏は述べました。「我々は、エディトリアルボードを務めることで、学術雑誌に対してサービスを提供しているのです。〔エディトリアルボードを降りると通告することで〕査読拒否以上に明確に、我々の反発を示すことができるのです」。

[Berkeley News] (2019.8.7)
UC faculty to Elsevier: Restart negotiations, or else

さすが、UCというか、UCバークレーの教員ですね。自分達の意志はしっかりと、態度で示すということですね。ちなみに電子ジャーナルの価格高騰に対抗して考案された、初のOA誌「PLOS」は、UCバークレー計算生物学教授のMichael Eisen氏が共創設者の1人です。
学術雑誌のエディトリアルボードに加わるのは研究者にとって名誉なことで、Cell Press誌のエディトリアルボードともなれば、なり手はいくらでもいると思われるので、このレターがどの程度の効力を持つかは分かりませんが、このように機会ある毎に意思表示をしていくことは大事ですね。
学術雑誌は、教員の論文投稿、査読、編集作業、そして教員による論文閲覧なしでは成り立たない「同人誌」的な性格なものです。生産側と消費側が分離している「商用誌」とは根本的に違うため、出版社が生産者然として勝手な値を付けてはいけないということを、学術出版社側に理解してもらう必要があります。

8月頭にUCLAで開催された学術情報流通関連のサマースクール(FSCI)に参加したところ、エルゼビア社との交渉にあたった担当とUCLAの図書館長からの挨拶がありましたが、この交渉の経緯について、教職員および学生の理解を得たことが、交渉を続ける上で、また交渉決裂後に学内にエルゼビア社の学術雑誌にはアクセスが得られないことと、代替手段で対応する必要性について理解を求める上で、とても力となったと強調していました。図書館や大学執行部から説明するまでもなく、教職員および学生が自発的に議論をし、コミュニティのなかで共通認識を持ち、団結をしてくれたようです。おかげで、交渉の任を負わされた図書館と大学執行部にしても、教職員や学生に対して負い目を感じることなく、教職員や学生からの全面的バックアップを得て、エルゼビア社と対応することができたようです。
日本においても、大手商用出版社との交渉において(契約決裂のカードも切る可能性があるのであれば)大学執行部を巻き込む必要性が言われていますが、大学執行部だけでなく、教職員や学生を巻き込むことも確かに重要ですね。大学執行部も、高い電子ジャーナル価格には閉口しているものの、実際に契約更新見送りを決断しなくてはいけない場面となると尻込みすることが予想されるので、交渉に入る以前からの、全学的な理解醸成は大事に感じます。

なおカリフォルニア大学は10分校をまとめて契約交渉をしており、全学的なOA方針や、大手出版社との購読契約、論文掲載料(APC)のディスカウントなど、関連情報をホームページにまとめています。エルゼビア社との契約交渉についても、ウェブサイトを独立して設け、エルゼビア社からの提案内容とUC側の提案内容を比較論じたり、現在のステータスを示したり、同社の学術雑誌へのアクセスの代替手段を示してたりしています。
教員の声やメディア報道なども紹介し、多くの教職員や学生が状況を確認し、自身で判断できるようにしています。エルゼビア社からの契約決裂後の発表内容について、一つ一つ事実確認をしているサイトも、なかなか興味深いです。

こうしたウェブサイトのなかに、カリフォルニア大学がエルゼビア社との交渉、そして後に無事契約締結にいたったケンブリッジ大学出版とのPublish and Read契約(移行契約)により得た知見を集約した「学術出版社との交渉のためのツールキット」が公開されています。
"Negotiating with scholarly journal publishers-A toolkit from theUniversity of California" (2019.5)
カリフォルニア大学で求めている移行契約の内容、学内における合意形成方法、そして、①交渉チーム、②コミュニケーションチーム、③分析チーム、④代替手段検討チームの検討事項が挙げられています。交渉チームや、購読契約と移行契約の経費節減効果を比較分析する分析チーム、契約が決裂した際の学術論文へのアクセスの代替手段を検討するチームの活動内容は概ね想像できるものなのですが、コミュニケーションチームの活動が徹底していることに感心します。
コミュニケーションは後から補足することはできない(cannot be an afterthought)こと、効果的なコミュニケーション戦略は、主要なステークホルダーのサポートの構築・維持、メッセージの一貫性、多様な結末への対応に役立つと指摘した上で、コミュニケーションは出版社側も見るため、交渉戦略の一部としてもみなすべきとしています。以下が、ツールキットに記されている、コミュニケーション戦略に関わる7つの提案です。本文には、これらが肉付けしてあるので、ご関心ある方はご確認ください。

学術出版社との交渉における「コミュニケーション戦略」

  1. コミュニケーションの体制は早い段階から構築しよう。
  2. コミュニケーションチームの能力を現実的に評価しよう。
  3. コミュニケーションのリーダーシップチームを構築しよう。
  4. コミュニケーションは上層部と外に向かってしよう。
  5. スポークスパーソンを決めよう。
  6. 団結した連合体を維持しよう。
  7. 既存のポリシーや原則に則ったコミュニケーションを展開しよう。

さて、カリフォルニア大学とエルゼビア社との契約決裂のニュースは、多くの称賛の声を呼びました。プランSは欧州中心のイニシアティブで、米国の大学等の反応は薄かったのですが、プランSやOA2020で提案するPublish and Read契約を求めるカリフォルニア大学のエルゼビア社との交渉については、米国の大学が多数、賛意を表したことが特徴的です。米国のBig Tenやカリフォルニア州立大学システム、デューク大学やアイオワ州立大学、ルイジアナ州立大学、サイモンフレーザー大学、テンプル大学、マサチューセッツ大学アムハースト、ノースカロライナ大学、ミネソタ大学、ワシントン大学、オレゴン州立大学、バージニア研究図書館連合やウィリアムズカレッジなどの名前が挙がっています。
これら大学で賛意を表している主体は、図書館員や図書館、あるいはプロボストのグループや教育研究評議会(faculty senate)など、多様です。また意見の表し方としても、単に個人あるいは図書館の見解として表現する場合もあれば、大学執行部あるいは教育研究評議会の決議を経て、大学としての意志決定として表している場合もあります。ただし、いずれの場合も、単にカリフォルニア大学に対してエールを送ることを目的としているのではなく、賛意を表することで、自大学が次期交渉において同様のアクションを採る可能性について、特に学内関係者に対して、言い含めることを目的としているようです。表現の強弱はあるのですが、ほぼ必ず、次期契約交渉や自大学における購読契約の状況について触れた文面があります。

うまいなあと思うのは、ワシントン大学(シアトル)の図書館の進め方です。まず、カリフォルニア大学とエルゼビア社の契約決裂とともに自大学の状況も図書館のサイトに報じた後、次期交渉において図書館が以下の交渉とライセンシングの優先順位を取ることを、教育研究評議会に承認させています

ワシントン大学教育研究評議会決議
「ワシントン大学の図書館がエルゼビア社やその他の出版社とビッグディールの購読契約を交渉する際に優先順位を交渉することへのサポート」

  1. 購読費を削減し、他のコレクションやサービスを侵さない、持続可能なレベルに引き上げる。
  2. 秘密保持契約(NDA)をなくし、図書館が契約条件を開示し、市場の透明性を高めることができるようにする。
  3. リソース共有を促進するために、図書館間相互貸借(ILL)を許容する。
  4. 論文を学生や同僚間で共有できるユーザの権利を保護する。
  5. ユーザのプライバシーとデータセキュリティを確保する。
  6. 学生および研究者が継続的に学術雑誌や論文にアクセスできるようにする。
  7. 論文の再利用とエンバーゴなしのデポジットの権利、自身の研究についての研究者の著作権を保護することにより、大学のOA方針をサポートする。
  8. 3カ年の契約期間を交渉することにより、市場の変化により柔軟に対応できるようにする。
  9. 図書館の全ユーザに、等価なサービスとアクセスを提供する。

これらの項目自体はそれほど先進的なものではなく、伝統的な購読契約における契約交渉において踏まえるべき項目が中心となっているように見えますが、これらの優先項目を列挙する前に色々な現状の説明があり、エルゼビア社とカリフォルニア大学やドイツ、スウェーデンなどが契約決裂したことが盛り込まれており、こうした新たな契約形態についても適用できる内容となっています。この内容を教育研究評議会にて承認を得るにあたり、世界の電子ジャーナルの契約交渉の状況や新たなOA出版契約の方法についても説明し、徐々に学内における理解の向上を図ったのではないでしょうか。
日本の大学においても、エルゼビア社とカリフォルニア大学の契約決裂について大学としてどのように考えるかをまとめるという作業を何かしらの形でしてみると、学内の理解増進につながるように感じました。

ちなみに、エルゼビア社とのPublish and Read契約に至ったノルウェーの交渉団からも、交渉に入る前に大学執行部の理解を得て、交渉の方向性について意志決定してもらうのに、とても時間をかけたと聞いています。その結果として、交渉に入る前に、ノルウェー大学協会(Universities Norway)から以下のような、Publish and Read契約に即した交渉の方向性を記した文書がとりまとめられています。このような文書のもとに、交渉を進められたことも、エルゼビア社との契約締結に至った一つの要因と聞いています。
Universities Norway, "Expression of support for a common negotiatingstrategy for open access to research articles," (2018.4.7)

いずれにしても、カリフォルニア大学にしても、OA2020率いるマックスプランク研究所にしても、ノルウェーにしても、交渉担当が独自に大胆な行動をしているのではなく、機関内の合意形成を非常に大事にしています。またいずれの機関も、外部の機関からの応援やサポートを強く必要としています。
日本の大学も、同じ学術コミュニティの一員として、これらの動きに対して意思表示をしつつ、その議論のプロセスを自身の機関における合意形成に役立て、そしてアクションに結びつけていくことが求められているように感じます。

船守美穂