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アムステルダム自由大学、オランダ語の学士プログラムを閉鎖

アムステルダム自由大学は、学生が十分集まらないため、オランダ語〔国文学〕の学士プログラムを閉鎖することを決定しました。ここ数年、入学志願者が少ない状況が続き、今年は5名しか入学しませんでした。一方で、同プログラムは5名のスタッフで運営されていました。同大学のスポークスマンWessel Agterhof氏は、「運営すればするほど、赤字となる」と述べました。

同スポークスマンによると、オランダ語を学ぶ学生は過去10年で60%も減少しました。このプログラムは継続不可能のため、来年度から閉鎖します。「計算は明快です。政府は学生一人当たり教員一名の給与を負担してくれるわけではないので、このプログラムはコストがかさみます。成長がないのであれば、いずれかの段階において閉鎖をするという選択肢しか残りません」とAgterhof氏は述べました。

オランダ文学のシニアな教員であるJohn Koppenhol教授はこれを「極めて遺憾な」大学の決断であるとしています。「ここで我々は母国語について議論しているのです」と彼は新聞の取材に対して述べました。「母国語は我々の文化の理解につながるため、母国語を学び続けることは重要なのです」。

オランダ語を学びたい学生は、アムステルダム大学やライデン大学、ユトレヒトやナイメーヘン、フローニンゲン大学で学ぶことができます。他方、昨年オランダ語プログラムに在籍していた学生数は全国で200名程度です。

国会議員はその党派にかかわらず、Ingrid van Engelshoven教育大臣に、アムステルダム自由大学の学位プログラムを維持するように要求しています。「これは悪い方向の発展です。これは我々の母国語なのです。同大学のプログラム閉鎖を容認するなど、想像を絶します。今のところ教育大臣は介入を拒んでいますが、それは許されることではありません」とキリスト教民主党(CDA)のHarry van der Moolen国会議員は新聞の取材に対して述べました。

オランダの大学は、どのような科目や学位プログラムを提供するかについて、自身で決定する権利があります。「しかしオランダ語がどこにも提供されなくなったら、これは完全な敗北です」とD66党国会議員のPaul van Meenen氏は述べます。「目標管理(MBO)トレーニングにおいても、我々はハーグ(オランダの事実上の首都。ここでは、中央政府=教育文化科学省を指す)から、大事な科目がどこでも十分に供給されなければいけないとしています。であるのなら、こうした大学における重要な科目についても、同様の措置をして良いはずです」。Van Meenen氏に言わせれば、大学はプログラム提供において収益性を気にしすぎです。「大学はお互いに調整をしていません。たとえばアムステルダム大学は、国内ですでにどこの大学も提供していない語学の科目をとりやめました」。

CDA党もD66党も、オランダ語を学ぼうという学生が拡大するように、なんらかの施策を展開した方が良いと考えています。「数学においても少し前に同様の問題がありました。しかし、数学を学ぶ学生数はその後また拡大しました。オランダ語に対する需要が再度拡大したときに、これを学ぶことのできる場所が十分にないという事態は避けたいのです」とVan der Moolen氏は述べました。

フルンリンクス党(GroenLinks, オランダの緑の党)国会議員のZihni Özdil氏は、アムステルダム自由大学の決定を「残念」としましたが、このような事態がより大きな問題に起因すると指摘しています。「これはアムステルダム自由大学がいけないのではなく、ハーグの政策がいけないのです」と同氏はツイッター上のビデオで述べました。「我々の大学の財政支援の方法のどこかが間違っているのです。教育をある種の製品(product)と捉えることの問題が露呈しています。我々を学生を、多ければ多いほどよい利益(return)のように捉えているのです」。

自由党(PVV)国会議員Harm Beertema氏は、なんらかの「緊急措置」をしないと、他大学もアムステルダム自由大学に続きかねないと警鐘を鳴らします。「オランダ語を学ぼうとする学生が縮小しているという問題は、どこにもあるのです。またオランダ語は、教員養成においてまだ提供されていますが、これを維持するためには大学で教育を受けたオランダ語の専門家が必要です」。

自由民主国民党(VVD)は、問題は理解するものの、パニックをする理由はないとしています。「オランダ語を学べる大学はまだ十分にあるのです」とVVD国会議員のJudith Tielen氏は述べます。「学生数がそんなに少なかったら、質の良い教育を大学は提供できません」。

[NL Times] (2019.2.25)
Amsterdam University Drops Bachelor's Degree in Dutch

オランダは、英独などの大国に挟まれた小国のため、自国の競争力を維持するために積極的な国際化策をとっており、英語による大学教育プログラムなども積極的に提供しています。そうした国際化政策が功を奏して、オランダという国は非英語圏の小国の割に全く見劣りしないわけですが、影では今回紹介したようなオランダ語離れと、それによる「オランダ」という国の文化とアイデンティティ喪失といった問題を抱えているわけですね。

一方で、オランダの国会議員がこれだけ、愛国主義的な発言をするのは少し羨ましくもあります。英米は教育案件であっても経済合理性で判断がされますし、日本も数年前に文系廃止論が政府から流れ、(これは誤解だったとされているものの)、だいぶ騒ぎになりました。日本の騒ぎについて言えば、文学部が縮小しても日本語はなくならないという奢りからくる流言ですね。オランダの国会議員に少しは見習ってもらいたいものです。

なお私が以前在籍していた東大では、「我々がこれをやめてしまうと、日本のどこに行ってもこれを学べなくなる」という指摘が頻繁にあり、これはこれで物を整理することができず困るのですが、一方で、「日本の良心」として見識(?)のある対応が多くの場合、図られているように感じます。

船守美穂