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スウェーデン、エルゼビアとの契約キャンセルを表明

2018.05.17
オープンアクセス 学術情報流通

スウェーデンが、エルゼビア社との学術雑誌の契約を更新しないと5/16付けで発表しました。契約は2018年6月30日にキャンセルされる予定です。

スウェーデン政府は、論文が出版と同時にオープンアクセス(OA)となる、immediate OAの目標を2026年に設定しており、スウェーデンで学術雑誌の契約交渉を担っていたBibsam Consortiumは、この目標達成に向けて、購読料ベースの出版モデルからOA型出版モデルに転換を図るべく、以下の3つの要件を求めていました。

  • ・ コンソーシアム参加機関の研究者が執筆した、エルゼビア社学術雑誌における掲載論文の、即座OA
  • ・ 参加機関の、エルゼビア社の全1900学術雑誌に掲載された全ての論文に対する、閲覧権限
  • ・ オープンアクセスへの移行を可能とする、持続可能な価格モデル

これらの要件を満たすモデルをエルゼビア社が提示できなかったため、契約は6月30日以降、更新されない予定です。

スウェーデンの研究者は、毎年約4000件の論文をエルゼビア社の学術雑誌に出版しています。2017年には、1200万ユーロ(15.6億円)の学術雑誌購読料に加えて、130万ユーロ(1.7億円)が論文出版料(APC)として支払われました。

コンソーシアム運営委員会の座長で交渉チームのリーダーである、Astrid Söderbergh Widdingストックホルム大学長は、以下のように述べています。
「学術情報に対するコスト上昇は世界的に、出版社には高収益をもたらす一方で、大学の予算を圧迫しています。現在の出版と価格のモデルと異なる方法として、機関が論文の出版経費を負担する一方で、論文が即座OAとなり、誰しもが閲覧可能な状態にする方法があります。学術論文の購読と出版の双方の価格が急速に上昇しつつあるなか、我々はトータルな学術出版コストをモニターする必要があります。現在の学術情報流通システムは変わる必要があり、こうしたOAへのサステイナブルな移行への要求が満たされないのならば、我々の唯一とれるオプションは、契約をキャンセルすることのみです」。

エルゼビア社コンテンツへのアクセス
現在の契約には、契約期間終了以降の条項に記載があるため、コンソーシアム参加機関は1995-2017年に出版された論文については引き続き閲覧権限があります。ただし2018年6月30日以降に、エルゼビア社のプラットフォームに出版された論文について、同出版社はアクセス権限を与えない予定です。

Bibsam Consortiumについて
スウェーデン国立図書館は1996年から、スウェーデンの大学、ユニバーシティー・カレッジ、政府機関、研究機関を代表して、電子情報リソースのライセンス契約の交渉をしています。計85機関が参加しており、68の契約のいずれかには関わっています。2017年の総契約実績は、3500万ユーロ(45億円)でした。

[National Library of Sweden プレスリリース] (2018.5.16)
Sweden stands up for open access - cancels agreement with Elsevier

ドイツに引き続き、スウェーデンも、エルゼビア社に対して電子ジャーナル契約更新の見送りを突きつけました。エルゼビア社に要求していた3つの要件は、ドイツのProjekt-DEALの要件とほぼ同一のものなので、共同歩調をとったものと思われます。
今5月半ばですが、これから契約が失効する6月末までに、水面下の交渉が更にあって何かしらの合意に至るのか、それともこのまま失効となるのか、注目されるところです。

またドイツの場合は、契約失効後に、エルゼビア社のコンテンツへのアクセス権は一時期なくなったものの、エルゼビア社が、契約交渉中はアクセス権を提供するという申し出をしだしたおかげで、アクセス権がほどなく復活し、ドイツの研究者は現在、学術論文を不自由なく閲覧できます。同様の配慮がスウェーデンにおいてもなされるのか、なされないのかも、注目されるところです。

船守美穂