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200近くのドイツ学術機関がエルゼビア社との契約失効

2018.01.05
オープンアクセス 学術情報流通

契約更新となる2018.1.1より、ドイツの200近くの学術機関がエルゼビア社との契約が失効となりました。

しかし昨年の契約失効と同様、エルゼビア社が次期契約締結までは、学術雑誌へのアクセス権を提供するとしたことから、ドイツの学術機関は引き続き、エルゼビア社からの学術論文を読むことが出来ます。

ドイツは、ドイツ学長協会(HRK)のもとに、ドイツの学術機関とエルゼビア社との間のナショナルライセンスの契約締結のためのProjekt DEAL事務局を置き、交渉にあたっていました。
交渉内容としては、エルゼビア社による約2500のジャーナルに対するフルアクセスについて、これまでドイツの大学図書館等が支払ってきた額の約半額で交渉をしていましたが、合意には至りませんでした。

エルゼビア社側のスポークスマンHarald Boersmaは、「引き続き契約交渉を続け、2018年の第一四半期中に、2018年および長期のナショナルライセンスについて合意をする見通し。2018年から契約失効した学術機関には、合意に至るまでの、特に2018年の一年間は、学術雑誌へのアクセス権を引き続き提供すると連絡した」と述べています。

契約交渉チームの一員で、ベルリン自由大学の数学者Günter Zieglerは、「プレプリントも含めると近年、多くの論文がインターネット上でオープンにアクセス可能であり、我々の方が契約交渉に有利である。そもそもこれまでの学術雑誌の購読契約が必要であるか、疑問である」と述べています。

契約交渉は、ドイツの研究者が執筆した論文の即時オープンアクセスも含んでおり、これが実現すると、公的資金を得た研究成果をオープンにするという国際的なエフォートに向けて、大きな一歩となります。

[Nature] (2018.1.4)
Germany vs Elsevier: universities win temporary journal access afterrefusing to pay fees

[Projekt DEAL](2017.10.16)
2018年からエルゼビア社との契約がなくなったドイツの学術機関(一覧)

皆さま、新年、明けましておめでとうございます。
昨年秋頃から猛烈な忙しさで、情報発信ができないでいましたが、あまり大きな動きもなかったので、それで良かったのかと思います。せいぜい2017年10月ごろにResearchGateが著作権侵害で大手出版社に訴えられ、サイト上の論文の取り下げを求められた一連のゴタゴタ程度でしょうか。これについてはまたそのうちレポートします。

ドイツの大学とのエルゼビア社との契約交渉決裂も、一回目となった昨年は大きく報じられましたが、今回は短い記事で淡々と報じられたのみでした。そもそも交渉決裂しても、ドイツの大学は学術雑誌へのアクセス権を失っていないので、ニュース性にも乏しいわけです。

なお記事に、「近年、多くの論文がインターネット上でオープンにアクセス可能(OA)」とありますが、以下の論文の推定によると、世界の論文の28%がOAで、近年の論文については45%がオープンとのことです。
また近年のOA論文は、ゴールドOA(OAジャーナル)、グリーンOA(機関リポジトリ上)、ハイブリッドOA(学術雑誌のOAオプション)に依る以上に、ブロンズOA、つまり、OAライセンスが明言されていないにもかかわらず、出版社のサイトでOAとなっている論文なのだそうです。

Piwowar H, Priem J, Larivière V, Alperin JP, Matthias L, Norlander B, Farley A, West J, Haustein S. (2017)
The State of OA: A large-scale analysis of the prevalence and impact of Open Access articles.
PeerJ Preprints 5:e3119v1

学術論文のOA、2018年はどのようになっていくのでしょうか?
本年もどうぞよろしくお願いします。

船守美穂