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UCバークレー、Coulter氏の講演キャンセルの連絡の二日後に発表撤回

2017.04.21

今年2月頭、UCバークレーにおいて、差別主義的な新右翼のYiannopoulos氏の講演が暴動騒ぎへと発展し、講演が急遽とりやめになったレポートをしたところですが、このたび4/27に予定されていた、Ms. Ann Coulterの講演についても、十分に安全な会場を確保できないことを理由にキャンセルすると、大学当局が学生グループに4/19付けで連絡しました。Coulter氏は、右翼で、移民やその他の社会問題について厳しい見方をすることで知られている人気作家です。複数のグループがSNS上でこの講演にかこつけて暴動を起こす可能性を示唆しており、大学当局のこのような判断に至りました。
同氏は、この決定に強く反発し、講演が公式には取りやめられても、決行する旨、ツイッター上で述べていました。

一方、二日後の4/21、大学当局はこの決定を翻し、Coulter氏の講演を認めると発表しました。ただし、当初予定されていた4/27ではなく、5/2に開催予定とのことです。
二日前の講演取りやめの発表を受け、各方面から大学に対して非難が集中し、このように決定を翻すこととなりました。

前週の4/14、Auburn大学では4/17に企画されていた新右翼で白人至上主義者であるRichard Spencerの講演について、取りやめを発表していました。しかし、連邦裁判所により違法と判断され、Spencerの講演を決行しています。
UCバークレーは、Auburn大学に続く、大学当局による講演取りやめ失敗の事例となります。

(2017.4.19)
[Chronicle of Higher Education] Berkeley Cancels Speech by Ann Coulter, Citing Possibility of Rioting
[Inside Higher Ed] Berkeley Cancels Ann Coulter

(2017.4.21)
[Chronicle of Higher Education] Berkeley Reverses Decision to Cancel Ann Coulter Speech
[Inside Higher Ed] Free Speech, Safety and the Constitution

[Chronicle of Higher Education] A White Supremacist Comes to Auburn (2017.4.19)

なんというか、激しいですねえ・・・。日本の大学では想像できないです。

ちなみにハーバード大学でも、ある学生グループが、論議(controversial)を呼ぶスピーカーの講演でキャンパスを満たす(saturate)ことを意図して、そうした講演の企画を行っているということが、4/10に記事になっていました。
この学生グループ会長によると、こうした議論の多い講演者を呼び、これに抗議し黙らせるという運動(movement)が一般的となっており、こうした場をハーバード大学にも作りたいとのこと。候補者の一人は、人種差別的な理想を追求するCharles Murray氏で、同氏は3月にMiddlebury Collegeでの講演で学生からの野次(「黙れ!黙れ!」などのコール)で黙らされたとのこと。ハーバード大学は、(こうした野蛮な方法ではなく)言論の自由のロールモデルとなるような批判ができると思う、とのことです。

自分の意見をきちんと論理立てて主張し、論戦するということに馴れていない日本人については、少しは見習った方がいいのかもしれませんが、一方で、上記のAuburn大学で講演をした白人至上主義者のSpencer氏の以下のような発言を見ると、単なる自分の価値観の押しつけで、きちんとした論理立てた議論といったものにはならなそうですね・・・。
"The alt-right is about identity," he told the crowd, his voice thundering into a crescendo as he went on. "Period. End of statement. It's about being a white person in the 21st century. That is why we're dangerous!"

[Inside Higher Ed] In-Your-Face Free Speech (2017.4.10)

一方、政治的立場をとったり、運動をしたりするのは学生だけではありません。教員も、世間一般のポピュラリズムに対抗して、運動を始めています。

トランプ大統領の、研究費や環境保護庁の予算削減、地球温暖化に関わるオバマ時代の規制の撤廃などを受け、ワシントンDCでは "March for Science(科学のための行進)" という団体が立ち上がりました。大統領就任式翌日の1月に50万人が参加したWomen's March(世界的には500万人近い参加)に引き続くイベントとして、明日4月22日にデモが行われます。こちらも世界的なイベントとなる予定で、400~500の都市が参加予定です。

基本的には科学の重要性や、エビデンスに基づく意志決定を主張するためのデモですが、より広く、科学教育や科学におけるジェンダーバランスなども含めてデモを行う都市もある模様です。

米国では米国化学会(ACS)や米国地球物理学連合(AGU)、米国科学振興協会(AAAS)などが賛同しており、ドイツでもマックスプランクやヘルムホルツ協会などが賛同し、その他イギリスや韓国、南ア、グリーンランド、オーストラリア、ブラジルなどが参加国として取り上げられています。
韓国ではPOSTECHの物理学者Seunghwan Kim教授がインタビューに対して、「ソウル中心部で1000名規模の参加を見込んでおり、メディアにも取り上げられ、気運が盛り上がっている」と説明しています。

これに対して日本はお寒いですねえ・・・。"March for Science" でGoogle、Twitterなどを検索しても、ほとんど何も引っかからないですし、あっても「日本ではほとんど話題にされていないみたい」といった内容。一応Facebook上に、"March for Science Tokyo" のサイトが立っていますが、「参加予定48人 · 興味あり62人」で、しかもほとんどが外国の方です。。。

March for Scienceについては米国等海外でも科学者全員が賛成している訳ではなく、科学者がこうした政治的立場をとることに反対する意見も見られます(以下Nature記事)。
しかし、こうした運動の存在を知って、それに消極的な立場を取るのと、全く知らないでやり過ごすのとでは、やはり違うのではないのでしょうか。こういうことに対して無頓着な日本のアカデミアに対して、世界のアカデミアから批判的視線が向けられてもおかしくないように思います。

なお東京におけるMarch for Scienceは明日4/22(土)10~12時に日比谷公園で行われる予定のようです。主催者はAgnes Oshiroとなっています(以下Facebook参照のこと)。

[Inside Higher Ed] Marching for Science Internationally (2017.4.21)

[Science] Some 100 groups have now endorsed the March for Science (2017.3.15)

[Nature] How the March for Science splits researchers (2017.4.18)

[Facebook] March for Science Tokyo

船守美穂