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UCSF、バイオメディカルで5億ドルの寄付を得る

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)が、Helen Diller財団から5億ドルの寄付を得ました。
2億ドルは教職員、2億ドルは学生の医学系の分野における支援に、残り1億ドルは学長の裁量で自由に使用できる経費です。
こうした寄付にしては異例に、全般に自由に使える経費(紐付きではないということ)です。
学長裁量経費以外の4億ドルは、現在22.5億ドルの大学基金に加えられ、大学基金は18%も規模拡大しました。この寄付額は米国の高等教育においても過去最大級です。

Helen Dillerは、Prometheus Real Estate Groupを1965年にベイエリアに設立した夫Sanfordとともに、この企業をサンフランシスコの最大の不動産開発企業としました。2015年に亡くなる直前の2年間、彼女はUCSFとともに、寄付に関わる財務計画を練ってきました。
「これら3つの資金の領域(特に医学、歯学、看護、薬学)は、彼女が最も重要と思っていたものです。急速に発展する科学の世界において、UCSFが迅速に行動し、優れた成果を輩出することを彼女は望んでいました」と彼女の娘のMs. Safierは語っています。

[The Chronicle of Philanthropy] (2017.1.12)
Helen Diller Fund Gives $500 Million for Biomedical Research, With Few Strings Attached


高等教育の情報化と全く関係のない記事ですが、あまりにも巨額の寄付で、ワシントンストリート誌やブルームバーグ、ABC7ニュースなども一斉に報じ立てているので、ついレポートしてしまいました。

ちなみにUCSF単独ではないのですが、昨年9月にはUCSFを含むサンフランシスコ・ベイエリアの3大学が、フェイスブックの創設者Zuckerberg夫妻からの支援を得て、6億ドルのバイオメディカル・センターを設立する運びとなりました。
これは奥さんの方のChan Zuckerberg Initiativeという、子供の病気を治療・防止・管理するための30億ドルの寄付のコミットメントから支出されています。

[Inside Higher Ed] (2016.9.22)
Bay Area Universities, Chan Zuckerberg Initiative Launch Biomedical Center

[The Chronicle of Philanthropy] (2017.9.21)
Chan Zuckerberg Initiative Pledges $3 Billion for Science Research

両者合わせるとベイエリアにバイオメディカルで11億ドルが投入されている計算で、サンフランシスコはバイオメディカルのメッカになりそうです。他の都市・大学は、どうにも太刀打ち出来なそうです・・・。

それにしても、日本は各国の研究開発をみる際に政府系予算をどうしても見がちですが、バイオメディカルだけで30億ドルもの寄付が一財団からなされるのですから、米国については財団の動きは見ておく必要があります。英国もチャリティーからの大学への予算は大きいので、同様かと思います。
ただしこうした寄付を加速している税控除について、トランプ政権下で、10億ドル以上の大学基金を有する大学への寄付については、その1/4はミドルクラスへの学資援助に振り分けなければいけないという法案が検討されており、今後どのようになるか、動きを注視する必要がありそうです。

[Bloomberg] (2017.1.5)
Rich College Donors' Big Tax Break Is Suddenly in Danger

船守美穂