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ホワイトハウス、科学データのグローバル共有強化の報告書を発表

大統領府科学技術政策室の国家科学技術会議(NSTC)の科学委員会(Committee on Science)の国際問題小委員会(Subcommittee on International Issues)に置かれたオープンデータ共有ポリシーワーキンググループ(Interagency Working Group on Open Data Sharing Policy: IWGODSP)から、科学データのグローバル共有強化に関わる報告書が発表されました。

科学データがオープンにアクセス可能であることは、国際的な科学協力の発展に強く寄与するという考え方のもと、この報告書はグローバルな科学データ共有に関わる7原則を挙げています。
これは、地球規模の課題解決のために国際的な科学技術協力を推進するために、公的資金をもって得た非機密(unclassified)な科学データへのアクセスを拡大することへの、米国政府のコミットメントを示すものです。
この7原則は、公的資金を得た科学データ、これは1次データ(観測、実験等)や2次データ(1次データを用い計算機処理した結果)を含み、またそれらに伴うデジタルなメタデータにも適用されます。

7原則は以下の通りです。

  1. 科学における進歩と協力は、科学データの創造、記述、キュレーション、メインテナンス、バリデーション、発見可能性、アクセシビリティー、そして流通への、初期段階からの継続性のある関与により利益を得る。
  2. 科学データは法、およびプライバシー、機密性、セキュリティーその他の適切な制限(例えば独占的所有権、企業秘密情報、知的財産権)の下で認められる範囲で、オープンにアクセス可能となるべきである。
  3. 政府が支援した科学データは可能な限りにおいて無料で利用可能となるべきである。
  4. 国際的な科学技術協力活動のパートナーは、プロジェクト開始時点において科学データが用いられる全期間が考慮された形で、データマネジメント計画を策定すべきである。
  5. 連邦政府機関は、政府の支援による科学データの国際的な共有の実施のために、互換性があり、広く利用可能で、オープンソースフォーマットによる形で、技術的、法的な面の相互運用可能性を向上させるべきである。
  6. 政府が支援した科学データ(および出版物)は、公開の時期と排他的使用権の期間を明示したうえで、可能な限り早期に利用可能とすべきである。
  7. 連邦政府は国際的な科学技術面のパートナーと協力し、共同活動のためのデータのオープンな共有を促進させるポリシーとデータ標準を採用すべきである。

これら7原則は、これまで米国内(米国行政管理予算局(OMP)や科学技術計画局(OSTP))や国際的な場(G8, OECD)においてオープンデータや公的資金を得た科学研究やデータに関連して打ち出された方向と一にするもので、これらを整理するものとなっています。
この原則は、米国の各助成機関が、公的資金を得たデジタルデータや学術論文のアクセスを拡大するための政策を打ち出し、また国際的には、2016.12に開催されたOpen Government Partnership meetingや、G7, G20, OECDにおける科学データ共有に関する取組、昨年11月に開催されたG7 Open Science WGの取組がなされている時期に、時節を得ています。

公的資金を得た科学データや研究成果へのアクセス拡大は、米国政策における優先事項で有り続けます。科学は、適切かつ国際的なデータや情報、知識の交換に依存します。
連邦行政府や助成機関は、国際的な科学技術協力の文脈における科学データのオープン化等を進める際に、この原則に沿うことが期待されています。

[White House Blog] (2017/1/6)
Strengthening Global Sharing of Scientific Data and Research Findings

[米国の科学政策 ― 遠藤悟ブログ]
連邦政府により支援を受けた科学データと研究成果への国際科学協力を通したアクセス向上のための原則
(7原則の和訳の出典)

このような、これまでの政策を整理するような7原則がなぜ今このタイミングに出てきたのか、私は存じ上げないのですが、おそらくオープンデータを牽引したオバマ政権がそろそろ幕を引くにあたり、その成果を飾るとともに、次期トランプ政権がこれを反古にしないための防御策なのではないかと勘ぐっています。

科学技術計画局(OSTP)からは2017.1.5付けで以下のような、オバマ政権下のオープンデータや科学データの共有等に関わる一連の取組みを列挙する報告書もだされています。
Cabinet Exit Memo, January 5, 2017
また同日、ソーシャルメディアのデータをアーカイブし、再利用するための方針も打ち出されています。
New Lenses on the First Social Media Presidency

何よりも、「国際的な科学協力」「グローバルなデータ共有」「地球規模の課題解決」など、国際性を、科学データの共有の文脈で強調しているという点で、この文書は特徴的に思えます。

船守美穂