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RDA (Research Data Alliance) 19th Plenary に参加しました

2022.08.08

International Data Week 2022の中で2022年6月20日~6月23日に開催されたRDA (Research Data Alliance) 19th Plenary に参加しました。
RCOSから参加したメンバの参加報告を元に、いくつかのセッションをピックアップして簡単な紹介をします。

RDA (Research Data Alliance) 19th Plenary
日時:2022年6月20日~6月23日
プログラム+会議資料など

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Digital Badging for Research Data & Software

このセッションでは、研究データやソフトウェアに付与する「デジタルバッジ」をテーマにいくつかの発表が行われました。学術コミュニティにおいて、人や論文にバッジを付与する取り組みはいくつか目に入っていたのですが、実のところその意義や効果については良く理解できておらず、最新動向を学ぶ観点で参加したところです。
セッション全体としては、研究データに対するバッジ付与、ソフトウェアとバッジ付与に関する発表のほか、関連するトピックとして研究の再現性に関する発表がありました。特に印象的だった内容として、研究データにバッジを付与することによってデータ提供者の行動変容を促す効果がある、というものがありました。報告では、あるジャーナルにおける論文根拠データにバッジを付与する取り組みを実施し、「利用可能」との表示がある根拠データを分析したところ、バッジが付与されたデータは付与されていないデータよりも実際に利用可能な数が多かった、とのことです。「利用可能」と書いてあるにも関わらず利用可能になっていない、という点、それはそれで問題ではありますが、「きちんと利用可能にしなければならない」という動機づけになっている可能性が示されており、大変興味深い発表でした。一方で、バッジの効果に対する限界や懸念、複数バッジ運用による弊害の可能性なども質疑で寄せられており、確立した見解はまだ存在していないようです。当日の発表資料やセッションノートはこちらからアクセスできますので、併せて是非ご一読ください。
(南山 泰之)


◆ Data search, web search and literature search

このセッションでは、検索を軸としてFAIR原則のFindableをいかに実現するかの議論が実施されました。まず研究者の活動にとってどの程度「検索」が大事かという議論があり、モチベーションの認識合わせが行われました。特に印象的だったのは、ログを利用した検索の発展形やクエリボックスの動作を通して、利用者の動きを正確にとらえようとする試みです。言うまでもなく、Webサービスである検索システムはGoogle Analyticsや各種ログ解析を通じて、一般的な統計情報を得ることができています。しかし、これを使った検索機能の強化や、適切な検索利用者のトレースの仕方については、これまでベストプラクティスが示されることは少なかったように思います。発表では、利用者の検索行動を強化するために、ファセットの動的な表示やデータの見せ方のような、インターフェース側の解決策が提案されていました。これを参考にRCOSでも研究情報の検索やユーザ行動のトレースについて積極的に改善していきたいと目論んでいます。
余談ですが、学術検索基盤Research Data Australiaの発表者は、本イベント名のResearch Data Allianceと全く同じ省略形(RDA)のため、説明がややこしいことを注意喚起されていました。
(大波 純一)


Open Science Graphs interoperability: data models and data exchange protocol

このセッションでは、Open Science Graph(OSG)に関する発表がなされました。OSGとは、研究活動におけるライフサイクル上のあらゆる研究データのエンティティ・アクターを「結びつける」情報スペースを意味するもので、その対象としては、プロジェクト、出版物、データ、ソフトウェア、サービス、研究者、組織、施設などが含まれます。Web上には既に数多くのOSGサービスが存在しますが、残念ながらそれらのサービスには、互換性がほぼなく、相互に再利用することが困難となっていることが問題視されていました。本セッションでは、OSG間の互換性に関する諸課題を解決すべく立ち上げられた Interest Group(IG)の活動ならびに、その活動で策定されているOSG互換性ガイドライン・API等についての説明がなされました。さらにOSGとの関連性が高い活動として、オーストラリアでの永続的ID(Presistent ID)に関するもの、ならびにKnowledge Graphを記述するための SPARQL言語についての紹介などがなされました。
(下山 武司)


A Fabric for FAIR Digital Objects

このセッションでは、2013年に開始されたInterest Group(IG)である "Fabric" に関して、いくつかの発表がなされました。この "Fabric" は、FAIR原則(Findable, Accessble, Interoperable, Reusable Principle)に基づいて公開されたデジタルコンテンツ (Digital Objects, DO)に関する諸課題について議論するためのIGで、その目的はFAIR 原則に従った、運用・実装について、共通コンポーネントの特定、ならびに境界を超えた特性とサービスの定義について策定し、参加者の合意を得ることとなっています。このセッションでは、計算機上での扱いを容易にするためにDOに付加されるメタデータと永続的ID(PID)の定義、DOのアーキテクチャについて、インターネットデータを例にした考察が発表されました。さらにDOの事例として、物理的対象物をデジタルツイン技術を用いて保存する際のスキーマについて、蝶を例に説明したものなどが紹介されました。
(下山 武司)


◆ Beyond machine-actionable DMPs - let's go forward together!

研究データ管理の計画を記述するDMP(Data Management Plan)を人の間のコミュニケーションだけに使うのではなくコンピュータ処理ができる文書としたmaDMP(machine actionable DMP)に関する標準化などを推進するRDAのmaDMP WGが主催したセッションでした。セッション名にある通り今までの取り組みを元にさらに進化した取り組みについて共有しようという会合となりました。具体的には以下の2つの取り組みが紹介されました。

これらの取り組みについてはmaDMPの作成・保存の他にmaDMPを活用したいくつかの研究データ管理サービスとの連携についても試行されていることがbeyondの部分だと主張していると理解できました。これらは、 maDMP の "ma" の部分について簡単な事例であるものの、本当に研究データ管理基盤の利用者が求めているものかどうかは、これからこれらのシステムの利用状況をフォローするなどして確認する必要があると感じました。
(横山 重俊)


◆ Bringing Together Data Management and Computation - Social and Architectural Challenges

研究データ管理とそのデータを処理するスーパーコンピュータをはじめとするコンピュータ設備の連携についての事例を共有することで、そのアーキテクチャ的な課題や組織的な課題について議論するセッションとなりました。 具体的には以下の3つの取り組みが紹介されました。

これらの発表後の全体議論の中で、東京大学の田浦先生がmdxやRDCが各大学や研究機関毎の取り組みを超えたデータとコンピュータ設備の連携についての基盤を構築する国レベルで跨る取り組みであることを紹介したことに対して、米国での機関毎中心の取り組みと比較して議論が進められたことを興味深く聞きました。
(横山 重俊)