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リサーチエンジニア

大学ICT推進協議会(AXIES)の年次大会が、12月9日から11日までオンラインで開催されました。
AXIESは、主に大学の基盤センターの人たちが集まるコミュニティです。業務に関係する部会を立ち上げて、情報交換したり共同で作業をしています。年次大会は、部会の成果のお披露目会という役割もあります。

2020年の春にこのAXIESで、大学デジタルトランスフォーメーションという名前のタスクフォース(TF)が設置されました。大学の運営や活動でのICTへの依存が高まる中、TFのミッションは、2030年を見据えて我々が何をしなければならないかを、提言としてまとめることでした。
TFのメンバーは、北大の重田さん、東大の田浦さん、京大の中村さん、阪大の尾上さん、京大の岡村さん、そして私と主査である京大の梶田さんです。

振り返ると、このTF設置のために動き出したのは1年以上も前のことでした。安浦先生には、いろいろと相談に乗って頂きました。この(↓)相談会の後、僕は生まれて初めて〆のラーメンというのを食べたのを思い出しました。今の殺伐とした状況から、早くそんな平和な風情に戻れるといいですね。

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TF設置のために安浦先生を訪ねて(2019年10月)

TFに集まったメンバーは、それぞれが大学のDXに強い思いをもった人達です。何度もTV会議で議論しながら半年以上かけて書き上げて、AXIESの年次大会で発表することができました。
提言では、2030年の大学情報環境を未来予想図として記しながら、大学と政策立案者がやるべきことをまとめました。
年次大会では、TFがセッションを企画すると同時に、大学のCIOが集まる部会でのパネル討論も企画して、できるだけ多くの関係者から意見を頂く機会をもちました。

提言の中で私が一番言いたかったことは、人材育成です。「リサーチエンジニア」と呼ぶ新しい職制の確立とそのキャリアパスの整備です。皆さんご存じの通り、RCOSの多くの研究者はエンジニアです。論文を書くことも大切ですが、それよりも学術という社会にインパクトのあるサービスを残すことを第一の目標にしています。
これが組織の人事評価とも矛盾しないところが、NIIの素敵なところです。クールなサービスを作れば評価されます。大学にもサービスの開発や運用に関わる研究者が多くいますが、同じように恵まれた環境が与えられているわけではありません。これでは日本の大学の情報環境の整備が進むわけがありません。海外との差も開く一方でしょう。
リサーチエンジニアが評価される仕組みの構築は、今後の大学の情報戦略の中で実現されるべきです。リサーチエンジニアが、NIIも含めた大学や企業を渡り歩き、そのキャリアパスやキャリアアップが組織として裏打ちされていることも重要です。日本全体で、人材ネットワークを意識した環境の整備を実現していくべきであるという強い思いがあります。

提言は近々公開されることと思いますので、次の課題は具体的な実践です。政策として働きかけなければならないこと、AXIESとしてできること、NIIとしてできること、RCOSとしてできること、それらを洗い出しながら次のステップに繋いでいきます。
人材とサービスは表裏一体ですので、サービスの共通化が人材ネットワークの構築に繋がるという側面もあります。RCOSのミッションとも、より密接になります。

皆でやるべきことを皆でやるためのNIIです。リサーチエンジニアという切り口からも、大学の情報環境の高度化を面白くするための挑戦をしていきたいですね。

(山地 一禎)