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米ライダー大学、ファーストフードチェーンChick-fil-Aを排除

米ニュージャージー州にある私立のライダー大学の学生は、Chick-fil-Aが食べられなくなりそうです。

ライダー大学は、食堂に導入するレストランを決めるアンケートにおいて、「LGBTQに対して反対していることで知られているChick-fil-A」を選択肢から除外しました。同ファーストフードチェーンは、昨年まではアンケートの選択肢に含まれていました。

Chick-fil-Aは、自企業がキリスト教の精神を大事にしていると言っています。その企業精神は、「人類に託されているもの全てに対して誠実なしもべであることにより、神を讃えること」です。ライダー大学は、今回のような決定が一部からは「排除(exclusion)の一種」と受け取られる可能性を認識しているとしています。しかし同大学は、「同大学が大切にする一体性(inclusion)の精神」に忠実でありたかったとしています。

同大学は、多様な意見を取り入れられるように、キャンパス・フォーラムを開催する予定であるとしています。Chick-fil-Aはコメントを控えました。

以下はライダー大学のGregory G. Dell'Omo学長とLeanna Fenneberg副学長(学生担当)が11月23日付で発したレターです。

ライダー大学コミュニティの皆さま:

数週間前、我々はライダー大学に導入する新しいフランチャイズレストランについて意見を募るためのアンケートを学生の皆さまに対してお送りしました。昨年まで選択肢に含まれていたChick-fil-Aは、同企業がLGBTQ+に反対していると広く知られているため、リストから除外しました。

この決定は、対立する考え方をいかにバランスさせるかという困難な判断を伴いました。我々は、新しいキャンパスのレストランとして十分な選択肢を用意することと、一体性を大切にしたいという我々の精神に忠実であることをバランスする上で、思慮深くかつフェアであろうとしました。

今回の決定は、その他の多くの決定と同様、不完全なものとなりました。検討において、我々がどのような価値観を大事にするのか、ライダー大学で生活し学ぶ者に対して我々がどのようなコミュニティを提供したいのかを考えさせられました。最終的に我々は、個人の違いが評価され、一人一人が尊厳と敬意を得られる暖かい環境を作る方に傾きました。

このような決定が、違うかたちの排除の一種に過ぎないと一部に受け取られることを我々は認識しています。しかしこの決定がそのような精神のもとでなされた訳ではないことは、はっきりさせておきたいと思います。我々は、ある組織がその価値観を大事にする権利があることを、我々のコミュニティ等における個人が自身の信念を貫く権利があることと同じぐらいに、認めています。

この問題は色々な意味で我々の判断の域を超えており、全米でなされている複雑な議論にも関わるものです。このような議論はなされる価値があると我々は考えており、多様な見方をもつ人々が集い議論することを奨励したいと思います。我々は高等教育機関として、個人のアイディアや立ち位置をオープンに共有することが大事であると考えています。今回のような複雑な問題については特にそうです。

このため我々は本学の「多様性と一体性のためのセンター(Center for Diversity and Inclusion)」に、キャンパスフォーラムを開催するよう依頼しました。学生や教員、職員、その他の方々の意見が共有され、それにより我々が成長できるようにするためです。詳細については後日また連絡します。

学長 Gregory G. Dell'Omo
副学長(学生担当)Leanna Fenneberg

[Action News] (2018.11.27)
Rider University blocks Chick-fil-A as dining option, cites values

多様性と一体性を尊ぶとは言え、ずいぶんとまあ厳密に考えたものです・・・。
Chick-fil-Aについては、たまたま同企業がそのキリスト教の精神を強く打ち出していたからこのような排除が可能であったものの、他のベンダーがどのような価値観を有しているかなど把握しきれるものではありませんし、たとえば建物を作った建設会社や電気等のライフラインなどに至っては排除すら出来ないものもあるはずです。理念より合理性に傾きがちな日本人には、付いていけないものを感じます。

ちなみにChick-fil-Aは、チキンフィレハンバーグを中心とした商品展開のファーストフードチェーンで、1946年創業。その創業者であるS. Truett Cathyが敬虔な南部バプティスト派信者であるため、日曜日やサンクスギビング、クリスマスにはお店を閉めているほどの徹底ぶりです。本社にもキリスト教の精神が行き届いており、チャイムなども賛美歌が鳴り響くとか。日曜日に閉まっていることで批判を浴びることも多いようですが、アトランタの空港が停電で人々が食べる物もなかったときに、日曜日であるにも関わらず無償で支援物資を支給するなどもしています。困っている人を助けるというキリスト教精神のためになされた慈善事業です。

以前UCバークレーで人と話していたとき、「うちは軍関係者は受け入れていない」と聞き、なるほど、軍関係だから排除しているのかと思ったら、「軍関係者はLGBTを認めないからね」と言葉を継がれ、呆然としたことがあります。それぐらい、人種のるつぼの国、アメリカは、多様性と一体性に対してセンシティブです。トランプ政権になり、この問題にはますますセンシティブになっていると言えます。

なおLGBTQ+は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、そしてQは、QueerまたはQuestioning、そして、+はその他もろもろ挙げきれない多様な性的嗜好の持ち主を指すのだそうです。Queerは、「本来、性的マイノリティーに対する差別語だが、従来の枠組みに当てはまらない多様な性的嗜好を持つ人が、自身を肯定的に捉える表現」なのだそうです。またQuestioningは、「自分の性的嗜好を明確に決めていない人」だそうです。

船守美穂