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グーグル、大学検索の機能拡張

米国の大学をグーグルで検索すると、「入学率、卒業率、授業料」の3指標が、これまでのウィキペディアの情報とともに、表示されるようになりました。

米国における大学授業料高騰や、低い卒業率(4年制大学における6年以内卒業率が6割程度)を受けて、大学探しをする学生に、分かりやすい情報提示が必要であったと、グーグルのプロダクトマネジャーであるJacob Schonberg氏は、ブログで述べています。3指標のデータは、これまで①連邦政府の提供する統計IPEDS(The Integrated Postsecondary Education Data System)や、②大学探しサイトCollege Scorecard、③各大学のサイトに掲載されていましたが、学生が必ずしも政府の提供 するサイトにアクセスしないこと、各大学のサイトでこれら指標のデータを見つけるのは容易ではないことから、学生が最も利用するグーグルにこの機能を搭載することが求められていたとしています。

3指標は、連邦政府が提供するIPEDSやCollege Scorecardのデータが表示されます。
他方、これら政府統計は、初めて大学に入学する学生(first-time students)のデータのみを扱っており、社会人学生等のノン・トラディショナル学生が全学生の7割を占めるというアメリカの高等教育の現状において、現実から乖離した統計である、という批判もあります。

また、グーグルにこうした機能が搭載されることにより、(サイト探索をする)学生のプライバシー侵害への懸念や、大学を検索した画面に(ブラックな)大学の広告が表示され、過度にアピールされることへの懸念も、指摘されています。米国では、社会人を対象とする営利(for-profit)のオンライン大学が、連邦政府奨学金による授業料収入のみを得て、しかし卒業率が極めて低く、ブラックである、といった批判が強くあります。オバマ政権においては複数のオンライン大学が閉鎖されるほどでした。しかしオンライン大学はIT技術に長けているため、これまでもウェブ広告において、自大学に有利なキャンペーンを展開してきたという歴史があります。

[Inside Higher Ed] (2018.6.13)
Google Adds Federal Data to College Searches

[Market Watch] (2018.6.17)
Google is making a foray into college

[Google] (2018.6.12)
Start your college search with Google

この機能、基本的には、google.comを米国で検索しない限り作動しませんが、たとえば、このような感じになります(UCバークレースタンフォード大学MIT)。または、上記リンクに画面イメージがあるので、よろしければアクセスしてみてください。大学の検索結果に、大きく分かりやすく、これら3指標が表示されています。

授業料が関心をそそるのですが、どうもあまり正確ではない気がします。米国の大学は入学許可とともに奨学金も提示するのですが、これが学生ごとに異なるため、実際の授業料負担額が学生によって大きくばらつきます。このためグーグルで表示される授業料も、「奨学金を差し引いた授業料(Avg. cost after aid)」とあります。一方、奨学金の提示状況の情報は完全にはオープンになっていないので、正確な情報提示ができていない模様です。そうでないと、州立大学であるUCバークレーと私立大学であるスタンフォード大学がほぼ同様の授業料と表示されることの説明が付きません。

米国では、大学探しをする学生に対して的確な大学情報を提供する必要性から、連邦政府がCollege Scorecardというサイトを開設しています。日本においても同様に、「大学ポートレート」というサイトが開設されていますが、国公立と私立がそれぞれ別のサイトで運営されていたり、大学を比較する機能が備わっていない一方で、各大学の情報が画一的なフォーマットで表現されていてアピーリングでないなど、あまり使い勝手が良いものではありません。日本の大学検索についてもグーグルの機能が入ったら、どうなのでしょうねえ。

なおグーグルは、米国25のコミュニティ・カレッジに対して「ITサポート」に関するプロフェッショナルな認定証プログラムを導入しました。20の企業(Bank of America、Walmart、Sprint、PNC Bank、Huluを含む)とパートナーしており、これら企業は、このプログラムを修了した学生を自社のITサポートとして採用するそうで す。「ITサポート」のプログラムは、大規模公開オンライン講座(MOOC)のCoursera 上で1月から開講しており、修了するのに8ヶ月要するそうです。現在4万名が登録しています。「グーグルは、米国で必要とされている労働力をトレーニングすることにコミットしている(Google is committed to training the work force of today and tomorrow)」とのことです。

グーグルが徐々に、高等教育に浸食している予感がします。

[Inside Higher Ed] (2018.6.26)
Google Launches IT Certificate at Community Colleges

船守美穂