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セクハラで訴えられた教授の名を冠した研究科から、名前を除去
セクハラをされたという複数の女性からの訴えにより、カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の遺伝学教授Francisco J. Ayala氏が辞職しました。これに伴いUCI大学当局は、Ayala氏の名前を冠していた研究科名を、"Francisco J. Ayala School of Biological Sciences" から "UCI School of Biological Sciences" にすると発表しました。その他、同氏の名前を冠する奨学金や学術プログラム、寄付講座などからも、同氏の名前は外されます。Ayala氏は2011年、ワイン用ブドウ栽培ビジネスで得た利益から1000万ドルを、UCIの生物学研究科に寄付をしていました。
スペインからUCIに来た、元ドミニコ会修道士のAyala氏は、「自分が、ヨーロッパ紳士の良いマナーであると思っていた、女性に暖かく挨拶し、両頬にキスし、美しさを称賛するという行為が、同僚を不快な気持ちにさせていたことは申し訳なく思っている。(不快にさせようという)意図があってやっていたわけではない」と、セクハラの事実を否認していますが、大学当局を相手に裁判を起こす予定はなく、静かに大学を去る予定だそうです。
訴え起こした3名の女性の弁護士によると、これら女性はすでに3年前に訴えを大学当局に出したものの、当時は調査は行われず、大学当局がAyala氏に「これら女性から離れているように」と警告するに留まったとのことです。Ayala氏は、長く優れたキャリアを有しており、UCIにとって明らかに大きな資産だったことが、このような対応の遅れを生んだと言われています。
一方、UCIを含む10分校にまたがるカリフォルニア大学システム(UCシステム)のハラスメントへの対応状況に関する調査レポートが、2018年6月に州監査役から発表されました。同報告によると、UCは2008~2017年の過去10年間に20の示談に対して450万ドル支払っており、これらの額は概ね適切であったものの、大学当局のハラスメントへの対応に要する時間は、一般教員が対象であった場合に比べて、学術評議会(Academic Senate)のメンバーが対象であった場合の方が、時間を要していたことが指摘されました。また、UCバークレー、UCLA、UCデイビスの対応には一貫性がなかったと指摘がされています。
州監査役は、こうしたハラスメント案件について、よりクリアなコミュニケーションとより適切な時間フレームで対応することなどを、UCシステムに求めています。UCシステムのJanet Napolitano学長は、これら提言を全て受け入れること、ハラスメントポリシーの全面的見直しを2014年から行っていることを書面で連絡しています。
[Inside Higher Ed] (2018.7.2)
Professor, Donor, Harasser
[Inside Higher Ed] (2018.6.22)
State Audit Says U California Paid $4.5 Million in Harassment Settlements
どの程度のセクハラ行為が実際にあったのかは不明ですが、大学にとって大きな資産である著名教授の場合の扱いは、難しいですね。勿論、こうした行為が見逃されて良いものではありませんが、大学当局にとっては頭の痛い問題には違いありません。
それにしても、米国の大学には寄付者の名前を冠する建物や寄付講座が多々ありますが、これらの寄付者は皆、清廉潔白なのでしょうかねえ? また、寄付者がなんらかの犯罪行為に関わっていたと判明した場合、その名前はどうするのでしょう? 大学にとっては当然、ありがたい寄付であるわけですし、その寄付行為自体が罪悪な行為であったわけでもなく、また犯罪により得た金銭に基づく寄付行為でもなかった場合に、どうすれば良いのか。さらに刑事犯罪には至らないが、問題ある行動をする人物からの寄付の場合、どうするのでしょう。尚更悩ましいですね。
アカデミアに関係する主体は、アカデミアであれ、外部の者であれ、皆、清廉潔白でなくてはいけないということでしょうか。
船守美穂