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AXIES 2021 報告

2021年12月15日(水)〜17日(金)にかけて、千葉県にある幕張メッセ国際会議場にて、AXIES大学推進協議会2021年度 年次大会(AXIES2021)が、現地とオンラインのハイブリッドにて開催されました。本レポートでは、RCOSの3名が参加・講演したセッションについて報告いたします。

① AXIES研究データマネジメント部会 企画セッション1
『大学での組織的RDMフレームワーク-実践と洗練』(2021/12/15)

AXIES研究データマネジメント部会は2017年度から活動を開始し、AXIES2021は5年目の年次大会となった。初期の頃は、概念でしかなかった大学等学術機関における組織的研究データ管理(RDM)であるが、ようやく、現場における実質的な活動の兆しが見えてきた。企画セッションでは、「データポリシー」「支援組織」「情報サービス」「教育プログラム」をテーマに組織的RDMの推進に向けた取組みが報告された。
「データポリシー」については、NII・船守が、AXIESガイドライン策定後のWS開催等経過や、研究者と機関の協力に基づく「日本型の研究データ機関管理」具体化に向けた構想について報告した。「支援組織」については、九州大学・結城氏が、AXIES-RDM部会とJPCOAR研究データ作業部会の協力体制のもとに進めている「RDM事例形成プロジェクト」と、その下で行われた「国内機関における研究データ管理の取り組み状況調査」の結果について報告をした。「情報サービス」については、理化学研究所・實本氏が、GakuNin RDMを導入し構築した「理化学研究所における研究データ管理システム」について紹介した。「教育プログラム」では、東北大学・元木氏が、「情報基盤スタッフ向けRDM教材の検討」に向けて、必要とされる教材についてアンケート調査をしたことを報告した。
全般に、ポリシーレベルから、実質の支援組織および、システムの構築、人材育成にいたるまでの重層的な報告がなされ、大学等学術機関における組織的RDM形成に向けての歩みが感じられるセッションであった。

資料 → https://rdm.axies.jp/sig/87/

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(船守 美穂)

② 教育支援に関するセッション
『オープンソースでLMSをより使いやすく ~ユーザによるLMSの機能拡張~』(2021/12/15)

AXIES年次大会では、毎回必ず教育支援をテーマにした企画セッションや一般セッションでの講演がいくつかあるが、やはり今年もコロナ禍における取り組みを紹介した内容が多く見られた。
そのなかでも特に面白かったと感じた講演のひとつが、企画セッション「オープンソースでLMSをより使いやすく~ユーザによるLMSの機能拡張~」である。
学生自らが支援者の立場として大学における教育支援に関わっていた協働的事例について、実際に開発した大学生が登壇し、自ら開発システムについて紹介した。
たとえば、履修期間にシステム障害で授業データベースが利用不能となった時に自ら立ち上げた代替ツールが大学公認として自大学の学生に利用された例や、自大学LMSについて課題管理のための拡張機能を開発して公開し大学の認定を受けた例が報告されていた。
主催者からは、継続して利用する為には、ユーザ個人の開発だけで収まらず、それをオープンソースとして提供する機関の協力も重要であるとのコメントがあった。教育支援に学生自身が関わることによって生じる変化は、大学におけるICT推進の形としても新たな可能性を感じさせるものであったと思う。

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(古川 雅子)

③ 出展者セミナー(国立情報学研究所)
『研究データ基盤の新機能ご紹介と学認の将来展望』(2021/12/17)

AXIESではブース展示の出展者がセミナーを行うセッションの枠が設定されており、国立情報学研究(NII)では例年ブース出展して展示をおこなっている。本年度はRCOSと学認推進室の教員が登壇し、展示に関連する学術情報基盤について説明した。RCOSからは、2021年からサービス提供を開始した研究データ基盤NII Research Data Cloudが、今後も次世代学術研究プラットフォームとして新機能を順次開発しながらアップデートされる事が説明された。込山が研究データ管理基盤GakuNin RDMのコア機能の拡張を紹介、GakuNin RDMが対応するストレージの追加を紹介した。藤原はデータ解析機能として、GakuNin RDMとJupyter間のストレージ連携とプロビジョニング機能によりデータの管理と解析が一体になったことを紹介した。古川は学認LMSの概要と最新情報、その上で利用できる研究データ管理のための教材について紹介した。また、学認推進室からは、利用者が多様化する研究データ基盤や教育システムに対応するための学認導入のための基礎知識や次世代学術認証フレームワークの展望についても話題提供があった。NIIの新しい学術情報基盤のサービスに向けられた会場の期待や要望を受け止めて、今後の研究開発に取り組んでいく所存である。

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(込山 悠介)