日本語
  • TOP
  • RCOS日誌
  • OR(Open Repositories)2021 参加報告

OR(Open Repositories)2021 参加報告

2021年6月7日から10日にかけて開催されたOR(Open Repositories)2021に参加しました。
ORはリポジトリに関する国際会議で2006年から毎年6月ごろに開催されてきました。今回の会議はバーチャルイベントとして実施されました。参加者については、オンラインということもあり例年よりも多い90カ国1,299人の参加者がありました。
会議は、schedとzoomの組み合わせで、通常セッションは2セッション並行で開催されていました。

20210615-1.png

OR2021のテーマは「Open for all」。このテーマに沿って、初日のワークショップを含めて4日間にわたり40のセッションが開催されました。RCOSからは2件の発表がありました。

ここでは、印象に残った発表をいくつかご紹介したいと思います。

「Panel: Speaking up and speaking out - who will shape the narrative for OA repositories?」では、OAリポジトリの役割を低下させようとする、声明や記事等の戦略、GOLD OAに誘導する戦略に対しての危機感が表明されました。一方、COVID-19により、研究結果を迅速かつオープンに共有する必要性に対する認識がより一層高まった点や、ユネスコのオープンサイエンスに関する勧告案は、リポジトリの立ち位置を強化し、価値を高める良い機会だとも訴えられました。
リポジトリは危機的な状態であり、オープンアクセスリポジトリコミュニティが一丸となり、課題に取り組んでいく必要性があります。

「Connected in Science: How arXiv facilitates global interactions during the pandemic and beyond」では、COVID-19による研究成果公開の迅速化が、プレプリント投稿の増加により示されていました。
arXivによる報告は、研究成果をオープンに出版するというオープンリポジトリの概念を体現しているなと感じました。オープンリポジトリがarXivに倣う場合、何が障壁となるのでしょうか。今後のリポジトリを考えていく上で重要な要素の一つになる可能性があると強く感じました。

「From Hard Drives to Globus: Supporting new workflows for large data transfer in libraries」はリポジトリによる巨大データの取り扱いについての報告でした。
リポジトリが研究データを取り扱うようになると、データサイズの問題がでてきます。とくに、巨大なデータをリポジトリに登録したり、ダウンロードする場合において、HTTPプロトコルだと効率が悪く、別の手段を考える必要がでてきます。
本発表では、Globusを利用して巨大データを取り扱うためのワークフローを提案していました。巨大なデータを取り扱うには、リポジトリ単体でなく、関連するシステム全体を含めてのワークフロー設計が重要になります。未知な領域ですが、こうした取り組みを参考にしながら、最適解を模索していく必要があります。

また、研究データとなると、単純な公開だけでなく、アクセス制限を課した公開手法も必要になってきます。
「Ready made or tailor made? Seeking seamless depositing solutions for multi (LMIC) country qualitative data」や「Montana State University Dataset Search An open source tool to support data discovery, reuse, and analytics」では制限公開に関しての取り組みが報告されていました。とくに前者の発表は、国を超えてのデータ登録を検討しており、複雑さが増していました。
研究データ対応は一朝一夕でなし得るものではなく、積み上げが重要であると感じました。

次回のOR2022はColorado Alliance of Research Librariesが開催ホストとなります。リポジトリ周辺サービスに興味があるかたは、是非参加を検討してみてください。

OR2021 プログラム
OR2021 アーカイブ

(林 正治)