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FOSSY 2024 参加報告 / COS訪問

2024.10.09

2024年8月1日~4日 FOSSY 2024 参加報告

2024年8月1日から4日にかけて、アメリカ・オレゴン州ポートランド市で開催されたオープンソースソフトウェア(OSS)カンファレンス「FOSSY 2024」(Free and Open Source Software Yearly)に参加しました。筆者(込山)とNII客員教員の梶田教授、そしてCOS(Center for Open Science)のEric Olsonがこのカンファレンスに参加し、研究データ管理のセッションで発表とディスカッションを行いました。
日本からオレゴン州ポートランドへの移動は約8,000キロメートルで、日本とポートランドの時差は16時間です。このため、長時間のフライトと大きな時差による影響で、jet lag を感じながらのFOSSYのセッションとなりました。

このセッションでは、研究データ管理(RDM)プラットフォームに関する日米の経験を共有しました。NIIでは、アメリカのCOSが開発したオープンソースフレームワークであるOSF(Open Science Framework)を活用し、全国規模のRDMプラットフォーム「GakuNin RDM」を運用しています。RDMを取り巻く環境、特にオープンサイエンスや研究倫理は急速に変化しており、デジタル技術の進化スピードも「ドッグイヤー」と呼ばれるように非常に速いものです。これらの状況に対応するため、NIIは国内の高等教育機関全体を対象にしたRDMプラットフォームを提供しており、2024年現在、122を超える機関で利用されています。

我々のセッションでは次の3つのポイントに焦点を当てて各発表者から発表がありました。

1. Open Science Framework(OSF)とは何か
オープンサイエンスのためのオープンソースプラットフォームとしてのOSFについて、その機能や可能性とGakuNin RDMとの関係について紹介しました。

2. GakuNin RDMの現状と取り組み
日本で開発・運用されている全国規模のRDMプラットフォームであるGakuNin RDMの現在の状況について説明しました。特に、OSFをベースとしたカスタマイズや新機能の実装についても言及しました。

3. COSのOSFに対するチャレンジ
OSFの開発と運用において、COSが直面している課題についても議論が行われました。特に、ユーザーからの大幅なカスタマイズの要求に対応しつつ、オープンソースプロジェクトとしての開発スピードと安定性のバランスをどのように取るか、また国際的なユーザーニーズへの適応をどう進めるかといった点が主なチャレンジとして挙げられました。

FOSSY 2024でのこのセッションでは、オープンサイエンスの推進に向けた日本とアメリカの取り組みや、OSSに基づくRDMプラットフォームの構築に関する実践的な経験を共有する場となり、非常に有意義な時間を過ごすことができました。このカンファレンスでのディスカッションは、今後のNIIとCOSの連携強化に貢献するものとなりました。

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2024年8月6日~7日 シャーロッツビル市COS訪問

FOSSY 2024参加後、2024年8月6日から7日にかけてヴァージニア州シャーロッツビル市にあるCOSを訪問しました。ポートランドからシャーロッツビルへの移動はアメリカ西海岸から東海岸への移動であり、アメリカ国内での3時間の時差があります。移動日は1日あったものの、両都市間のおおよその距離は約4,000キロメートルで、飛行機での移動時間は直行便であれば5~6時間程度です。地理的な距離と時差のため、長時間の移動となりました。
ミーティングには、NIIから筆者と梶田教授、COSからはNici、Daniel、Eric、Osmand、Brian、Futa、Yuhuaiが参加しました。今回の訪問の主な目的は、NIIの研究データ管理基盤であるGakuNin RDM(GRDM)の基盤となっているOSFの最新版への追従に関して、COSの技術者と技術的なアプローチを相談することでした。また、NIIとCOSの間で新たなMemorandum of Understanding(MoU)の再締結に向けた初期調整も行いました。

訪問初日の午前中は、前日(8月5日)の議論の振り返りが行われ、その後、筆者からNIIのGRDM戦略について話しました。ユーザーの要望に基づく新機能の追加やアドオンに焦点を当て、特にS3互換ストレージのアドオンの可能性について議論しました。2024年度と2025年度のロードマップを提示し、特に2024年のプロジェクトにおける具体的な戦略を共有しました。
午後には、GRDMのアップグレードプロセスに関して梶田教授からプレゼンがあり、部分的なコミットによるアップグレードや大規模なリベースなどのいくつかのアプローチについて議論しました。
また、ユーザーフィードバックの収集方法やサポート体制についてCOSから報告があり、NIIとCOSのユーザーニーズの違いが強調されました。筆者たちもユーザーストーリーの収集方法について共有し、今後のコラボレーションにおける理想的な形について話し合いました。

2日目には、双方の強みや弱み、機会、脅威を分析する「SWOT分析」を実施しました。特に、NIIが提供できるリソースや、COSが求める国際的な貢献、セキュリティの強化、オープンサイエンスの拡大について議論が深まりました。MoUに関しては、以前の合意内容を振り返りつつ、新たな内容として毎年のMoU締結の可能性も検討しました。
最後に、共同活動の具体案として、メタデータエディターやJupyterHubのOSF統合、ユーザーストーリーの共有、予算やリソース配分の調整について意見交換を行いました。今後のアクションアイテムとして、8月下旬にさらなる詳細な議論を行うためのフォローアップミーティングの設定や、2025年のNIIとCOSのMoUのドラフト作成などが決定しました。

この訪問を通じて、NIIとCOSのさらなる連携強化が期待されます。引き続き、GRDMとOSFの技術的な連携を図り、オープンサイエンスの推進に寄与していきたいと思います。

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FOSSY 2024への参加とCOS訪問を通じて、国際的なオープンサイエンスの取り組みや技術的な課題に関する貴重な知見を得ることができました。今後もOSSの共同開発を通じて、日本の研究データ管理とオープンサイエンスの発展に貢献していきたいと思います。

(込山 悠介)