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学術情報基盤オープンフォーラム2024(Day2)

2024.07.26

2024年6月11日(火)〜13日(木)にかけて、NII学術情報基盤オープンフォーラム2024がハイブリッドにて開催されました。
本レポートでは、2日目に開催したトラックのうち、RCOSメンバーが主体となった4トラックについて報告いたします。

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困った!即時OA

「対話で進化する学術研究プラットフォーム」をメインテーマに始まった学術情報基盤オープンフォーラム2024。公開基盤チームでは、図書館員のみなさんとの対話をどのようにしていけるかを念頭に、2025年から新規公募分となる研究論文及び根拠データの即時公開が義務付けられる「即時OA」に対してどのように立ち向かうのかをセッションテーマとして企画しました。

セッションはフランス国立デジタル科学技術研究所のRomary先生のビデオ講演を皮切りに始まりました。Romary先生は対話を好まれる方なのでビデオ講演は不本意であったと思いますが、快く引き受けてくださり、後日の質問についても真摯にご対応頂きました。神戸大学附属図書館の花﨑さんには神戸大学の試行錯誤の取り組み状況について詳細に共有いただきました。オープンサイエンス基盤研究センターの河合さんには、開発中のOAアシスト機能とその展開について共有いただきました。全体討議では、東京大学農学生命科学図書館の安達さん、筑波大学附属図書館の石津さん、北海道大学附属図書館の前田さん、東京学芸大学の南雲さんに加えて、花崎さん、河合さんにも加わって頂き、参加者も交えての即時OAに対する悩みをぶつけてもらいました。議論では、即時OAのための、研究成果を早い段階で把握できる仕組みの必要性、研究者を含めた登録業務の効率化が議論の中心となりました。まだまだ、オンラインの参加が多く、Slido経由の対話となりましたが、登壇頂いたみなさんのお陰で次につながる議論ができました。オープンフォーラムでの議論を踏まえ、即時OAを支援するプラットフォームの研究開発に取り組んでいきます。

(林 正治)


活用の現場から見たNII RDC高度化の課題

本トラックは、「AI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業(以下、本事業)」を通じてNII RDCを実際に活用いただいているテーマ、および今後活用が期待される分野からの課題提起を期待して企画しました。

トラック前半では、大阪大学の野崎先生、東京大学の藤原先生、理化学研究所の桝屋室長から、それぞれの研究を紹介いただくとともに、その日々の研究活動においてNII RDCを活用する上での、あるいは今後の活用を想定する上での課題について提言してもらいました。

そしてトラック後半では、本事業における「融合・活用開拓チーム」のリーダ機関である東京大学から、古宇田先生にモデレータを担当してもらい、「研究現場の状況推移」「異質なデータをどうやってつなぐか」「次のステップに進むためのボトルネックとその解決策」「研究データ利活用の将来」「オープンサイエンスの可能性」といったテーマで、議論を深めていただきました。

この議論の中での、パネリストの皆さんからの「共同研究先がGRDMを使っていない/使えないことが多く学内連携に留まっている、まずは使ってもらう機会を増やすことが重要」という指摘に対しては、NIIが従来個々に提供してきたサービスの連携をさらに強化するとともに、次のトラックで取り上げた「研究データ管理スタートアップ支援事業」を通じた、日本全国の大学等の役割分担および協力関係の深化により対応を図ってまいります。

当日の資料はこちらよりご覧いただけます。

(中野 恵一)


地域の力で切り開く、研究データ管理のこれから

本トラックでは、「AI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業(以下、本事業)」において2023年度からスタートした「研究データ管理スタートアップ支援事業(以下、スタートアップ支援)」について対話しました。

冒頭で、スタートアップ支援の概要についてNII中野より紹介した後、この取り組みを統括して下さっている名古屋大学の松原先生から、東海地区でのコンソーシアムの形成と展開の経緯を紹介いただきました。それに続いて北陸地区での展開を進めて下さっている金沢大学の長井先生に、自校での非常に先進的な学術データポリシーの制定と改訂の取り組みも含めて共有いただきました。

次に、この北陸地区での展開においても重要な役割を担っているコアファシリティに関する取り組みを切り口に、大阪大学の古谷先生に、学内展開および地域展開のヒントとNII RDCに対する期待と提言をいただきました。そしてさらに、本事業にて「人材育成チーム」のリーダー機関として取り組まれている内容を、大阪大学の甲斐先生に紹介いただきました。

後半のパネルディスカッションでは、「既存のネットワーク、コミュニティとの関係性」「多様なステークホルダーとの連携」「持続可能性とスケーラビリティ」をテーマにご登壇の皆さんと議論を進め、「NIIが開発する部分と、組織や分野でローカルに開発・対応する部分とを役割分担しwin-winの関係で、トータルシステムとして進化させてほしい!」という要望をいただきました。さらに「スタートアップ支援の取り組みを、地域のネットワークあるいはコアファシリティや分野毎のコミュニティとの対話、声をつなぐ場にしていきたい!」というメッセージもいただきました通りに、今後これらの取り組みを進化させていきたいと思います。

当日の資料はこちらよりご覧いただけます。

(中野 恵一)


機関の研究データガバナンスとポリシー

本トラックは、大学ICT推進協議会(AXIES)の研究データマネジメント部会との合同トラックとして開催されました。同部会とは、これまでも、大学における研究データ管理体制の構築や研究データポリシーの策定等に関連して協力関係にあります。

今回のトラックは、特に、NIIで策定した「研究データポリシー(雛形)」の採択事例を中心に紹介し、これをより広めることを目的として行われました。また、NIIで策定したポリシーの雛形の特徴が、「機関の研究データガバナンス」というコンセプトを中心に据え、機関と研究者の責務を明確にした点にあるため、トラックのタイトルは「機関の研究データガバナンスとポリシー」としました。

このような趣旨から、本トラックでは、まず文部科学省 学術情報基盤整備室土井室長から、令和3年4月に国から発表された「公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方」を元に、研究データ管理における機関の役割に着目したご発表をいただきました。

また、これに続き、NIIの雛形を部分的にでも採用し、自大学のポリシーに活かした、滋賀大学、金沢大学、名古屋大学の事例発表を、渡部理事、笠原先生、松原先生からいただきました。なお、滋賀大学はNIIポリシーの基本方針部分を利用しポリシーを策定、金沢大学は機関の責務に着目し、元々策定してあったポリシーを全面改訂、名古屋大学はNIIポリシーの実施方針部分を採用の方向で検討を進めています。

パネル討論では、まず3つのポジショントークがありました。初めに、研究助成機関からの研究データ管理への要求という観点から、JST-RISTEX藤井麻央特任フェローからお話をいただきました。続いて、同RISTEXからの研究助成を得て、他機関共同研究の研究データ管理の責任を負う、PIとしての東北大学伊藤文人講師から、機関による研究データ管理の必要性や、プロジェクトとしての研究データ管理の必要性に関する共同研究者の意識醸成の必要性が指摘されました。最後に、船守から、NIIポリシー(雛形)の概略説明があったのち、研究データポリシーの履行を支援するDMP/DMRツールの構想が紹介されました。

パネル討論は、東北大学元木先生の進行で、NIIポリシー(雛形)を採用するにあたってのプラス・マイナスの側面について議論が行われました。全般に、NIIポリシー(雛形)の中心的コンセプトである「機関の研究データガバナンス」については賛同が得られているものの、これを実施に移すにあたっては、その対応可能性に関してまだ多くの課題があることから、たとえば「研究データ10年保存」など、対応が必須な案件からスモールスタートで段階的に進め、ポリシーと実体が乖離しすぎないように配慮していく必要性が指摘されました。また一方で、機関の責務として、研究者が迷わないように、研究データ管理に関連した判断基準を明確に提示する必要性が指摘されました。

最後に、こうした機関の研究データガバナンスを今後構築していくにあたっても、人的資源がこれまで以上に拡大することは想定されないことから、研究データガバナンスを情報システムに委ねることの必要性が指摘されました。また、こうした情報システムは機関横断的に標準的なものとして整備されることが望ましいとされました。

(船守 美穂)