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学術情報基盤オープンフォーラム2024(Day1)

2024.07.19

2024年6月11日(火)〜13日(木)にかけて、NII学術情報基盤オープンフォーラム2024がハイブリッドにて開催されました。
本レポートでは、初日に開催したトラックのうち、RCOSメンバーが主体となった4トラックについて報告いたします。

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NII Research Data Cloud

2024年6月11日、NII学術情報基盤オープンフォーラム2024の初日、研究データ基盤NII Research Data Cloud (NII RDC)をテーマにするトラック(セッションの意)が開かれました。本トラックは、NII学術情報基盤の事業サービスに関わる教職員が講演者として登壇しました。NII RDCを導入することで、学術機関は全学的な研究データ管理・利活用に必要な基盤を迅速にかつコストを抑えて実現できます。このトラックでは、NIIの学術研究プラットフォームの全体像や文科省の各事業における位置付けの概要紹介に始まり、研究データを管理する基盤システムGakuNin RDM (GRDM) の現状、今後実装予定のGRDMと公開基盤JAIRO Cloudを連携させる目的と機能概要の説明、GRDMと連携した次世代学認の認証システムやクラウドストレージ導入の最新情報の共有と事例紹介がありました。また、最後に研究データエコシステム構築事業でのユースケース創出課題や研究データ管理スタートアップなどの事業内容について概要が説明されました。

初日の朝一番のトラックにも関わらず、会場での現地参加90人以上、オンラインでも500近くの視聴数があり、大勢の参加者が研究データ管理の学内制度設計、システム導入や運用に高い関心を持たれていることを、改めて肌で感じることができました。今年度は特に、学術機関におけるオープンアクセス加速化事業の採択時期も重なったことなども影響があったと考えます。

(込山 悠介)


どうする?研究データ管理

本セッションは、研究データ管理の基礎編という位置付けです。私が思うに、恐らく多くの研究者は「研究データ管理」にある程度関心はあるけれども、全ての方が、必ずしも強い意志を持って「研究データ管理」に取り組まれている方ばかりとは限らず、むしろ研究データ管理に対して、少なからず疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないかと想像しています。このセッションでは、こういった、今更聞けない、と思われているような疑問を抱えている大学や研究機関の方々の疑問をできる限り解決したいと考えて企画したものです。

セッションではまず、研究データ管理の基礎知識として、背景・研究データポリシー、GakuNin RDMの使い方と学習ツール、申請方法について、NII からご説明し、その後、実際に研究データ管理に取り組まれている事例を2件、ご紹介頂きました。

1件目として、信州大学附属図書館 副事務長 岩井雅史先生から「信州大学における研究データ管理支援」 と題したご講演を頂き、2021年に同大学でGakuNin RDMの導入が決まってから現在までに取り組まれた活動やそのための体制強化、ならびにこれまでの利用状況を踏まえて得られたGakuNin RDMの課題や、これから取り組まれようとされている施策について、具体例を交えてわかりやすくご説明いただきました。

2件目として、東邦大学メディアネットセンター長の 片桐由起子先生から、「東邦大学における GakuNin RDMの現状」と題したご講演を頂き、同大学にて教職員・大学院生に対して実施された、研究データ管理に関するアンケート結果をご紹介いただきました。GakuNin RDMを使ってみた率直な感想から、研究データ管理の責任と義務に絡む問題まで、研究者が抱えている生の声として貴重なお話を伺うことができました。

このセッションを通じて、参加いただいた方が感じている研究データ管理に対する疑問が少しでも解消されたのであれば、企画者の一人として嬉しい限りです。

(下山 武司)


これからどうなる?GakuNin RDM

本トラックでは、NII の担当者から研究データのガバナンス、解析、来歴の観点で GakuNin RDM(GRDM)が提供している/計画中の機能とそれらが研究者に与える価値の「いま」を紹介し、トラック参加者と「GRDM が目指すべき『これから』」を議論しました。トラックオープニングでは、ファシリテーターである北見工業大学情報処理センターの升井洋志教授から、トラック概要のご説明および下記メッセージをいただきました。

「GakuNin RDM を研究に必須なツールにするために、来たるべき OA 加速化のバックボーンとなるために、ひいては日本の研究力向上のために GakuNin RDM の現状(いま)を把握し、未来を見据える議論になればいいと考えています。」

続いて NII の担当者から NII RDC、特に GRDM と強く連携する機能の現状と今後について報告しました。藤原一毅准教授がコード付帯機能、秘匿解析機能およびセキュア蓄積機能、平木俊幸特任研究員がデータガバナンス機能、そして下山武司特任准教授がデータプロビナンス機能について報告しました。

続くパネルディスカッションの冒頭にて、所外登壇者お二名から、GRDM に期待することに関してポジショントークをいただきました。東京工業大学学術国際情報センターの杉野暢彦教授からは、東京工業大学と東京医科歯科大学が統合するという背景と関連付けつつ「機関から転出・退職した GRDM 利用者プロジェクト・データの管理」という課題があることに言及されました。また、GRDM 普及に関して「研究データ管理」の啓もう、GRDM 利用に関して「研究データの有効な利活用のためにはメタデータの管理が必要」ということにも言及されました。理化学研究所情報統合本部 データ管理システム開発ユニットのユニットリーダーである實本英之先生からは、理化学研究所で運用されている研究情報管理システム「R2DMS」とその利用事例を説明いただいた後、「メタデータは研究が進むにつれて成長するものである」と主張された上でメタデータの追跡・管理の草案として「Research Perspective Metadata Manager」が紹介されました。

パネルディスカッションの後半では、これまでの機能紹介、ポジショントークに触れつつ、slido に寄せられたご意見・ご質問に基づいてパネラー間でディスカッションが行われました。このパネルディスカッションで得られた GRDM の「いま」の課題と目指すべき「これから」を、本トラックオーガナイザーである平木なりにまとめると次のようになります。

  • ● GRDM の「いま」の課題
    •   ○ 基本的に学認で認証される国内学術機関にのみ開いている。
    •   ○ 学術機関からの転出・退職時のデータ管理の方針ややりかたが不明瞭。
    •   ○ 各学術機関が提供するサービスとの連携可能性が不明瞭。
    •   ○ ラボまで浸透しづらい、というか浸透しない。
    •   ○ データ利活用上重要な「メタデータ管理」
  • ● 課題から見えてきた GRDM が目指すべき「これから」
    •   ○ 海外学術機関が参画しやすい。そうなるような認証が備わっている。
    •   ○ 国内外の民間企業・団体が参画しやすい。そうなるような認証が備わっている。
    •   ○ 「ここまでできる」と「ここからはお任せ」が明確である。

今回頂戴したご意見・ご要望をきちんと受け止め、より広く研究者をサポートできるよう開発・運用を行っていきます。

(平木 俊幸)


学習履歴データによる学習支援を考える~学認LMSラーニングアナリティクス機能ハンズオンセミナー~

学認LMSは、高等教育機関における共通の教育コンテンツと受講履歴を提供する学習管理システムとして、2021年6月に正式運用を開始し、2024年6月の利用機関数は103機関となりました。これまで学認LMSでは、国内の各機関において教育が求められている情報セキュリティ講座「倫倫姫の情報セキュリティ教室」(4言語:日英韓中)と研究データ管理講座(支援者向け、研究者向け等)の学習コースを提供するとともに、利用機関において効果的に教育が行えるための各種機能を開発・提供することにも取り組んできました。本トラックでは、開発した機能のひとつである、受講履歴データの分析・可視化を行うラーニングアナリティクス基盤に焦点を当て、参加者の皆様に実際に演習環境の操作を体験していただくハンズオンセミナーを開催しました。

演習では、ラーニングアナリティクス基盤を構成するJupyterHubやApache Supersetのサンプルソースの実行や、学習履歴データによる学習支援について参加者の皆様とのディスカッションを行いました。

いただいたご意見やご要望を活かせるように、今後も引き続きより良い教育支援環境の提供に努めていきたいと思います。

なお、ラーニングアナリティクス基盤にご興味のある方は、Docker環境で動作するものをGitHubリポジトリで提供していますので、お試しいただければと思います。

(古川 雅子)