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情報知識学会参加報告

2024.06.17

情報知識学会第32回年次大会が5月25、26日に慶應義塾大学三田キャンパスにて開催されました。RCOSからは長瀬、天野、朝岡が参加し、長瀬と天野が発表しました。

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慶應大学の図書館旧館(学会会場とは別の建物)

■ 情報知識学会とは

日本学術会議の委員会を母体として、「情報学」、「情報知識学」の振興のため1988年に設立されました。「基礎理論」、「処理」、「表現」、「流通」、「応用」といったテーマに関する研究、発表、意見交換などを支援しています。

昨今、「~インフォマティクス」という言葉が聞かれるようになりましたが、各分野でのインフォマティクスへの認識が浸透していない頃は周辺の学術領域から情報知識学会への発表が盛んでした。近年では人文系からの発表が多く見られます。

情報知識学会に属する部会のひとつにオープンサイエンス・オープンデータ研究部会があり、この中でRCOSのメンバも活動しています。

■ 年次大会の様子

今大会は現地開催のみで、昨年まで行われていたオンライン参加は用意されませんでした。二日間ともシングルセッションの構成で参加者も40名程度と小規模でしたが、各発表では活発な質疑が交わされていました。 二日目の学生発表の部では優秀発表の表彰があり、RCOSの朝岡が審査員を務めました。

以下では、発表者である天野と長瀬から発表内容の紹介、感想など述べたいと思います。

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会場案内のポスター

■ 天野:「CiNiiのログから見るユーザーアクセスグラフの計量分析」

統合ログ基盤に収集されたログ分析に関する報告であり、そのログの大部分がCiNii由来であるためこのタイトルとしました。

ユーザーアクセスグラフとは 、個別ユーザーごとにログにあるリファラーとリクエストを繋げたグラフのことであり、多量のログから意味のあるものだけを個別の集合として取り出したものです。 ログ1行にはユーザーの特定の端的な行動「誰が」「何に対して」「何をしたか」をタグとして付与し、これらを集計してユーザーごとのアクセスの性質を探ります。

見えてきたことは、ユーザーの多くは外部の検索エンジンから直接NII RDCのリソースにアクセスしていること、それ以外のユーザーの大部分は「論文」または「本」に興味を持ち、検索結果のページを丹念に確認していることなどでした。

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天野の発表の様子

■ 長瀬:「学術情報検索サービスCiNiiの機械翻訳活用による海外利用者拡大の試み」

NIIが開発・運用を行っている学術情報検索サービスCiNiiは、利用者の大半が日本国内からアクセスしています。今回、機械翻訳を利用して日本語メタデータを英語化することにより、英語キーワードでの論文ヒット数が従来比で50%増加したこと、これにより海外からのCiNiiの利用促進が期待できることを報告しました。

発表は質疑合わせて30分間という短い時間でしたが、質疑応答の時間と、セッション終了後に数名の方と直接会話する機会を持てたことはとても有意義でした。「期待しています」という言葉を複数の人から聞けて大いに励みとなったこと、昔CiNiiの開発に携わっていたという初対面の人から開発初期の苦労話を聞けたことなど、楽しい時間を過ごせました。人脈を広げられることが学会参加の大きな価値であり、(オンラインでは得られない)リアルな学会参加の意義を再認識できた二日間でした。

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長瀬の発表の様子

(長瀬 友樹、天野 晃)