まちかねリトリート2024-05 参加報告
はじめに
「AI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業(以下、本事業と言います)」のプログラムマネージャを担当している中野です。本事業を推進する中核機関群の内、理化学研究所(理研)がリーダーとなって取り組んでいる「プラットフォーム連携チーム」では、定例の会議等では議論しきれない深い内容を討議することを狙い、リトリートと称して、日常を離れた合宿形式の会合を実施してきました。今回はその第3回目として、2024年5月20日から21日にかけて、大阪大学(阪大)豊中キャンパスにて「まちかねリトリート2024-05」が開催されました。
今回の会議名称は、開催場所である豊中キャンパスがある待兼山町で発掘されたマチカネワニにちなみ、ローカルコーディネータを担当いただいた古谷先生が命名されました。このマチカネワニは、阪大のゆるキャラマスコット(わに博士)および豊中市のマスコット(マチカネくん)にもなっています。
大阪大学豊中キャンパスのマチカネワニ
わに博士
マチカネくん
参加の目的
「プラットフォーム連携チーム」がリトリートを企画した趣旨としては、主に以下のようなことを挙げています。
- ● 真に研究者の利益となり、真に科学・技術の進歩を加速する、情報基盤・データエコシステム・枠組みといった我々の進むべき道筋や方向性を、情報科学者・実験研究者・研究経営者らと共に議論し検討する。
- ● 議論の範囲は、プラットフォーム連携に限らず、人材育成、ルール・ガイドライン、研究事例、プラットフォーム構築を含めた情報基盤全般を含み、特定の領域やトピックを限定しない。
本事業の中核に位置付けられる研究データ基盤(NII RDC)を構築・提供するNIIからは、その機能高度化を推進する立場から、利活用の現場のニーズに寄り添ったシステムの実現に寄与すべく、議論に参加しました。そのため各機能の開発担当者を中心に、RCOSの谷藤幹子副センター長、下山武司特任准教授、南山泰之特任助教、平木俊幸特任研究員、平野景三特任技術専門員、中野が現地参加しました。さらに、相沢啓文特任技術専門員と、クラウド基盤研究開発センターの藤原一毅准教授にもオンラインにて参加してもらいました。
これまでに開催したリトリートとの関係
2023年10月に初めて企画・開催された宝塚リトリートでは、研究データ管理基盤であるGakuNin RDM(GRDM)のサービス構築・提供サイドと、ユーザーサイドとの認識すり合わせを実施しました。特に自然科学分野の研究者にとって、GRDMを日常的な研究ツールとするための課題を共有しました。
次に2024年2月には理研の筑波キャンパスにて、つくばリトリートが開催され、実験研究の現場の実情を踏まえて検討を進めました。阪大からはリモートにて、有機合成研究における研究フローと研究データ管理や電子実験ノートの活用についての話題提供がされ、さらにバイオリソース研究センターの研究現場にて実地にお話を聞かせていただくことで、実験研究と研究データ管理基盤との対応について議論を深めることができました。
今回は、これまでの議論を踏まえつつ、阪大コアファシリティ機構の分析・測定の現場にて、NMR(核磁気共鳴装置)等によるデータ取得とその管理につながる実務を目の当たりにし、その担当者からも直接にお話を伺うことによって、真に有用なシステム・サービスの構築に向けた議論に繋げることを期待して臨みました。
リトリート報告
リトリートでは、まず前述の通り、以下の分析・測定の現場を2箇所、見学させていただきました。
- ・ 基礎工学研究科 附属太陽エネルギー化学研究センター共同分析・測定室
- ・ 理学研究科 分析機器測定室
それぞれご担当の技術専門職員の方より、計測データの取得からデータの授受の仕組みについて、学内外の利用者に応じた対応方法も含めて、研究フローとそこで取得されるデータの管理にまつわる実務の実際をデモを交えて説明いただきました。
その後は、初日の午後一杯と、2日目の午前にかけて、見学での気づきも活かしながら、コアファシリティとそこで産出されるデータの管理や解析に注目し、研究者の視点での必要機能や支援のあるべき姿を中心課題として議論しました。
本事業は、より多くの研究者にとって、その研究が加速するような研究データ管理の仕組みとそれをサポートするツールやサービスを提供することを目指していますが、研究分野の違いにより求められるものは大きく異なります。例えば、今回のリトリートでも議論の対象となった「解析」機能についても、NII RDCの高度化で取り組んでいる解析機能と、実験研究者が今求めているそれとでは指し示すモノが異なっていました。そのため、共通認識を持ちながら議論を進めるべく、抽象と具体を行ったり来たりすることで、全員参加での建設的な議論を目指しました。それに加えて、夜には懇親の場でのざっくばらんなやり取りも入れて、発言の裏にあるそれぞれの想いも共有できていたように思います。その結果、多岐に渡る課題を扱いつつも、何を優先すべきか共通認識が深まり、直近それぞれに取り組む課題が明確化されました。次回のリトリート(秋開催予定)では、その成果が共有され、研究データ管理の仕組みやそれを支えるツール・システムの進化が見られるものと期待しています。
(中野 恵一)
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