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NII学術情報基盤オープンフォーラム2023報告

2023年5月29日(月)〜31日(水)にかけて、NII学術情報基盤オープンフォーラム2023がハイブリッドにて開催されました。

本レポートでは、RCOSメンバーが主体となった6つのトラックについて報告いたします。

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GakuNin RDMトラック
~管理基盤、解析機能の現状と今後について~

本トラックでは、研究データ管理基盤であるGakuNin RDM (GRDM)の機能や利用事例等を紹介し、研究データ管理上の課題や展望について議論しました。
トラック前半において、最初にRCOSの下山より、GRDMの概要、GRDMの現在の機能とそれらのアップデート情報、GRDMの新7機能の2つである「コード付帯機能」および「秘匿解析機能」について紹介いたしました。続いてRCOSの平木より、GRDMの新7機能の1つである「データガバナンス機能」の概要と開発中の機能について紹介し、データガバナンス機能評価試験版サービスの利用を案内いたしました。
トラック後半において、NIIコンテンツ科学研究系/RCOSの込山より、本トラック前半を振り返りつつGRDMのユースケース、課題および将来展望を紹介いたしました。続いてNII学術コンテンツ課の佐藤より、GRDMサービスの利用申請フローおよびサポートポータルについて説明いたしました。
トラック最後に設けられた質疑応答の時間およびその後の懇談会においては、多数の質問が寄せられただけでなく、参加者の皆様が抱える研究データ管理上の課題、GRDMへの要望もご共有いただき、講師と活発な議論が行われました。参加機関における研究データ管理への関心の高まりが感じられるトラックでした。お寄せいただいたこれらの質問・要望等を鑑みつつ、学術機関と研究者の双方による研究データ管理をさらに支援すべくGRDMの機能向上を進めてまいります。

当日の資料はこちらよりご覧いただけます。

(平木 俊幸)

学認LMSトラック
~教育コンテンツ共有プラットフォーム「学認LMS」~

教育コンテンツ共有プラットフォーム「学認LMS」は2021年6月に正式運用を開始し3年目を迎えました。「学認LMS」では現在2種類のコース(情報セキュリティ講座と研究データ管理講座)が受講できます。本トラックでは、各講座からのアップデート情報や、学認LMSで利用機関の管理者が使えるオプション機能についてご紹介するとともに、今後の学認LMSについて議論を行いました。
情報セキュリティ講座からの講演では、新規シナリオ「誹謗中傷に注意を」が追加されたことや、総合テストの問題追加、デジタルバッジの再開についての報告と、ユーザ事例として群馬大学における「倫倫姫の情報セキュリティ教室」の活用事例についての紹介がありました。
研究データ管理講座からの講演では、AXIES-JPCOAR連絡部会で作成した情報基盤スタッフ向けRDM教材の紹介や、JPCOAR教材プロジェクトの取り組み紹介、RDM人材育成作業部会の取り組み紹介がありました。
今後の学認LMSについての議論では、学認LMSの追加機能や改善に関する要望や、NIIに期待される教育支援について登壇者や参加者との意見交換が行われました。 当日の資料はこちらからご覧いただけます。

(古川 雅子)

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RDMトラック
~大学の研究データガバナンスを支えるポリシー・規程類とツール&大学における研究データ管理お悩み相談~

RDMトラックでは、1) 講演+パネルと2) お悩み相談会の2つに分けてセッションを行いました。第6期科学技術・イノベーション基本計画において2025年度までの研究データポリシーの策定が謳われていることもあり、大学関係者からの関心がとても高く、681名が参加登録し、500名近くが実際に参加していた模様です。
講演では、NII船守から、NIIにて策定された研究データポリシーと全国版作成に向けての考え方が示された後、弁護士の板倉先生(NII客員教授)からは関連して整備すべき内規・ガイドライン等についてご示唆いただきました。東北大学および名古屋大学からは、ポリシー策定後に進める研究データ管理の実際や直面している課題について、大学組織の観点からお話をいただきました。NII水野先生からは、研究者から見た研究データ管理の実際についてご紹介いただきました。締めくくりとして、大学の研究データガバナンス構築につながるツールの開発・検討状況がNII込山氏から紹介され、全体でパネル討論をしました。
引き続き行われたお悩み相談会では、「初歩的なところで躓いている大学や担当の方も多いと思うので、パネルディスカッション等で聞けないようなお悩みもお気軽にお寄せ下さい。」と呼びかけ、事前に質問を受け付けていたこともあり、非常に活発な議論がなされました。「講演+パネル」では6件、「お悩み相談会」では31件の質問が寄せられました。最終的に取りまとめた回答は、RDMトラックのウェブサイトに公開しています。
なお、現在、大学における研究データ管理に関わるメーリングリスト(ML)と共に、全国版研究データポリシーや関連の内規、DMP/DMRツール、キュレーション、情報基盤(ストレージ、コアファシリティ)等のワーキンググループ(WG)を組織しようとしています。
ご関心ある方はぜひ、関心表明下さい。
関心表明URL: https://forms.gle/6LmsrrxgpYqFJ16WA

(船守 美穂)

CiNii Researchトラック
~研究成果情報モニタリングのあるべき姿~

学術検索基盤CiNii Researchのトラックでは、公開される学術情報の量や質を俯瞰して評価するモニタリングの在り方について、現状把握と議論を実施しました。
最初にRCOSからCiNii Researchで実施されている研究データ公開について報告し、NIIコンテンツ科学研究系の金沢輝一准教授より、研究者情報や成果物情報が統合され、モニタリングのためのデータ品質の向上が図られていることが報告されました。そして、NII情報社会相関研究系の孫媛准教授より、1970年代以降の研究評価の変遷と今後の課題について情報提供が行われました。さらに理化学研究所バイオリソース研究センター(BRC)統合情報開発室の櫛⽥達⽮研究員より、生命理工学分野の構造化された研究データ公開方式と理化学研究所の成果評価について、解説が実施されました。
最後に、各登壇者の発表を踏まえ、研究成果情報モニタリングの理想像について議論が行われました。包括的な評価を実施するために国内での情報集約の重要性を再認識する一方、分野ごとの歴史的背景や研究方式の違いが統一的な基準でのモニタを困難にしていることが示されました。聴講者からは、適正な評価のための登録リポジトリの基準や、引用関係以外の評価基準についてがありました。検索基盤では本トラックでの議論を元に国内機関との連携を強め、研究成果情報モニタリングのための機能開発を進めて参ります。

(大波 純一)

認証・RCOS合同トラック
~Verifiable Credentials を学んで議論に参加してみよう~

本トラックでは、NIIの認証推進室とRCOSが共同で巷で話題(?)のVerifiable Credentialsをテーマに国内外の動向を紹介し、期待される応用例について議論を行いました。
まず始めに、慶應義塾大学の鈴木先生よりVCの技術概要と、VCを利活用する形で内閣府が推進するTrastedWeb推進協議会の活動についてご説明をいただきました。次に相沢より、VCの活用によって目指される自己主権型アイデンティティ(SSI)の考え方と、欧州でSSIを応用する形で構築が進められているデータ流通基盤Gaia-Xについて情報提供を行いました。続いて、大阪教育大学の堀先生より、教育分野でVCとの技術的な融合が検討されているオープンバッジについて、その課題と展望を紹介いただきました。最後に、Open ID ファウンデーションジャパンの富士榮さんより、実際にNIIが開発を進めているオープンバッジの実証実験についてご報告をいただきました。
その後の質疑応答においても活発な議論が行われ、現地とオンラインでの質問を合わせて予定時間をオーバーしてしまうなど、予想外に多くの反響をいただきました。特にオープンバッジの開発に関して、各大学での構築や導入の難しさから、NIIによる開発や機能公開に関する期待の声が寄せられました。
今回は気楽に参加できる勉強会という位置付けでしたが、このような期待の声を今後のRCOSの研究開発の取り組みに繋げていけたらと思います。

(相沢 啓文)

RCOS(公開基盤チーム)トラック
~公開基盤のこれからを考える~

本トラックでは、公開基盤のこれからを考えるというテーマで、研究論文と研究データのオープンアクセス(OA)対応について、私達の取組みを紹介しました。
最初に林が、論文・研究データのOA化の動向と、機関リポジトリによるそれらのOA化の課題について整理しました。次に河合が、機関リポジトリによる論文のOA化を省力化するシステムについて紹介しました。最後に朝岡が、名古屋大学や北海道大学における機関リポジトリによる研究データのOA化の事例を整理したうえで、その安全なOA化を可能にするアクセス制限機能の開発について紹介しました。
発表後のディスカッションでは、聴講者の皆様から河合が開発中の省力化システムについての多くの質問が寄せられ、活発な議論が行われました。具体的には、出版社のポリシーを随時確認するためには、どのような仕組みが必要になるか、登録済みの研究データに対して機関リポジトリはどのようにアプローチすればよいのかといった質問があり、機関リポジトリによる論文・研究データのOA化への関心の高まりが感じられるトラックとなりました。皆様からいただいた意見や要望をもとに、その推進を可能にするシステムを共に開発していきたいと考えております。

当日の資料はこちらよりご覧いただけます。

(朝岡 誠)


今年は久々にリアル会場に足を運んでいただけるオープンフォーラムとなり、トラック終了後、活発に意見交換をされる場面が見られました。
ただ、初めてのハイブリッド開催ということで、現地でのオペレーションに不手際がありましたことをお詫びいたします。今回の反省をふまえ、次回はさらによいオープンフォーラムとなるよう、企画・運営したいと思います。

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(宮坂 啓子)