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RCOSメンバーよりごあいさつ:野坂京子

2022.10.28

この度、私は任期満了のため、10月末でRCOSを卒業することになりました。今までRCOSやNIIで出会ったたくさんの人々や、楽しかったり大変だったりしたいろいろな出来事が思い出されます。長かったような、あっという間だったような5年間ですが、有意義な時間を過ごすことができたことに感謝しています。

私は、長い間、京都大学湯川記念館にあった理論物理学刊行会という団体で勤務をしていました。1946年に湯川博士によって創刊された「Progress of Theoretical Physics (PTP)」という英文論文誌と「素粒子論研究」、「物性研究」という和文学術誌の編集事務の仕事でした。PTPは、朝永博士や小林・益川先生のノーベル賞論文が掲載された由緒ある論文誌でした。益川先生は刊行会の理事長や編集長をされていたので、京大でのノーベル賞受賞の記者会見の時に、私は益川先生に花束贈呈をして、人生で最大のカメラのフラッシュを浴びたことがあります。その様子がニュースで放映され、写真はネットニュースに載りました。

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益川先生からストックホルムのお土産にいただいたノーベルチョコレートにサインをしてもらいました。
2枚もらったので、裏表の写真です。

その刊行会が、学術出版業界の外的な要因と刊行会の内部の事情から、2012年に解散することになり、PTPの発行は日本物理学会に移譲されました。その際に、誌名は「Progress of Theoretical and Experimental Physics (PTEP)」に変更され、実験の論文も掲載する、オンライン版だけのオープンアクセス誌に生まれ変わりました。また、高エネルギー分野のオープンアクセス誌のAPCを負担する国際的なプロジェクトSCOAP3に参加するために、オックスフォード大学出版局のプラットフォームから出版することになりました。そのような事情で、引き継ぎと立ち上げのために、私は2013年に京都から東京にやってきました。学会での任期が終了し、次の仕事を探していたところ、運よく、RCOSに採用していただくことになりました。

京都の頃から、NIIには、電子図書館、GeNii(CiNiiの前身)、SPARC JAPAN等の会議や説明会のために、よく訪問していました。電子図書館に搭載するため、PTPや和文誌に掲載された大量の論文をスキャンPDFにしていただいたり、閲覧料を分配していただいたりと、お世話になりました。その頃の自分に、将来、NIIで働くことになることを教えたら、さぞ驚いたと思います。このように、それまでは、NIIのサービスを受ける側でしたが、いつの間にか、NIIの中の人となり、様々なサービスがどれくらいの人数でどのような尽力をされて運用されていたのかわかることとなりました。

物理学会で何年目かに、内閣府から学会に対して、オープンサイエンスについてのアンケートが届いたことをよく覚えています。オープンアクセスはすでに身近な話でしたが、その時に初めてオープンサイエンスという言葉を知りました。数年後にそのオープンサイエンスに関係する仕事に就くとは、またもや当時の私は思いもよらなかったと思います。

私の職歴は、紙の購読誌から、オンライン版だけのオープンアクセス誌、そして、オープンサイエンスへと変遷してきました。RCOSに来てから、日本のオープンサイエンス進展のために、研究者が研究データを管理・公開・検索する基盤、またそれに伴う様々な基盤を作り上げていく様子を間近で見ることができました。ひとつのシステムを作り上げるために、本当にたくさんの時間と労力がかかることを知りました。これから、本格的に、NII RDC が日本の研究の基盤になっていくことと思います。これからの発展を、少し離れたところから見守っていきたいと思っています。

最後に、今までお世話になった皆様に、この場を借りてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました! 皆様のご健康と益々のご活躍を心よりお祈りしています。

(野坂 京子)