みんながオープンサイエンスしたくなる仕掛け
今日は、システム開発だけでない、RCOSの幅広い活動の一端をご紹介したいと思います。
オープンサイエンスは学術のための学術、すなわちメタ学術であり、論文や特許といった伝統的な学術の枠組みの中では評価されにくい活動です。
そのため、研究者は自らの研究をオープン化するインセンティブに欠け、技術者は自らの能力をアカデミアに注ぎ込むインセンティブに欠け、結果としてオープンサイエンスを実践するためのノウハウ自体がオープンにならず、個々の研究分野内に留まりがちな現状があります。
研究分野を超えてノウハウを集約し、人材の確保・育成を図るには、オープンサイエンスに携わる研究者や技術者のエフォートを学術的な業績として適切に評価し、インセンティブを与えることが不可欠なのです。
RCOSでは、研究のオープン化を支えるシステム開発に加えて、研究者にオープン化のインセンティブを与える仕掛けづくりにも着手しています。
2019年4月、筆者らが中心となって、情報処理学会に「オープンサイエンスと研究データ管理」研究グループ(略称: SIGRDM)を設立しました。
この研究グループは、オープンサイエンスに関わる国内の取り組みを広く集約する情報交換の場を設けるとともに、その人材の評価・育成に資することを目的としています。
情報処理学会の一部ではありますが、情報システムの設計・開発・運用にとどまらず、データの整備、研究支援活動、組織運営のノウハウなど幅広いテーマの研究報告を受け入れます。
研究者や技術者だけでなく、データ生産者、大学図書館員、リサーチアドミニストレーター (URA) など、さまざま立場の方がファーストオーサーとして成果を発表し、業績を評価されるためのプラットフォームとなることを願っています。
研究集会の情報など、詳しくは研究グループのホームページをご参照ください。
2021年4月、情報処理学会の論文誌トランザクション デジタルプラクティスにおいて「オープンサイエンスを支える研究データ基盤」特集が発行される予定です。
この特集は、多様な研究分野において学際的なデータ流通を促進するため、既存のデータ流通基盤を整備・運営するなかで培われた技術的・組織的なノウハウを共有し、基盤整備に携わる人材を広めていくことを意図して企画しました。
オープンサイエンスという言葉が一般化する以前から、材料科学や生命科学、地球環境科学などのビッグサイエンス分野において大規模な研究データ基盤を構築・運用してこられた功労者の方々が、その知見を詰め込んだプラクティス論文を投稿してくださいました。 現在、鋭意査読中です。
詳しくはデジタルプラクティスのホームページをご参照ください。
オープンサイエンス的な方法論が幅広い分野の研究者たちにとってニューノーマルとなるためには、研究成果をオープンにすることが研究者自身にとって有利となるようなインセンティブを創出し、オープンサイエンス自身をひとつの学術分野として独立させることが正道であると私たちは考えています。
RCOSは、インセンティブの設計と実装を通じて、オープンサイエンスをサイエンスするプラットフォームづくりにも貢献していきます。
(藤原 一毅)
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