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Ann Coulter not give speech at Berkeley

2017.04.27

UCバークレーで4/27に予定されていた極右翼Ms. Ann Coulterの講演が、その安全を確保できないことを理由に大学当局により一度キャンセルされたのち、大学に対して批判が集中したため、安全な会場が確保できる日取り(5/2)が提案され、しかしこれを不服としたCoulter氏が、当初の日取りでSproul Plaza(Sather Gateを入ったすぐの広場)で演説を行うと主張している、と先日レポートしました。その後、UCバークレーは4/25に、Coulter氏を招聘した学生グループYoung America's FoundationとBerkeley College Republicansにより、言論の自由を侵したことで告訴されました。
[Inside Higher Ed] Berkeley Sued Over Ann Coulter Event(2017.4.25)

一方で、本日付(4/27)の各紙のトップニュースは、Young America's Foundationが、自身の職員および学生を危険にさらすわけにはいかないことを理由にCoulter氏の招聘を見送ると発表し、後ろ盾を失ったCoulter氏もこれに続いて、バークレーでの講演を見送ると発表したことです。

Young America's Foundationは、「6週間も前から適切な会場の確保を要望していたのに、大学がこれに対応をしなかった。右翼系の団体は不当に扱われている」と主張し、一方で大学側は、「キャンパス内の会場は数ヶ月前から予約されており、同グループの準備が遅かった。また安全な会場(窓が少なく、非常口が多数あり、収容力のある部屋)は限られているため、誠意を尽くしてもこれが限界であった」と主張しています。
Coulter氏は、言論の自由運動の発祥の地であるバークレーが、言論を封じる象徴となるのは不幸なことであると述べています。

Dirks学長からの文書にある「ここは大学で、戦場ではない(This is a university, not a battlefield)」という文言は、各紙で言及されました。
言論の自由の象徴であるバークレーは、アクティビストに好んで、暴動を起こす場として選ばれるようになっており、4/15の暴動においても20名が警察により逮捕されています。今回のCoulter氏の講演においても大学当局は100名以上の警察官を動員予定でしたが、警察側もコストがかかるため、毎回出動するわけにはいかない状況です。
Dirks学長は、「[言論の自由]と安全」を両方とも最大限に確保する努力をしなければいけないと伝えています。
"We must make every effort to hold events at a time and location that maximizes the chances that First Amendment rights can be successfully exercised and that community members can be protected."

[New York Times] (2017.4.26)
Ann Coulter Says She Will Pull Out of Speech at Berkeley

[Inside Higher Ed] Coulter Changes Course (2017.4.27)

[Chronicle of HE] (2017.4.27)
At Berkeley, a Speaker's Cancellation Spurs New Battles Over Free Speech

こうした学生運動については「言論の自由 vs 安全確保」というような対立構造となっていると、各紙報じていますが、一方の大学教員の方の「科学のための行進(March for Science)」運動は、大盛況で、また混乱もなく無事終了したようです。

サンフランシスコ湾岸域のベイエリアでは、数万人規模のマーチが各都市で行われ、大学教員だけでなく、ポスドクや学生、科学をサポートする一般市民、子供、民間企業なども、マーチに参加したようです。
以下リンクの写真などをみると、暖かい日のもと、皆さん楽しそうで、半分お祭りのようです。
動画では、"This is not just a march! It's a party! Yes, we are a party!" などといっているのも聴かれます。でもその後に話しているシニアな方は、まじめな話をしていました(念のため)。

[Mercury News] (2017.4.22)
Thousands in Bay Area take part in March for Science against Trump administration

またこの科学のためのマーチはワシントンDCを初めとして、世界各都市でも行われました。
高等教育予算が大幅にカットされたメキシコや、トランプ政権のもと二桁規模の予算削減が環境庁およびNIHで見込まれるアメリカ、イギリスなどでは、これを危惧して行進する研究者や、さらにはこのままでは難病治癒等の科学の恩恵が預かることが出来なくなることを危惧する一般市民、また保守系の地域にあったも、こうした政府系予算に依存する民間企業職員などが行進をしたようです。
またトランプ大統領の移民政策により、ポスドクが渡米できなくなったという研究者や、地球温暖化を憂慮する人々、客観的事実や論拠が通らないことを憂慮する研究者なども、立ち上がったようです。予算削減がそれほど顕著ではないドイツやフランスなどでも、科学の重要性を伝える主張するため、行進は行われました。
ハーバードやMITなどでも皆さん、キャンパス周辺を朝一で行進されたようです。

一方、各紙では、「科学者は声を張り上げてデモ行進をすることには馴れていないようで、秩序あるマーチであった」と述べられています。
またある研究者はインタビューに対して、「自分は科学と医学に情熱をもっており(こうしたデモ行進が好きな訳ではないが)、(自分のポスドクが渡米できなくなるなど)正義が守られなくなったときは、それに反対の意を示し、科学の重要性を伝達することは、市民としての務めであると感じた」と答えています。
"Although my passion is for science and medicine, I have a responsibility as a citizen of this country to speak out when I see injustice and help communicate the importance of science."

[Nature] (2017.4.21)
What happened at March for Science events around the world

東京でも写真をみる限り、そこそこ人は出たようですが、どうも西欧系の方々が多いようです・・・。
朝日新聞の記事をみると「集まった米国人ら約150人」とあるので、日本の研究者は、(科学のためではなく)トランプ批判のための行進として、このマーチを受け取ったと言うことでしょうか。

船守美穂