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BioRxiv preprint server gets large funding from Chan Zuckerberg Initiative

バイオ系のプレプリントサーバーであるbioRxivが、チャン・ズッカーバーグ・イニシアティブ(CZI)より多額の財政的支援を得ることとなりました。CZIは、Facebookの共創設者であるマーク・ズッカーバーグと、その妻で医師でもあるプリスキラ・チャンが2015年に開始したフィランソロピーで、小児のあらゆ疾病に関わる治療・予防・管理のための基礎研究について、30億ドルの拠出がコミットされています。bioRxivへの財政支援の額や契約内容の具体は明かされていませんが、複数年にわたるパッケージ支援の予定で、スタッフや技術開発、bioRxivのインフラなどに用いられる予定です。

bioRxivの長であるJohn Inglisは、MS-WordやPDFとして登録されるプレプリントを、XMLなど、ウェブフレンドリーなフォーマットへと変換し、スマートフォンやタブレットで閲覧可能とするだけでなく、テキストマイニングも可能とすることを、最優先にしたいとしています。また外部からアクセスしやすいよういにAPIを開発したいとしています。CZIが1月に買収したスタートアップ企業で、AIを利用した科学文献の精査の技術を有するMeta社と、共同開発したいとしています。bioRxivは現在、HighWire Pressという商用ソフトに依存していますが、CZIの支援で構築するのはオープンソースとなる予定です。

ライフサイエンスにおいては投稿できるプレプリントサーバーが乱立(bioRxiv、arXivにおけるバイオ部門、ChemRxiv、psyArchiv、AgriXiv、PaleoXiv等)し、現在ASAPbioという生物学者によるグループがこれを統合するための資金集めをしています。NIHとウェルカムトラストを含む複数の助成団体がこれに支援の意を表明しています。bioRxivがオープンソースとなり、上述の機能をそろえた場合、こうした複数のプレプリントサーバーの統合が容易になります。

ASAPbioの長であるJessica Polkaは、bioRxivとCZIの連携は、プレプリント・エコシステムを大きな恩恵を与えるとしています。

[Nature] (2017.4.26)
BioRxiv preprint server gets cash boost from Chan Zuckerberg Initiative

この記事では、ライフサイエンス系のプレプリントサーバーの乱立に言及されていますが、米・Center for Open Scienceが開発したOpen Science Frameworkを用いて、近年社会科学や工学など、それ以外の分野でもプレプリントサーバーが立つようになっており、今回CZIの資金を得て開発される機能は、他分野のプレプリントサーバーも含め、その様相を変えていく可能性を秘めています。

5月下旬にはOAジャーナルのPLOSを訪問予定なのですが、こうした動きについてどのように考えているかもポイントの一つですね。PLOSではなんでも機関リポジトリ(green OA)と論文の査読・出版システム(gold OA)を連携させるような構想を有しているとのことで、それを取材予定でしたが、この構想も関係してきそうです。

なおPLOSではDonna Okuboが対応してくれているのですが、なぜかCZIへのアポイントも取り付けてくれているようなので、この話題に関するCZI側の見方も聴くことが出来るかもしれません。

船守美穂