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Plan S delays its effect date for a year & Plan U proposing preprints mandate
助成を受けた研究を〔出版後即座に〕オープンアクセス(OA)にするという、助成機関による強いイニシアティブである「プランS」の発行期限が、1年延長されました。発効期限は2021年に設定され、研究者や出版社がこの強気のプランによる変化に、自らを合わせる時間に余裕ができました。
プランSに賛同する助成機関「Coalition S」は、購読誌や部分的な購読誌を完全OA誌に転換するのにあたり、出版社に対してより柔軟性を与える用意があるとしています。また、OA出版に必要となる論文掲載料APCに対しても、当初は上限が課される予定でしたが、必ずしも上限を課さないとしています。欧州を中心とした19のプランS研究助成機関は、出版社や大学図書館、研究者などからの何百ものコメントへの対応として、このような改訂をしました。
「2020年という発効期限は、プランSに賛同し、変更を成し遂げようとする研究コミュニティや出版社にすら、野心的で早すぎるとみなされました」とプランSを昨年公式に打ち出したScience Europeという、欧州研究助成機関を代表するアドボカシーグループの長であるMarc Schilitz氏は述べました。
「〔発行期限が延びたことで〕この移行をしなければいけない人たちに、少し余裕が出来ました」とユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の図書館サービス長のPaul Ayris氏は述べました。「しかし、2021年であっても、相当厳しいです」。
Coalition Sは更に、研究助成をするに際して、「研究者が論文発表する学術雑誌が、権威ある雑誌であるかどうかは考慮しない」という原則を、プランSに加えました。この変更は、「研究評価が、選抜性の高い、権威ある学術雑誌(多くの場合は購読誌)に依存したままであると、研究者が〔購読誌からOA誌へなど〕行動を変更することは難しい」という指摘に基づいています。
これを強調することにより、学術コミュニティのプランSへの反発を鎮めることができる可能性があると、プランSの当初の設計者で、蘭・アイトホーフェン工科大学の学長であるRobert-Jan Smits氏は指摘しました。
ワイリー社とScience誌を出版するAAASを含む、いくつかの出版社は、この期限延長とポリシーの変更を歓迎しましたが、一部の人々はプランSが未だ問題(challenges)が大きいと指摘しています。
プランSの主要変更点
- ○ プランSの助成機関は、OA出版に関わるそのルールを2020.1.1ではなく、2021.1.1から発効させる。
- ○ プランSの助成機関は、OA誌に論文出版する際のコスト〔APC〕に対して、即座には上限を設けない。しかし、出版社に対して、出版コストの透明性は求める。
- ○ プランSの助成機関は、ハイブリッド誌と移行契約('transformative agreements')に関わるルールを調整し、これら部分的な購読誌がOAとなる道を提供する。
- ○ プランSの助成機関は、研究助成をする際に、〔論文出版がされている〕学術雑誌が権威ある雑誌であるか否かについては見ない(ignore)。
- ○〔当初は完全なオープンライセンスによる出版が求められていたが〕助成機関が認める場合、研究者は状況に応じて、より制限付きのオープンライセンスのもとで論文出版することもできる。
- ○ OAリポジトリや、政府補助等を受けている費用を必要としないOA出版メカニズムなどを、プランSに適合するOA出版方法と位置づける。
(※本変更点は記事には挙げられていないが、記事本文には指摘があるため、訳者が挿入)
改訂へのレスポンス
プランSの助成機関は、昨年11月に発表した実施ガイドラインに対して寄せられた600以上のレスポンスを検討しました。
プランSの主眼は変わりません。2021年1月1日以降、プランSに賛同する研究助成機関からの助成を受けた研究による論文は、出版と同時にOAにならなければいけません。研究者は、プランSのルールに適合するOA誌かOAプラットフォームに論文を出版するか、あるいは査読を経た著者最終稿を認められたOAリポジトリに自由な出版ライセンスのもとに公開することができます。しかし、Nature誌およびScience誌を含む多くの購読誌は現在、研究者が自身の論文や著者最終稿を、出版と同時に公開することは認めてません。つまり、これら購読誌がそのルールを変えない限り、プランSの助成機関から助成を得た研究者は、これら購読誌に出版することができません。
改訂版において、最も議論の多かった点について、変更がありました。APCを払う研究者の論文のみをOAとし、残りの論文は購読の壁(paywall)の向こうに置く「ハイブリッド誌」を、縮小していく方法についてです。
当初、プランS助成機関は、こうしたハイブリッド雑誌が所謂「移行契約("transformative agreement")」を提供し、指定された期間内に完全にOAとなることを約束した場合においてのみ、これら雑誌へのOA出版についても、〔APCを〕2023年(改訂後は2024年)まで支援するとしていました。(出版社と図書館コンソーシアムの電子ジャーナルの契約において、〔購読料だけでなく〕OA出版のコストもカバーする「Read and Publish契約」の一部は、移行契約とみなされます)。
しかしプランSの改訂版においては、ハイブリッド雑誌がこうした移行契約をしていなくても、一定の期間のうちにOA出版の数を拡大するという明確な計画がある場合は、プランSに適合していると認めることがあるとしています。このような自由度は、いくつかの購読誌がOA誌となる、新たな道を開く可能性があります。
このような変更について、Springer Nature社の出版部長であるSteven Inchcoombe氏は、同社の旗艦雑誌であるNature誌がOAオプションを提供する道を開く可能性があると述べました。Inchcoombe氏は今月頭にブログで、Springer Nature社やその他の出版社について、当該出版社が発刊する学術雑誌全体としてOA出版の論文を拡大した場合、その出版社を「移行的出版社("transformative publisher")」とし、同社から出版される学術雑誌全てを「移行的学術雑誌("transformative journals")」としてプランSに適合すると見なしても良いのではないか、というアイディアを提示していました。
[記事注記]Nature誌のニュースチームは、その出版社であるSpringer Nature社のエディトリアルからは独立しています。
Springer Nature社のアイディアは「興味深い」が、プランS助成機関は、このOAのアイディアについて同社がどのようなコミットメントをするかを見てから評価をしたい、とノルウェー・リサーチカウンシルの長であり、助成機関がプランSをどのように実施するかについて決めるグループのリーダーであるJohn-Arne Røttingen氏は述べました。
透明性のある価格設定
プランSの助成機関は、OA出版のコストとして彼らが負担する論文掲載料(APC)に上限を設けるという提案についても変更をしました。機械的に上限を設けるのではなく、出版社がそのAPCの価格設定について透明性をもって説明することを求めるとしています。ただし、上限を導入する可能性は引き続き示唆しています。「ブランドに対して支払うのではなく、サービスに対して対価を支払いたいのです」とRøttingen氏は述べました。
その他、著作権ライセンスや他のOA出版メカニズムについても、いくつか変更がありました。
新ガイドラインにおいて研究者は、研究助成機関が認めた場合、より大きな制限を付けたオープンライセンスを、自身の論文について利用できます。ただし、これがどのような状況を想定しているのかは、明記されていません。〔しかしこの変更により〕、万人が論文のテキストを再利用できる「特別にオープンなライセンス」に反対する出版社や研究者の懸念が、和らぐ可能性はあります。
また研究助成機関は、費用を必要としないOA出版メカニズムについて、表現を改め、これらもプランSに適合するオプションであることを明確にしました。このメカニズムについて、プランSが十分な注意が払っていないという批判がこれまで寄せられていました。「費用を必要としないOA出版メカニズム」としては、査読済み論文の著者最終稿をオンラインで公開するか、閲覧にも出版にも費用を課さない学術雑誌やプラットフォームを利用することです。たとえば、政府補助のあるプラットフォームなどがありえます。
Inchcoombe氏は、Springer Nature社としては、研究者が査読済の原稿を自由なライセンスのもとで即座にオンライン上で公開するというアイディアについて、「予期しない深刻な事態(serious unintended consequences)」につながる可能性があるため、大きな懸念を抱いていると述べています。たとえば、「この論文の研究に関わらなかった第三者が、この研究を商用的に再利用する可能性があります」。
他の出版社も、プランSが変更を行った後もなお、プランSについて警戒を示しています。予期しない事態や、助成を得られなかった研究者のコスト負担可能性について、より多くの検討と対応が必要であると、英Royal Society of Chemistryの出版部長であるEmma Wilson氏は指摘しています。
プランSが「一律に全面的に適用されることにより(plan's "blanket requirements")」、出版社が、他のコミュニティにおけるOAへの移行を支援しにくくなる懸念を、ワイリー社のスポークスパーソンは述べています。
プランSは引き続き「極めてエキサイティングで野心的であり続ける」が、未だ大きな障壁(obstacles)に直面しているとAyris氏は述べています。プランS助成機関は全世界のごく一部の研究者のみを対象としており、他の研究助成機関がこれに賛同しない限り、グローバルなOAへの転換を達成することは難しいだろう、と同氏は述べています。
[Nature] (2019.5.30)
Ambitious open-access Plan S delayed to let research community adapt
このプランS改訂版の記事のタイトル、「発効期限延期」となっていますが、この改訂の肝はそのようなところにあるのではないと思います。
プランSは当初、1. 完全OA誌への投稿を勧め、2. エンバーゴ期間なしの機関リポジトリにおける論文公開は申し訳程度(リポジトリは「長期保存」や「学術出版革新の可能性」のためといった文言あり)に言及、3. ハイブリッド誌への投稿は条件付き(当該雑誌が移行契約に応じ、2023年まえに完全OA誌になる計画を有する場合のみ)で認められていました。
これに対して改訂版では多様な声に配慮して、
- 完全OA誌については、a) 当初、論文掲載料(APC)の上限を設けるとあったのが、代わりに「価格設定の透明性」を求め、「APCへの上限設定」は可能性として示される程度、b) 当初のCC-BYライセンス付与の条件を緩和し、助成機関が認めれば、より制限の大きいライセンスも可としています。
- 機関リポジトリを通じた公開については、プランSにおけるOA出版の正規の方法と位置づけ、また、論文掲載料(APC)不要なOAプラットフォームなど、多様なOA出版形態を推奨することとなりました。
- ハイブリッド誌については、a) 当初からあった「移行契約(transformative agreement)」については、一年後ろ倒しで引き続きあるものの、b) 「移行モデル契約(transformative model agreement)」を中小規模出版や学会系出版が形成する支援をするという選択肢と、c) 「移行雑誌(transformative journal)」という、完全OA誌への移行が緩やかな表現で定義(購読料がOA比率拡大とともにオフセットされる)されている選択肢が付加されました。
論点は、これが「骨抜き」と言うほどの譲歩なのか、引き続き、「学術出版に関わる総コストを引き下げつつ、完全OA出版への移行を実現する、強硬なイニシアティブ」なのかという点にあるかと思います。
個人的には、1) APCの上限を設けるという条件が、価格設定の透明性を求める程度になったこと、2)「移行雑誌」という、よく分からない方法が新たに用意されたことが気になります。
1) APCの上限を設けるという条件が、価格設定の透明性を求めるに緩和したのは、完全OA誌への移行には設備投資が必要なことや、Nature誌やScience誌などから、これらトップジャーナル(highly selective journals)は掲載論文数より遙かに多くの投稿論文を評価するために専門のエディターを雇い、高い内部コストが発生するという指摘に依るものです。しかしこれらの言い分を反映して、APCや購読料の価格を設定するとなると、追加的設備投資やインハウススタッフの人件費など、「間接経費的な費用」でAPCや購読料の価格設定の適切性を説明する必要があり、それが適正範囲内なのか否かの判断が困難なように思います。
冊子体の時代のように、紙一枚やインク代、郵送費などが論文一本ごとに見積もることができた時代と違い、デジタル出版は論文一本あたりの「適切な価格設定」を割り出すことが、原理的に難しいのだと思います。論文を年間100本程度しか出版していなくても、年間1000本出版していても、これをオンラインで査読・編集・出版するために必要となるサーバーとシステム維持費はほぼ同一でしょう。
また、2) の「移行雑誌」については、学術雑誌がOA論文の比率を拡大しつつ、OA比率を考慮に入れて購読料を引き下げる(オフセット)すれば良いということになっていますが、まず、a) ハイブリッド雑誌において学術論文がOA出版されるか否かは、論文著者の気分と予算次第のため、OA論文比率は雑誌運営側のコントロール下にありませんし、b) 購読料をオフセットすると言っても、その代わりにAPCが法外な価格になったら元も子もありませんし、b)' APCの価格設定の透明性を求めても上述のように、デジタルコンテンツの価格設定の適切性を判断するのは原理的に難しいので、どうなのかなあと思います。
あるハイブリッド誌が自身を「移行雑誌」であると言い切れば、プランSに適合しているとみなされ、(当該雑誌に投稿する研究者を通じて)APCの補助を受け続けることは可能なのではないでしょうか・・・?
ハイブリッド誌がこうしたプランSの変更をどのように捉え、どのような動きをするかは、今後の推移を注意深く見守るしかありませんが、今回の改訂で個人的に評価しているのは、2. で機関リポジトリが正式に、プランSの完全OA出版実現という目標に適合する方法として位置づけられたこと。また、たとえば政府補助等を受けた、APC不要のOAプラットフォームも認められたことでしょうか。
前者については、COAR(Confederation of OA Repositories)など、世界の機関リポジトリのコミュニティが強く働きかけた結果です。また後者については、プランSでは当初、購読料ベースの購読誌あるいはAPCベースのOA誌の二者択一のようなとらえ方がされていたため、政府補助で運営される「APC不要のOAプラットフォームSciELO」が広く利用されている南米のコミュニティから強い反発が発せられました。「OA誌であればAPCが必須」というイメージが植え付けられると、APC不要で運営されていたOAプラットフォームもがAPCを要求するようになる、という主張です。
日本からもSPARC Japanが「Plan Sに関する整理」において、「出版社に依拠しない媒体として我が国が着実に整備してきた,研究成果公表手段としての機関リポジトリや J-STAGE の再認識,及びその積極的な利活用方策」に留意が必要といった緩やかな指摘をしていますが、もう少し強い打ち出しでも良かったのかなと思います。
COAR, "Updated Feedback on the Guidance on Implementation of Plan S," (2019.2.6)
CONICYT, CINCEL, CONRICyT, ibict, "Statement--First Consortium Assembly from Ibero-America and the Carribean," (2017.8.31 - 9.1)
International Science Council Blog, "Plan S and Open Access in Latin America: Interview with Dominique Babini," (2019.2.5)
国際学術情報流通基盤整備事業(SPARC Japan)運営委員会 「Plan S に関する整理」(2019.3.26)
プランSが日本に与えるインパクトとしては、プランSが当初、全ての学術雑誌が完全OA誌に転換することを強く志向していたので、これが現実のもとなり、全ての学術雑誌が論文投稿において数十万円規模のAPCを要求するようになったら、APC機関補助の仕組みがなく、研究者が自身の研究費からAPCを支払う日本では、APC不足から論文出版ができず、研究力が大幅に落ちるのではないかということが、懸念されていました。
プランSが、エンバーゴ期間なしの機関リポジトリにおける論文公開や、APC不要のOAプラットフォームが認めたからといって、所謂「権威ある学術雑誌」がこれらに載ってくるわけではないので、引き続きこのAPC不足の問題は存在し続けますし、OA誌に移行する欧米の国際誌については、日本でも「移行契約」を試行する必要は引き続きあります。
しかし一方で、機関リポジトリ大国であり、またJ-Stageといった政府補助のOAプラットフォームがある日本としては、「学術情報を全てオープンアクセスにする」という世界のイニシアティブについて、胸を張って、これらのインフラをもって貢献していくことができます。これらインフラは、電子ジャーナル価格問題をもたらしているとする商用出版の範囲外で機能しますから、より積極的な活用をしたいものです。何度か紹介している、「次世代機関リポジトリ(NGR)」を世界のリポジトリコミュニティとともに推進するのも良いのではないでしょうか。
また昨日、「プレプリントサーバへの論文掲載を、研究助成機関は義務化すべき」という、「プランU」(UniversalのUだそうです)が、コールド・スプリング・ハーバー研究所のRichard SeverとJohn Inglis氏、UCバークレーのMike Eisen氏により提案されました。前二者は、バイオ系のプレプリントサーバーbioRxivの共創設者で、Eisen氏はOA誌のPLOSを立ち上げたことで知られています。
この提案の要旨によると、「arXivやbioRxivなどのプレプリントサーバは、研究成果へのフリーアクセスを比較的に低コストなメカニズムで提供することについて、大きな成功を収めている。研究成果の発信と、より時間のかかる評価や学術雑誌による認定を分離(decouple)することにより、研究者は新たな研究成果に即座にアクセスし、その知見の上に新たな研究ができるため、プレプリントは研究のペースを確実に加速することができる。
もし全ての研究助成機関が、助成を受けた研究者に研究成果をプレプリントに掲載することを義務化したならば(我々はこのアプローチを「プランU」(Uは、universalの意味)と呼ぶ)、世界の研究成果へのフリーアクセスは、最小限のエフォートで実現できる。更に、全ての論文がプレプリントとしての存在することにより、新たな査読や研究評価〔を生み出す〕イニシアティブのための、豊かな実験環境が創出される―〔論文の〕ホスティングやアーカイビングのコストが既にカバーされているため、こうした実験への参入障壁は低くなる」とあります。
infoDOCKET, "Scientists Call on Funders to Make Research Freely Available Immediately, 'Plan U' Proposal Published Today," (2019.6.4)
arXivなどのプレプリントサーバは、このサーバを運営する大学の予算やメンバーシップ料、民間財団からの助成などにより運営され、ここにプレプリント(投稿・査読前の論文原稿)を登録する研究者側の費用負担はありません。arXivは、高エネ物理学分野で始まり、現在は幅広い分野の研究者に利用されています。またarXivに倣い、bioRxivをはじめとして、複数の分野にプレプリントサーバーが近年、立ち上がっています。分野によっては、研究者が朝出勤したらまず、プレプリントサーバーに新たな研究成果が発表されていないかをチェックし、その日の研究活動を始めるというぐらい、研究成果の迅速な共有に役立っています。
プランUの提案者の言うように、論文投稿から論文出版までに半年から一年、長い場合は数年かかるような状況では、流れの速い現代に適した、学術情報の共有がなされているとは言えません。論文の査読から出版がボトルネックとなっているので、これを切り離し、まずは学術情報の共有にフォーカスするというのは、賢い選択なのかもしれません。さらにこの方法は、商業出版社を回避する出版も実現します。
無論、プレプリントサーバーであっても運営費は必要で、また、arXivについても数年ごとに、財務的に運営が破綻しそうになったというニュースを聞くので、これを安定的に維持する方法は考えなければいけません。また、査読という関門がなくなり、助成機関にプレプリント登録が義務化されると、プレプリントの数で研究評価されるようになり、プレプリントの数が膨大となって、しかも書誌情報やキーワード等の検索精度を上げるための情報が粗く、必要な情報に行き着かない、という問題が発生するのかもしれません。しかし論文数が多すぎて、自分のテーマに関係する論文を全て収集、把握しきれないという状況は、今でも同じです。
プランSは完全OA誌という、所謂「ゴールドOA」を強く志向するイニシアティブでしたが、①プランSに対して小規模や学会系出版が5月15日に、「エンバーゴ期間なしのグリーンOA」を真剣に検討するというニュースが入り、②5月30日に提示されたプランSの改訂版では、機関リポジトリやAPCなしのOAプラットフォームがプランSに適合するOA手法と位置づけられ、③6月4日には、プレプリントを研究助成機関が義務化すべきと提案する「プランU」が発表され、「グリーンOA」路線が強く打ち出されてきたように感じます。
これからグリーンOA路線が根付いていくためには、研究助成機関がこれを義務化するなどの制度的な側面と、機関リポジトリにしても、プレプリントサーバーにしても、これが安定的に運営されるための財政的な側面の裏付けが形成されていく必要があると思われます。
※ プランSの新旧対照表を簡易的に作成しました。よろしければ、ご活用ください。
→ The Plan S Principles 新旧対照表
船守美穂
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