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NSF requires reporting on sexual harassment
NSFは、被助成者がセクハラを犯した場合、あるいはその調査のため休職扱いとなった場合、被助成者の所属機関がNSFに報告の義務があるとの通達を、2月8日付けで出しました。
この規則は60日間のパブコメ期間を経て、発効します。
NSF通達 "Important Notice No. 144 Harassment" (2018.2.8)
米国の研究助成機関はこれまで、セクハラを研究不正とは位置づけておらず、その報告も義務付けてはいませんでした。基本的には、研究助成機関も大学も、連邦政府によるTitle IXという、公的資金を得る教育プログラムにおいて性差別を禁ずる法律に準拠していれば良いという扱いです。Title IXでは、性差別があったとの訴えを調査し解決に向けて動く担当を置くことを求めています。
しかし大規模な研究プロジェクトを獲得していた研究者がセクハラのために退職あるいは休職扱いとなり、別のプロジェクト代表等(PI)を探さなければいけないなどの事件が相次ぎ、こうした事態への対応の必要性が増していました。なお研究助成は機関に対してなされているため、研究代表者がこうした事態で大学を去っても現状では、付与され続けます。
- - シカゴ大学, Jason Lieb(分子生物学)NIH120万ドルのPI,(セクハラ2016.2.2 NYタイムズにて報道)
- - Caltech, Christian Ott(理論天文物理学)NSF計320万ドルの研究に関係(セクハラ2016.1発覚)
- - UC Berkeley, Geoffrey Marcy(天文学)Breakthrough Listenからの1億ドルを含む各種財団からの
潤沢な資金あり(セクハラのため2015.10退職を表明)
[Nature] (2016.2.8)
How should science funders deal with sexual harassers?
2018年1月、米国下院の科学委員会が米国会計検査院(GAO)に、NSF, NASA, DOE, NIHなどの研究助成機関から研究助成を得ている研究者のセクハラ問題を吟味するよう求め、研究助成機関における対応の必要性が増し、今回のNSFの通達につながったと見られています。
米国下院のこの動きは、ボストン大学が、David Marchant教授がNSFの助成を受けて行っていた南極調査中に、同大学のセクハラに関する大学規則に触れたと公表したことに触発されています。
なおNSFの通達は、被助成者の所属機関による報告義務のほかに、大学がセクハラフリーな職場環境の基準を設け、これを守ることを求めています。職場環境には、フィールド調査や国際会議の場など、学生や若い研究者が最も被害に遭いやすいオフキャンパスの場なども含まれています。
[Nature] (2018.2.8)
US science agency will require universities to report sexual harassment
セクハラも徐々に研究不正と同等の扱いになりつつありますね。
米国地球物理学連合(AGU)はこの点で最も進んでおり、昨年9月に研究公正・倫理規定を改定し、差別やセクハラ、イジメなども職務上の違反行為(professional misconduct)と位置づけました。AGUの次期代表であるRobin Bellは今回のNSFの通達について、「こうした悪質な行為をなくす上で学術界が次に検討すべきは、ハラスメントの報告を研究助成に関連付け、これら悪質な行為の結末を明確にすることである」と述べています。
なお上記の2016年の記事では、イリノイ大学アーバナシャンペーン校National Center for Professional and Research EthicsのDirector C.K. Gunsalusが、「公的助成を得た研究が、誠実に行われることに対する権利が社会にはある」と述べており、このセクハラ問題は、公的研究助成を得た研究における説明責任という側面も含んでいます。
船守美穂
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