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Virginia proposes free 2-year college for specified jobs

バージニア州知事のRalph Northam氏(民主党)は、〈地域において〉需要の高い職を目指す低・中所得層の学生を対象とする、コミュニティカレッジの無償化策1.45億ドルの予算案を、木曜日(12/12)に発表しました。

この計画において、対象となる学生は、授業料や諸経費、書籍などに対する学資援助を得ます。また、最低所得層の学生については、追加支援("wraparound financial assistance")として、食費や交通費、児童手当も支給します。このプログラムの対象となる産業は、医療、IT、熟練投資(skilled trades)、公共安全(public safety)、幼児教育です。
このプログラムの適用対象でいるために学生は、地域奉仕同意書(community engagement agreement)に署名し、大学で履修する科目の単位時間ごとに2時間、職場体験、地域奉仕、公共サービスをする必要があります。

「この大規模な投資は、何万人ものバージニア州民が、21世紀経済にフルに参加できるスキルを習得することにつながるでしょう」と、バージニア・コミュニティカレッジシステムの総長であるGlenn Dubois氏は発表しました。「労働力プログラムの再設計により、バージニア州民は、現在と未来に適したスキルを習得することが、確実にできます」。

[Inside Higher Ed] (2019.12.13) Free 2-Year College Proposal in Va.

[A Commonwealth of Virginia Website] (2019.12.12)
Governor Northam Unveils Tuition-Free Community College Program for Low- and Middle-Income Students - Proposed budget includes $145 million for Governor's signature 'Get Skilled, Get a Job, Give Back' initiative

何度か紹介しているように、米国ではテネシー州を皮切りとして、コミュニティカレッジ(2年制)の高等教育無償化に向けての取り組みが急速に進んでいます。基本的には連邦政府奨学金の足りない部分を補完したり、大学教科書価格も高騰していることも背景とした、教材費などの支援が中心です。

[mihoチャネル] (2018.10.1) 高等教育無償化を掲げる民主党員が拡大

[mihoチャネル] (2018.12.2) ブルームバーグ氏、ジョンズホプキンズ大学に18億ドルの寄付 ― 同大学が永遠に学資援助を出せるようにする

それらに対して今回のバージニア州の事例は、最低所得層の学生に対して食費や交通費、児童手当を支給するほか、学資援助対象者を特定の職業を目指す学生に絞っていることが、特徴的です。

バージニア州のプレスリリースによると、このプログラムは、「スキルを得て、職を獲得し、社会に還元しよう!("Get Skilled, Get a Job, Give Back")」イニシアティブ、通称「G3プログラム」と呼ばれています。Northam州知事は、夏に行った州の労働力開発のためのヒアリングツアーで得た声から、このプログラムのヒントを得たそうです。なんでも、州知事自ら1000人ものビジネスやコミュニティリーダーと意見交換を行い、特にニューカラー("new collar")やミドルスキルを要する職について、深刻な労働力不足が起きていると理解したそうです。

一方で、大学授業料が高く、大学進学を諦める州民が拡大し、労働力不足が更に加速するという負のスパイラルに陥っていたことから、バージニア・コミュニティカレッジ・システムにこれら特定の産業に結びつく教育プログラムを置き、学資援助を提供することで、この問題を解決することを思いついたそうです。曰く、「これは公平性(equity)と州の経済(economy)への投資です。州民が必要なスキルの獲得支援を行うことを通じて、我々はワールドクラスの労働力を形成し、一方で州民が自身、家族、そしてコミュニティの生活を維持できるようにするのです」。

[A Commonwealth of Virginia Website] (2019.8.26)
Governor Northam Launches Statewide Workforce Development Listening Tour - Conversations will focus on addressing the Commonwealth's workforce, business, and education needs

これまで高等教育における公的な学資援助は、受給者の能力もしくは、家庭の所得水準を基準とし、特定の分野を対象としてはいなかったように思います。バージニア州のように、特定の産業を念頭においた高等教育無償化策は、(高等教育に身を置く者として少し寂しさは感じるものの)、学資援助の出資者が、州民と州政府であることを考えると、地域経済に資する分野の人材育成を行うことは、理にかなっていると思いました。

船守美穂