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India introduces regulations for prohibiting plagiarism

インドにおいて、大学における研究者や学生の盗用行為を検知し処罰する規則が導入されました。処罰の内容は、原稿の取り下げのような軽微なものから、解雇、除籍など重いものまであります。

この規則において盗用は、「他者の著作またはアイディアを、自分の物かのように発表する」ことであり、インドの高等教育を監督する大学助成委員会(University Grants Commission, UGC)所管の867大学と関係機関を対象とします。UGCは、この規則を7/23に遡って適用すると、8/3に発表しました。

これまで研究者等の盗用への対処は、各大学の判断に任せられていました。この新しい規則では、Turnitinなどの盗用検知ソフトを大学が用いることを義務化しています。現段階でこうした盗用検知ソフトを用いている大学は、多くありません。複数の著名な研究者が盗用をしていたことが発覚したことが、このような規則制定につながりました。

一方、この規則は甘いという声もあります。ニューデリで、研究倫理を促進するSociety for Scientific ValuesのKasturi Chopra会長は、この規則における「盗用」の範囲が狭すぎると主張しています。たとえば、自己の著作の盗用(self-plagiarism)、改ざん(falsification)、データの捏造(manipulation of data)は含まれず、また「文書」の盗用しか対象としません。Chopraによると、これらの研究不正は盗用と同様に重大、かつ蔓延しており、研究公正を脅かしているとのことです。

分子生物学者のNandula Raghuramは、この規則が全ての高等教育機関を対象としていないことを問題視しています。インドには、UGC所管外の大学や研究所が100以上あります。

[Nature] (2018.8.9)
India cracks down on plagiarism at universities

なかなか強行ですね。先日レポートしたハゲタカ雑誌の検出も含め、インドのUGCは研究公正を徹底しようとしているみたいです。なおインドの記事は滅多にお目にかからないので、インドがいきなり動き出したように見えますが、この盗用への対処については数年かけて議論されており、ドラフトへのパブコメも一年前に求めていた模様です。

UGCの通達を見ると、盗用に対する罰則は以下の通りです。なお学生については、修士以上の学生が対象です。

【学位論文における盗用の際の罰則】

  • ・ レベル0:類似度10% ― 罰則なし
  • ・ レベル1:類似度10-40% ― 6ヶ月以内に、原稿の再提出を求められる。
  • ・ レベル2:類似度40-60% ― 一年間、再提出を禁じる
  • ・ レベル3:類似度60%以上 ― 研究プログラムからの除籍
  • ※ 盗用が再度発覚した場合は、1レベル上の罰則が適用される。
  • ※ 単位や学位取得後に盗用が発覚した場合は、それらを失効する。

【学術論文等における盗用の際の罰則】

  • ・ レベル0:類似度10% ― 罰則なし
  • ・ レベル1:類似度10-40% ― 原稿の取り下げを求められる。
  • ・ レベル2:類似度40-60% ― ① 原稿の取り下げを求められる。
                   ② 一年間、給与上昇を認めない。
                   ③ 二年間、学生の指導を認めない。
  • ・ レベル3:類似度60%以上 ― ① 原稿の取り下げを求められる。
                  ② 二年間、給与上昇を認めない。
                  ③ 三年間、学生の指導を認めない。
  • ※ 盗用が再度発覚した場合は、1レベル上の罰則が適用される。レベル3が再発した場合は、大学の判断により、停職/解雇となる場合もありえる。
  • ※ 論文がすでに採択等になっていた場合、大学の定める期間、当該論文を失効とする。
  • ※ 大学は、学位論文あるいは学術論文の提出段階において、盗用の有無をチェックする手続きを学内に設けなければならない。

UNIVERSITY GRANTS COMMISSION (PROMOTION OF ACADEMIC INTEGRITY AND PREVENTION OF PLAGIARISM IN HIGHER EDUCATIONAL INSTITUTIONS) REGULATIONS, 2018
(New Delhi, the 23rd July, 2018)
(後半に英文があります)

このような罰則、まるで子供を罰するみたいで、「大学の自治」を考えるとどうかと思いますが、よほど目に余る状態だったのでしょうね。まあ日本もよその国のことを言ってられません。度重なる研究不正で、2006年に科学技術・学術審議会のもとでまとめられていた研究不正への対応に関するガイドラインを、2014年には文部科学大臣決定で発出し、もともと研究者個人の責任とされていた研究不正への対応について、機関の責任を明確にしたばかりですから。

船守美穂