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Cheating soars by 40% in two years at Russell group universities

英・ガーディアン紙が各大学への情報公開請求により得たデータによると、英・ラッセルグループの24大学における学生レポートの不正件数が、2014-15年度から2016-17年度で2640件から3721件となり、40%の増大となったそうです。
英・ラッセルグループとは、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学を含む、英国におけるトップ24大学から構成されるグループです。このなかのリーズ大学(181→433件)とグラズゴー大学(161→394件)については、2倍以上の不正件数が報告されています。

英国では昨年、学生レポートの不正のなかでも特に「レポート代行業を用いた不正(contract cheating)」が問題となり、ビジネス技術イノベーション省のJo Johnston大学・科学担当大臣(当時)の依頼により、英・高等教育質保証機構(QAA)が、これへの対処法等を記した報告書を2017年10月にとりまとめました。
「レポート代行業を用いた不正」件数を別途とりまとめている大学は未だ少ないですが、こうした注意喚起により、確認される不正件数が増加したものと思われます。

レポート代行は近年、インターネットを通じて容易に注文可能で、学生は日常的にレポート代行の広告メールを受け取っています。また代行業者が、大学キャンパスでチラシ等を配布している姿も頻繁に見かけられます。代行業者は特に学期末等、学生が単位取得に切迫している時期を狙っています。
英・広告基準局は本年初め、こうしたレポート代行業のウェブサイトにおいて、「学生が不正のレポートを提出した場合に、大学から罰せられる可能性がある」ことを明記しなくてはいけない、という規則を設けました。

学生レポートにおける不正の横行は、不正を行う学生の問題というだけでなく、まじめに課題に取り組む学生の成績や学位に対する社会的信頼にも揺らぎを与えるため、英国大学の品質保証にも影響を与えます。QAAは、学生レポートの不正の横行が、英国大学の「優れた高等教育」というブランドイメージに対して、脅威となっているとしています。

学生の不正(academic misconduct)に詳しい、インペリアルカレッジのThomas Lancaster氏は、学位取得に対してのプレッシャーが近年、これまでにないほど高まり、学生のこのような行動を誘発しているとしています。
英国では、1997年まで無償であった大学授業料が短期間に上昇し、2012年には上限9000ポンド、2017年秋からは上限9250ポンド(140万円弱)とまでなり、学生は卒業時に5万ポンド(750万円弱)の借金を抱えるようになっています。この返済のために、学位を好成績で取得することへのプレッシャーは甚大です。また大学に在籍期間中も、アルバイト等による収入確保を強いられるため、学業に十分専念できない状況となっています。

[Guardian] (2018.4.29)
Cheating at UK's top universities soars by 40%

[Guardian] (2017.10.9)
Universities urged to block essay-mill sites in plagiarism crackdown

[QAA] (2017.10)
Contracting to Cheat in Higher Education -- How to Address Contract Cheating, the Use of Third-Party Services and Essay Mills

学生のレポートの不正といったら、インターネット上の文章や先輩のレポートのコピペが代表的で、そのための盗作検査システムが日本の大学においても導入が進んでいますが、ここで特に問題となっているのは、レポート代行業です。なんでも、与えられた課題のトピックに対してレポートの内容が一般的すぎて、添削者が気づくことも多いそうです。またこうした代行業は、レポートだけでなく、卒論も6750ポンド(100万円)程度で作成してくれるのだとか。

英語圏だけの問題なのかと思いつつ、試しにネットで「レポート 代行」と検索したら、日本でもいくらでもそのような代行業者というのはあるのですね。しかも、何というか、上記英国の例より良心的(?!)なお値段。日本の大学授業料は上昇傾向にあると言われつつも、英国ほどではないためでしょうか。。。
更には、こうした代行業者のウェブページには、「オーダーメイドのレポート作成のため、大学に代行がばれることはない」や、「代行してもらったレポートをもとに自分で文章を書けば、効率的な学習が実現できる。違法ではない」といった記述も見られます。(^_^;) これは日本でも取り締まった方が良いのではないでしょうか。

それにしても、このような学生レポートの不正の増大が、大学授業料上昇による学位取得のプレッシャー増大にあるといった見方は、なかなかショッキングです。英国の大学では、学生の卒業時の成績に基づき学位にランクがあり(1st:70点以上、2:1:60-69点、2:2:50-59点、3rd:40-49点)、この成績インフレが起きていることも問題となっていますが、これも同様の背景から来るのでしょう。良い成績で卒業していないと、良い就職ができず、授業料ローンの返済ができないわけですから。

しかし、この指摘が、ラッセルグループという上位大学群を対象とした記事においてなされていることについては、疑問を感じます。上位大学は一般的に、学位取得率と就職率が高く、学位取得のプレッシャーも、それほどには高くないはずですから。
まあ記事を面白おかしくするために、上位大学における不正の横行と、授業料ローンによる借金地獄の話を二つ、つなげてしまった、ということでしょうか。

船守美穂