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Harvards to offer business analytics online program

ハーバード大学の、ビジネススクールを含む3つの学部の教員が共同で、ビジネスアナリティクスの認定プログラムを、オンライン教育会社「2U」の協力のもと、2018年からオンラインで提供開始すると発表しました。
プログラムは、セミナーがライブで提供されるのが特徴で、3セメスターで5万ドル、毎週の学習時間は10時間程度の予定です。

[Inside HigherEd] (2017.8.8)
Harvard Goes Outside to Go Online

ハーバード大学はご存じのように、MOOCプラットフォーム「edX」をMITとともに立ち上げています。また同大学のビジネススクールは「HBx」というオンライン教育プラットフォームを通じて、認定プログラムを提供しています。
しかし今回のビジネスアナリティクスの認定プログラムは、こうした自家製のプラットフォームは用いず、外部のプラットフォームを利用するとしたことにニュース性があります。edXやHBxは、学習者が学びたいときに学べる非同期的(asynchronous)なプラットフォームであるのに対して、2Uはライブの学習環境を提供するため、これを利用することにしたと記事にはありますが、自社開発と運用負担をアウトソーシングしたかった、また、オンライン教育が外部のプラットフォームに頼っても良いぐらい、汎用性ができてきたということなのでしょう。
一方で、外部プラットフォームを利用すると、学習ログなどのデータが外部プラットフォーマーに渡ってしまうということも危惧されています。


MOOCは2012年に開始した際、これが高等教育を代替すると喧伝されながらも、結局はそこまでは至らず、世界の大学がオンライン教育提供をお試ししつつ、自大学のアピールをする場となっていましたが、MOOCが開始し5年が経とうとしている今、MOOCや類似のオンライン教育プラットフォームを利用して、実質的な教育プログラムを提供する動きが徐々に見えだしています。

ハーバード大学の今回の事例は単なる認定プログラム(certificate program)で、単位や学位には結びつきませんが、それでも授業料を5万ドル(500万円以上?!)もオンライン教育で取るというのは、相当のものです。

MITは、サプライチェーンマナジメントのブレンド型プログラムを2016年10月に開始し、先月末これが成功であったと報じました。
このプログラムでは、初めの1年はMOOCで無償で学習をします。5科目を修了し150ドルを払うと、MicroMastersと呼ばれる認定証が得られます。学習者はここでやめることも可能ですが、最終試験を受け、2年目の対面教育のプログラムに応募し、学位を取得することも可能です。
MITのこのプログラムには20万名が登録し、MITは延べ1.9万の認定証を発行しました。1100名が5科目を修了し、約800名が最終試験を受け、内622名が合格しました。そのうち130名が、2年目の学位プログラムに申請しています。ただし入学枠は40名分のみです。

[Inside HigherEd] (2017.7.26)
MIT Deems MicroMasters a Success

ジョージア工科大学は早い段階の2014年から、MOOC形式のコンピュータ科学の修士プログラムをAT&Tの出資により提供し、4500名の学生がいます。さらに本年秋には、アナリティクスのプログラムを加え、計5500名となる予定です。
また本年春から、学部教育において「コンピューティング入門」の科目においてオンラインでも学べるオプションを提供したところ、59名の学生がこのオンラインオプションを選択し(350名は対面教育)、一方で最終試験や獲得知識において、両者に有意な差は見られなかったそうです。このため同大学は、学部教育におけるオンライン提供を拡大し、対面教育1年半分を縮小できないか、検討開始しています。

[Inside HigherEd] (2017.8.7)
Could Georgia Tech Use Online to Shave Time Off Bachelor's Degrees?

またこれらエリート大学ではありませんが、アリゾナ州立大学(ASU)は、米国高等教育における授業料高騰問題に対応して、学部の初年次教育をMOOCで無償で取得できるGlobal Freshman Academyを2016年秋から開始しています。
ASUは、マイケル・クローという名物学長が、マス化、ユニバーサル化した高等教育時代には、学生を選抜試験により閉め出すのではなく、間口を広げて可能な限り受け入れ、できるだけ付加価値を付けて社会に送り出していかなければいけないとし、多様な取り組みをしています。オンライン教育等を通じて学生数を拡大するのも、そのヴィジョンの一つです。確か現在学生規模5万人ぐらいで、8万人規模の大学を目指すとか・・・?

[Inside HigherEd] (2015.4.23)
MOOCs for (a Year's) Credit

これら大学の取り組みは、いずれもオンライン教育やMOOCのみではありませんが、教育プログラムの(特に知識伝授の部分を)MOOCに委ね、対面教育の(主に時間的拘束という意味での)教員側・学生側の負担を低減するという方向にあると読み取れます。でも日本では、このような取り組みはまだまだですね・・・。

なお日本からは、世界の高等教育におけるオンライン教育はMOOCから始まっているように見えますが、米国の大学ではLMS(ラーニングマネジメントシステム)やyoutubeなどを使って、教員がオンライン教材を自身の提供する科目のなかで使用したり、オンライン上で文書を学生に共同で作成させる課題を出したりするなど、「オンライン」を随所にちりばめた授業実施が広く浸透しています。

オンラインの単位や学位提供と構えるのではなく、ひとまずは個々の教員の授業レベルで、多様な取り組みが生まれるとよいと思う次第です。

船守美穂