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Elsevier restores access to German universities during negotiation process

ドイツではエルゼビア社とのナショナルライセンスに関わる交渉が昨年末決裂し、1月頭からドイツの約60の高等教育機関において電子ジャーナルが読めなくなっていましたが、2017年2月13日、エルゼビア社が「交渉期間中は、これら高等教育機関へのアクセスを提供する」と発表したことから、現在ではドイツにおいても論文が再び、閲覧可能となっています。

エルゼビア社との交渉の代表となっていたドイツ大学協会のヒップラー会長は、「なぜジャーナルへのアクセスが再開されたのか、誰にもよく分からないが、きっと企業としてこうすることにメリットがあると思ったのだろう」と述べています。
エルゼビア社は、ドイツにおける学術研究への継続支援という意味合いと、なんらかの合意に至ることができるだろうという期待から、このような判断をしたと公式には発表しています。これに対して課金するのかという問いに対して、「これまでも契約終了後から次の契約締結までの移行期間には、アクセス権を与えていた」という回答をしています。
エルゼビア社との次の交渉は3月23日に予定されています。

[Elsevier] (2017.2.13)
Continued Elsevier access in support of German science

[Nature] (2017.2.14)
German scientists regain access to Elsevier journals

[Science] (2017.2.14)
Elsevier journals are back online at 60 German institutions that had lost access

一体なんなのでしょうねえ。企業イメージを考えての行動でしょうか? 契約していなくても論文が読めるようになってしまったら、ドイツの大学の方は痛くもかゆくもなくなるので、エルゼビア側は交渉におけるレバレージが効かなくなるような気がするのですが・・・。
でも永遠に交渉し続けるわけにもいかないので、どこかでなんらかの合意がなされたときに、時期を遡って契約ということになり、そのときに「ちゃんと読めるようにしていたのだから、その分を払え!」と言うことが出来るようにするための策なのかもしれませんね。

笑えるのがNature誌の記事です。1月頭からアクセス権復帰までの間、大学側は電子ジャーナルへのアクセスがなかった訳ですが、それで困ったか? という取材に対して、分野にもよるけど、「あまり困らなかった」という回答がなされています。

  • ・ エルゼビア社のジャーナルは自分の分野ではあまり重要でない
  • ・ 大学図書館員が図書館相互賃借(ILL)等でがんばってくれた。
  • ・ 多くの研究者は海外の研究仲間がいるので、そこから論文を送ってもらった。

研究者ネットワークが形成されていない大学院生などが一番打撃を受けたわけですが、

  • ・ 博士論文で参考文献を挙げられなくなり、しょうがないのでオープンアクセスの論文に切り替えて参考文献リストを作成した。

などという声が聞かれています。
一番頭の「エルゼビア社のジャーナルは自分の分野ではあまり重要でない」というのも、地球物理系のバークレーのシニア教授に聞いたところ、「エルゼビア社が暴利をむさぼっているのに憤慨しているので、エルゼビアには基本的に投稿もしないし、レビューもしない。地球物理系では1冊だけエルゼビア社のを注目しているが、それ以外は無視!」と言っており、まあ本当にそうなのかもしれません。実際には数百タイトルも地球物理系の雑誌がエルゼビアから出ているのですが、テーマが細分化されすぎてしまって、自分が以前から見ていたのぐらいしかフォローしないというのが現状でしょう。

3月23日の交渉が楽しみ(?)ですね。私自身は4月頭にフライブルグにあるこの交渉事務局Projekt-DEALに取材に行くので、ホットな情報がちょうど聞けるかと期待しています。

船守美穂