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PLOS One continues to shrink

学術論文のオープンアクセス出版(gold OA)の流れを作ったPLOS ONEは、2013年をピークにその年間掲載論文数が毎年縮小し、2016年には前年度の28,106本から22%減の22,054本へと急落しました。
こちらのサイトの棒グラフが印象的です。2006年に雑誌を刊行開始してから投稿数は指数関数的に伸びているのですが、2013年から下降傾向が見られ、2016年にはガタっと落ちています。

PLOS ONE創刊時は他にオープンアクセス・ジャーナルがなかったのに対して、近年はこれが増え、著者からみると投稿先の可能性が拡大したため、相対的にPLOS ONEへの投稿が縮小したとみられています。
特にシュプリンガー・ネイチャー社のScientific Reportsは、PLOS ONEをモデルに創刊されている上、インパクトファクターが高く、出版までの時間が短いこと、またデータ公開ポリシーが緩いことなどから、著者を魅惑しています。Scientific Reportsは6年ほど前に創刊されたばかりなのに、昨年20,540本の論文を掲載しており、PLOS ONEとほぼ肩を並べました。

オープンアクセス出版が拡大していること自体は良いことであるとPLOS ONEの編集長はしていますが、一方で、オープンアクセスジャーナルは収入を、著者からの論文掲載費(APC)にほぼ完全に依存しているため、論文数の縮小は雑誌の収入を直撃します。実際PLOSの純収入は2年前の1000万ドルから57万ドルに急落しています。PLOS ONEは(こうした収入源の穴埋めのため)APCを2015年に値上げし、OAコミュニティからは非難が集中しました。
シュプリンガーやエルセビアなどの商業出版社は、マーケット拡大を視野に、計画的に赤字覚悟でオープンアクセス・ジャーナルの刊行に踏み切りましたが、PLOSは他の収入源がなく、論文数減の影響を直接受けます。今後もオープンアクセスの理念に基づいた雑誌運営していく上で、新たなビジネス戦略が求められています。

[Inside Higher Ed] (2017.1.5) The Shrinking Mega-Journal

[the scholarly kitchen] (2017.1.5) PLOS ONE Output Drops Again In 2016

なかなか難しいですね。理想だけでは安定経営ができない、というか・・・。商用出版社からは、ほれ見たことか!と言われそうです。エルセビア社からは、だから収益率40%超が必要なんだ!と言われてしまいますね。

それにしても、このPLOS ONEの論文数の急激な増減、企業診断士がみたら中小企業の御法度No.1だ、と言われても仕方がない状況です。ビジネスは小さくて良いから、定常的に回っていることが一番大事で、設備投資を少しずつしながら、少しずつ拡大していくのが基本ですよね。急激な拡大は急な設備投資を要求し、一方で急に需要が冷え込めばその設備投資は全て負債となってしまう訳ですから。なんとか経営を安定化させる方法を見つけてほしいものです。

船守美穂