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German academic institutions to lose access to Elsevier journals from January 2017
ドイツはProjekt DEALと称して、学術出版におけるオープンアクセスの飛躍的拡大や適正な価格を求め、電子ジャーナルのナショナルライセンスに向けての交渉を、エルゼビア社と8月以来進めていました。しかし、同社がこのたび初めて提示した条件が、Projekt DEALの求める要求に大きく反するものであったため、ドイツ学術機関アライアンス(Allianz der Wissenschaftsorganisationen)は2016年12月2日に交渉決裂を発表しました。
これにより、60以上のドイツの主要研究機関が2017年1月より、エルゼビア社の学術雑誌のフルテキストへのアクセスがなくなる見込みであると、そのようにアクセスを失う予定の研究機関の1つであるゲッティンゲン大学図書館は、同大学の教職員に向けて通知をしています。 ドイツ学術機関アライアンスは、ドイツ学長協会のヒップラー会長を交渉役としてProjekt DEALを2016年8月から進め、10月には交渉力を強めるため、2017年1月以降のエルゼビア社の学術雑誌の定期購読打ち切りを、60以上の主要研究機関がエルゼビア社に通告していました。
ドイツ学術機関アライアンスはプレスリリースにて、エルゼビア社が収益率40%もあるにも関わらず、これまでのライセンス契約に基づいた購読料値上げを未だに行っており、また(学術機関の)出版努力に基づき、よりオープンな出版へとつながる、透明性のあるビジネスモデルを同社が却下したと、同社を糾弾しています。
「エルゼビア社は自身の市場の支配力を利用して、2016年末に契約が切れる学術機関に対して、学術出版へのアクセスを全て打ち切ることにより、これら機関を脅迫しようとしている」と、ヒップラー会長は強い調子でプレスリリースに述べています。
これに対してエルゼビア社は、同社がドイツ学長協会からの要望により、オープンアクセスと購読料に関する提案をそれぞれに行い、また世界第三位のOA出版社として、ドイツ政府およびドイツ学長協会のOAの意欲を尊重する提案を行ったにも関わらず、一部の学術機関に対する学術出版へのアクセスの打ち切りを責められていることに驚いている、と発表しています。
「ナショナルライセンスが締結されるという前提の元に、2016年末に定期購読を打ち切ると言い出したのは、そちらの方ではないか!」と主張しています。
Projekt DEALのヒップラー会長は、エルゼビア社との交渉を8月に開始した段階では、「学術界への情報供給については、格段な改善が必要である。このたびドイツの研究機関は、最も重要な学術出版社の一つであるエルゼビア社と、より透明性のある学術出版物の購読について、交渉に初めて入ることになった」と意気軒昂な声明を発表していました。このナショナルライセンスには600大学以上が恩恵を受けると言われていましたが、この交渉は一歩も進まなかったこととなります。
なおProjekt DEALでは、2017年1月以降、同様の交渉をSpringer、Nature、Wileyと進める予定としています。
※ ドイツ学術機関アライアンス(以下機関が特定のイシューに対して不定期に集まるアライアンス)
Allianz der Wissenschaftsorganisationen
マックスプランク、フラウエンホーファー、フンボルト、ライプニッツ、ヘルムホルツ、ドイツ自然科学アカデミーLeopoldina、DFG、DAAD、ドイツ学長協会、ドイツ学術会議
[Inside Higher Ed] (2016.12.19)
German Institutions, Elsevier Continue Negotiations
[ゲッティンゲン大学図書館] 2016.12.13プレスリリース
No full-text access to Elsevier journals to be expected from 1 January 2017 on
ドイツ学術機関アライアンス (2016.12.2 プレスリリース)(ドイツ語)
Lizenz-Angebot von Elsevier widerspricht Open Access und fairen Preisen für wissenschaftliches Publizieren
エルゼビア社からのライセンス契約の提示は、学術出版のオープンアクセスや適正な価格に反する
エルゼビア社(2016.12.2プレスリリース)
Elsevier and German Hochschulrektorenkonferenz in Ongoing Conversations
ドイツ学長協会(2016.8.4プレスリリース)
DEAL - nationwide licensing of the products offered by major science publishers: start of negotiations with Elsevier
Projekt DEAL(ドイツ語)
CA1828 - ドイツにおける、電子ジャーナルの戦略的な供給・流通の動向 / 坂本 拓(2014.9.20)
ドイツはこれまでもナショナルライセンスの試みをいくつかしていました。たとえば2004〜10年にはDFGの全面的援助により、電子ジャーナルのバックファイル、データベース、電子ブックなどへのアクセスが保証されてきました。また、2008〜10年については、カレント分についても、中堅の出版社についてアクセスが(但しオプト・イン形式)で提供されてきました。
今回は主要学術出版6社との交渉に乗り出したわけですが、2008〜10年のときと同様、交渉に難航しているようですね。これからSpringer, Nature, Wileyとの交渉がどのように流れるか、またElsevierとの第2ラウンドの交渉がどのようになるかが注目されます。
ちなみに今回の交渉の事務局となったドイツ学長協会に、これを交渉失敗とみるか、数多くある前哨戦の1つで、これから解決の道が開けると考えているのかと聞いたところ、後者であるとの回答がありました。曰く「ドイツ学長協会は次なる発展が期待できると思っており、失望はしていない。我々はエルゼビアがどういう相手か知っている!(die HRK sieht darin eine erwartbare Entwicklung und ist nicht enttäuscht. Wir wissen, wer Elsevier ist)」とのことです。
船守美穂
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