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ドイツ学長協会、エルゼビア社との交渉打切りを宣言

2018.07.12
オープンアクセス 学術情報流通

ドイツ学長協会が、エルゼビア社との交渉打ち切りを、2018年7月5日付のプレスリリースで宣言しました。「エルゼビア社の強行すぎる要求により、ドイツ学術協会アライアンスが行っているProjekt DEALに基づく同社との交渉打ち切りを強いられた」と、ドイツ学長協会Horst Hippler会長は述べています。

「我々は現在行っている3大学術出版社との交渉において、将来にも通用する、『学術出版と論文閲覧』のモデルを形成したいと考えている。交渉の目的の一つは、大学図書館を破壊するような学術出版の価格高騰を止めることである。もう一つの目的は、オープンアクセスの推進、つまり公的資金を得た研究の成果をオープンにアクセス可能にすることである。学術出版社は、このモデルにおいても重要な役割を持つ。我々は持続可能な『出版&閲覧モデル(Publish & Read Model)』、つまり出版のための適切な費用負担と、それに伴う読者への論文へのオープンアクセスを得たいと考えている。しかしエルゼビア社は、ドイツ全国に適用されるこのモデルにずっと否定的で、学術界からみて適切な費用でオープンアクセスの原則に基づいて学術出版を提供する気がないようである。

これまでの何ヶ月にも及ぶPublish & Readライセンスに向けたドイツの交渉は、Projekt-DEALのプレスリリースのサイトを見れば分かるように、世界的な注目を得た。また、41名もの著名なドイツの研究者が、Projekt-DEAL を支えるために2018年4月20日、エルゼビア社へのエディトリアルやその他学術出版に関わる協力を一切しないと宣言した。それに加えて、2016年末、つまり2017年以降の契約について、約200の学術機関がエルゼビア社との契約更新をしなかった。これに対してエルゼビア社は、これら学術機関と、失われた利益の一部を回復するために、契約継続の交渉をしようとした。

一方、2018年後半期を対象とした暫定的な契約は、将来的なPublish & Read契約の条件について、エルゼビア社と根幹的な合意が得られない限り、ドイツ学術機関にとって意味がない。しかし現段階では、そのような状況にない」。

一方、Projekt-DEALのグループは楽観的である。現在、(エルゼビア社の便宜により)契約のない学術機関に提供されている学術コンテンツがいよいよ打ち切られる場合のことを想定して、すでに手も打ってある。交渉グループはこれら学術機関に、時々の状況について詳細報告をする予定である。

エルゼビア社はそのプレスリリースにおいて、同社がProjekt DEALとのナショナルな合意と、ドイツの学術とオープンアクセスに向けての熱意をサポートできる持続可能なソリューションに向けて、積極的であると述べています。
エルゼビア社はサービスプロバイダとして、コンテンツ、サービス、経済的観点の全てから、学術コミュニティを理解し、支援したいと考えており、購読負担モデルや論文出版負担などの多様な要求に応えていきたいとしています。またドイツの言う「Publish & Readモデル」に前向きに取り組むことに合意し、それ向けた魅力的な提案をエルゼビア社から行ったにも関わらず、合意に至らなかったとしています。
契約更新をしなかったドイツの学術機関には、引き続きコンテンツを提供すると連絡しているとしています。ドイツの学術界と持続可能なナショナルな解決に向けて建設的な議論にオープンであるとしています。

[ドイツ学長協会 (HRK)] (2018.7.5)
Verhandlungen von DEAL und Elsevier: Elsevier-Forderungen sind für die Wissenschaft inakzeptabel
(DEALとエルゼビア社との交渉:エルゼビア社の要求は学術界にとって受け入れがたい)

[Elsevier] (2018.7.5)
Elsevier is committed to reaching national agreement with Project Deal
(エルゼビア社は、Projekt DEALとのナショナルな合意に積極的である)

ドイツ学術機関とエルゼビア社との交渉は、完全に持久戦に持ち込まれてしまっているので、こうして時々、声明を出すなどして、動きを作っているのでしょう。どこまで粘るかですね。一方、エルゼビア社も、こちらは前向きで魅力的な提案もしているのに合意に至らず、我々は引き続き契約のない機関にもコンテンツを届けるとしているなど、余裕綽々の態度です。
さて、どこでどのように落着するのか......。他国の動きにより、勢力バランスも変わるでしょうね。

ちなみに、両者のプレスリリースがされた日の前日、学術論文のオープンアクセス義務化を含む「フランスのオープンサイエンス国家計画」が、高等教育・研究・イノベーション省のFrédérique Vidal大臣からアナウンスされました。同国家計画は3項目からなり、第1項目に、公的資金を得た学術論文のオープンアクセス義務化と、それを確実なものにするための基金の創設を謳っています。出版社の交渉を直接謳っているわけではありませんが、「学術コミュニティは、出版プロセスへのコントロールを再び持つ必要がある(The scientific community must regain control of the publishing process in general)」としており、理念的にはドイツと同じ考えです。

[OpenAIRE Blog] (2018.7.5)
France has its OA mandate!

船守美穂