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米国大学長や州知事など、パリ議定書を継続支持を宣言

2017.06.05
国内政治と学術界 言論の自由

米国の120以上の大学長が、トランプ大統領が先週離脱を宣言したパリ議定書について、"We Are Still In"という公開書簡に署名をしました。この公開書簡は本日公表される予定です。公開書簡は元ニューヨーク市長のブルームバーク氏のイニシアティブにより作成され、これから州知事や市長、ビジネスリーダーにも署名される予定です。

公開書簡では、署名した機関が、パリ議定書でたてた目標に向けて引き続き努力することを、世界に向けて誓約しています。アメリカが国としてはパリ議定書から離脱しても、目標達成に最も重要な米国内の州や企業、大学が、継続的に努力することを、世界が知っていることが重要としています。
(公開書簡)We Are Still In(我々はまだ続ける)

トランプ大統領のパリ議定書の離脱の宣言は、科学界から多くの反発をよび、特に、ホワイトハウスが主張の根拠として言及した研究を輩出したMITはリーフ学長名で、ホワイトハウスの研究成果の利用の仕方がミスリーディングである、と声明を発しました。ホワイトハウスでは、「目標達成に各国が努力しても2100年までに0.2度しか気温は低下しない」としていますが、「この"0.2度"という数字は、その前のコペンハーゲン議定書との比較であり、無策であった場合とパリ議定書に向けて各国が努力した場合とを比較すると"1度"の気温低下が望める」としています。
[MIT声明] MIT issues statement regarding research on Paris Agreement (2017.6.2)

なおこの公開書簡、トランプ大統領の宣言の直後に出され、拙速に見えますが、実際にはSecond Natureという、1993年に設立され、サステイナブルな実践に向けて大学長の取り組みを調整するNPOが、以前から地球温暖化問題についても取り組みを行っており、たとえば2006年には、12大学による「American College & University Presidents' Climate Commitment」もとりまとめています。こうした蓄積や連携に基づき、今回の公開書簡もとりまとめられました。

[Inside Higher Ed] (2017.6.5)
Colleges Declare They are 'Still In' on Paris Goals

[Chronicle of Higher Ed] (2017.6.3)
Colleges' Message on Upholding Paris Climate Accord: 'We Are Still In'

アメリカの大学長や州知事、市長、ビジネスリーダー、そしてNPOたち、皆さんアクティブですね!健全な民主主義が根付いているとも言えるように思います。
日本ではお上の言うことは絶対。反発してもあまり変わらないから、反発するだけ時間の無駄といった風潮がありますが、昨年12月、SHEEOという、高等教育に関連して米国州政府の高官が州間の調整を行う母体にインタビューしたとき、ここに連邦政府の担当者は参加しないのかと聞いたところ "Oh, no! That would be absurd!" と強く否定されたことが思い出されます。連邦政府はなんか勝手なことをするが、アメリカ合衆国の実質的な担い手は州政府なのだ!という強い意気込みがそこにあります。

実際私の現在の科研費課題である米国巨大財団に関する研究で財団の動きを追っていたところ、米国のフィランソロピーがトランプ政権のパリ議定書離脱表明に強く反発し、億万長者であるマイケル・ブルームバーグ氏がその穴埋めのために1500万ドルをすでに約束したとする記事を見かけました。これは州政府や企業、大学等の活動を調整するためとされていますが、それが今回のような公開書簡につながったものと理解されます。

[Chronicle of Philanthropy] (2017.6.2)
Foundations and Donors Vow to Step Up on Climate Change as U.S. Steps Back

船守美穂