日本語
  • TOP
  • RCOS日誌
  • 豪州の大学におけるRDMサービス視察報告記

豪州の大学におけるRDMサービス視察報告記

20190809-1.jpg
ニューサウスウェールズ大学

2019年5月14日から16日までの3日間、私こと常川とRCOSの込山助教の2人は、研究データ管理(RDM)システムを有する豪州の大学を訪問しました。
私たちオープンサイエンス基盤研究センターでは、研究データを管理・活用できるプラットフォームを構築しています。研究データの管理には、データ管理計画(データマネージメントプラン・DMP)と実際の管理状況との間に整合性を保つことが重要で、そのためには研究者のデータマネージメントプランに合わせて管理環境を円滑に提供する仕組みづくりが必要です。現在、世界ではデータマネージメントプランを機械で読み取れる形にして、研究データ管理支援サービスを自動化するための試みが行われています。
豪州の公的な助成機関は、研究データ管理の情報を記録する施設の提供を各研究機関に義務付けているため、豪州の大学は、データマネージメントプランを活用した研究データ基盤システムの構築に取り組んでいます。

私たちが訪問した大学は、クイーンズランド大学・ニューサウスウェールズ大学・シドニー大学の3校で、いずれも豪州8大学に含まれる大学です。
クイーンズランド大学では UQ Research Data Manager(UQ RDM)、ニューサウスウェールズ大学では resData、シドニー大学では DashR という研究データ管理システムをそれぞれ独自に構築しています。

クイーンズランド大学(以下 UQ)をはじめとする、豪州の各大学の研究データ管理システムに共通する点は、"Data Management Record"(DMR)と呼ぶコンセプトに基づいてシステムが設計されていることです。DMRとは、研究データ管理に関する情報を「レコード」として保存し、これを研究の進捗に合わせて随時更新していきながら、データマネージメントプランの提出・データの管理環境の整備・報告書の提出など様々な用途に活用していくというものです。

DMRを採用している研究データ管理システムでは、研究者が作成したDMRを活用することで、研究プロジェクトに最適な研究データ支援サービスを提供します。
例えばUQ RDMでは、DMRに記述された保存予定の研究データ情報に基づいて最適なストレージを選択し、容量を自動的に確保する機能を提供します。DMRはデータの保存以外にも、HPCへのデータの連携や、研究情報に基づく研究助成のマッチングなど、様々な用途で活用されます。
このように豪州の研究データ管理システムでは、研究データのデータマネージメントプランとそのためのシステムが常に同期し、研究者が計画に沿って研究活動を行える環境が整うような設計がされています。

20190809-2.jpg
シドニー大学

また豪州では、研究データ管理システムが有効に機能するためのデータポリシーの整備や、研究者がシステムを活用できるようなトレーニングプログラムの提供なども盛んです。シドニー大学では、データサイエンティストを要請するためのトレーニングプログラムを展開する専門の部署として、Sydney Informatics Hub が設立されています。

今回の豪州訪問で私たちは、それぞれの大学が個別に構築した研究データ管理システムを調査しました。
一方、私たちの提供する研究データ基盤は、国内の多くの大学・研究機関が共同で利用することを想定しています。現在構築中のNIIオープンサイエンス基盤では、国内独自の条件を鑑みつつ、データマネージメントプランを活用した研究データ管理システム環境となるように整えていきたいと思います。

(常川 真央)